ダイエット幻想

特にタイトルでは興味を引かれなかったのだけど、書評を読んで興味が湧いて手に取った本。タイトルからは想像できなかった話が出てきて面白かった。ダイエットの話だけではなく、生き方の本だと思った。

数とは何か。数は管理の象徴でもあり、食事を数で管理し始めると、美味しさが失われていく、普通に食べることの大切さなど、目からうろこ。

食べたい、美味しいは、数では管理できないパーソナルなもので他者から管理されるものでもない。食べたいものを食べることを許可できなくなったら、もはやそれは自分でないものに管理されている、何かに囚われている損なわれた状態なわけで、それを自分に取り戻す壮大なプロセスが必要となると思った。

その痩せたいは誰の意思か。きっと自分の意思だとみんな思っている。他者が存在してこそ自分がある。自分らしさと言ってもその自分らしさも他者からの承認を逃れがたい。結局それは他者からの承認を前提としたもので、本当の自分の意思はなんなのか、人は自由であるとはいえ、他者からの承認という不自由さに縛られている、と思った。

少し話が脱線するけど、「ありのままの〜」みたいな歌が流行ったけど、ありのままと言っても社会にいる以上、他者からの承認を逃れられないし、そのありのままってバイアスがかかる。それを考え始め、追求していくとどんどん社会から離れていくような気がする。「アナ雪2」ってどんな展開になるんだろうってちょっと気になってしまった。

他にも点では存在するのではなく、ラインを描く、タグ付をする関係から踏み跡を刻む関係など、「急に具合が悪くなる」に通じる話も。

タグ付をする関係って面白い表現だと思った。それはそのタグという点での人との関係。そこからラインを描く関係というのは、相手をある程度引き受けて踏み込む覚悟のいることだ。このラインを描く、踏み跡を刻む関係というところはもっと深く知りたいと思った。

文化人類学って面白い学問だと思った。哲学的でもあるし、心理学的な部分もあるような気がする。

読んで良かったと思う本って、読むことによって新しい世界が広がり、新しい疑問が生まれ、そこからまた別の本への旅が始まるような本だと思う。この本はそんな本でした。


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