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スキーマから解放される場所

初めて行った音楽フェスはサマーソニックだった。
6,7年前だろうか。
アルバイトから正社員となり、給料も体調も落ち着いてきたときだった。
そのとき買ったロゴ入りのTシャツはもう黄ばんでしまったけど、大切に保管している。
それからは毎年なにかのフェスに参加している。

僕にとってフェスとはスキーマから解放される場所だ。

僕のスキーマは「見捨てられ」「無能/依存」をメインに「完璧主義」「恥」などがある。
ここでいうスキーマは早期不適応スキーマという、幼少期に作られた歪んだ自己敗北的な価値観のことを指している。

このスキーマがあることで自信を持つことが困難で、人間関係で過剰な反応をしやすい状態となっている。要するにメンヘラだ。診断ももらってる。
僕はこのスキーマを現実に適応的なものにして、生きやすくすることを目指している。
その過程は「公開手術」というマガジンにまとめてある。

目的は生きやすくなること。じゃあその生きやすさって何?
スキーマは幼少期に作られた無意識の価値観。
ものごころがつく前からずっと抱えて生きてきた。
家庭、小学校、中学校、高校大学仕事、友人や恋人も。
スキーマの影響下にあったんじゃないのか?
つまり僕は生きやすさを知らないんじゃないのか?
旗印として掲げた「生きやすさ」も、聞こえのいい借り物なんじゃないか?

だから僕なりの生きやすさを言葉にしたいと思った。
そう考えたときに浮かんだのがフェスだった。
フェスはスキーマから解放される場所だ。

フェスに誰と行ってもずっと一緒のステージを見るということはない。
行きたい場所に行って、空き時間に集まれたら集まればいい。
離れたとしても「見捨てられ不安」は感じないし、どのステージを選ぶかで「有能」も何もない。行ったステージが外れでも「完璧主義」も発動しないし、どんなバンドが好きでも「恥」を感じることもない。
呼吸がしやすい。

それは自分の感覚を信じているから。
つまらない演奏なら微動だにしないし、誰かに勧められても聴く気もない。
好きでもない音楽を好きということは絶対に出来ない。
あの人が聴いていたって好きになれないものはなれないし、人を殺していようが聴いていいと感じたら好きになる。
自分勝手で歪んでいる。それがいい。音楽に関しては素直になれる。

「スキーマはぬいぐるみのようなもの」
スキーマ療法について初めて書いた文章にそう記した。
ボロボロで針が飛び出していても、抱いていないと眠れない。
愛着といっていいだろう。捨てることができない。

なぜならスキーマにもいい点があるから。
人に好かれる努力も、いい成績を取る勉強も、恥をかかない身だしなみもスキーマのおかげだ。
スキーマがなくなったら僕はどう生きていけばいいんだろう。
多少生きづらくてもこのままの方が安全だと思っていた。
今から新しい自分を作るなんて怖くてできないと。

早期不適応スキーマを解消したあとについて、あるスキーマ療法の本にはこう書いてあった「ハッピーでヘルシーな自分を作っていきましょう」。
それも嫌だった。
治療として正しいかもしれない。
きれいな形になりたくなんてない。
僕はもういる。
新しい自分を作る気なんて毛頭ない。

僕は知っていた。
初めてフェスに行ったときから。
スキーマをかき分けた先に自分はいると。
でも理由をつけていた。
「イベントだから特別なだけだよ」
「社会で生きるにはそうはいかない」
「現実的になろうよ」
溜め込んだ気持ちは、たまに行くライブやフェスで解消していた。
しかしこの状況でフェスもなくなってごまかしきれなくなった。
自分と向き合う必要ができた。

言ってることも確かだろう。
確かに非日常のイベントにお金を払って参加しているだけ。
大きな隔たりがある。そこで止まるんじゃなくて、日常にフェスの感覚を与えたい。だから言葉にしよう。

僕にとって生きやすさは周りに合わせることでもないし、評価されることでもないし、誰かを許すことでもない。
多数派であることも少数派であることも関係ない。
自分の感覚を信じることだ。
それが歪んでいるなら歪んでいたい。プラスチックになりたくない。

一時的にスキーマから解放されることはあるだろう。
だがフェスはやはりフェスだ。
そのまま日常に適応できない。
それでいい。
もうスキーマから解放される感覚は知っている。
そして僕は言葉にすることができる。
それを貫いていきたい。

もしかしたらこの考えもスキーマの影響下かもしれない。
それでいい。
スキーマも僕の一部だ。
ヘルシーとか別にいらない。
見捨てられも無能も依存も。
全部串刺しにして食べてしまおう。

これが結論かと思ったけどもう少しありそうだ。
年をまたぐことになりそうだけど、納得するまで書いていきたい。

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