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カセットテープと再生ボタン


高校の頃に使っていたカセットテープ。懐かしいアナログな道具のことを急に思い出したので、記事にしてみたい。

高校の頃は内向的な性格であり、外に出て遊ぶことがあまりなく、家で本を読んだり音楽を聴いたりして過ごしていた。

その頃は90年代でCDが200万枚も売れることもあるという、J-POPが華やかな時期であった。高校生のお金のない私は、CDの売り上げに貢献できずカセットテープで音楽を録音していた。

私がよく聴いていたローカルFM局は、毎週日曜日の16時から、その月のCD売り上げランキング10位までの曲をフルコーラス、しかもMCの声を曲にかぶせずに流すということをしてくれる番組を放送していた。

番組が始まるとラジオカセットテープ再生機の前に座り、じっと番組を聴き、MCの曲紹介が終わると赤い丸のついた独特の手応えがある録音ボタンを押した。そして曲を集中して聴き、アウトロが終わった瞬間に録音ボタンを解除するということをしていた。

あの録音の時ほど音楽を集中して聴いたことはそれより後にはないかもしれない。
そしてちゃんと曲が撮れているか確認するために、カセットテープを巻き戻して再生ボタンを押す瞬間もドキドキした。

タイミングが悪くてMCの声が入ってしまった時は、ひどくがっかりしたことを覚えている。

お笑い芸人であり、DJでもある大谷ノブ彦さんは、イベントでDJをしている時に「再生ボタンさえ押せばいつでも誰にでも会える」と言って、若くして亡くなってしまった志村さんがボーカルをしていたフジファブリックをよくかける。

今でもSpotifyを開いて、90年代J-POPを検索して再生ボタンを押せば、キラキラしていた曲や歌っていた人に会うことができる。

でも実家に眠っているFM放送から録音した曲がつまったカセットテープにはそこに閉じ込めた、高校生の頃の私のドキドキして曲を聴いていた気持ちがつまっている。

そのカセットテープをラジカセに入れて再生ボタンを押せば、キラキラした曲や歌っている人はもちろん、ラジオカセットテープ再生機の前で緊張しながら放送を聴いていた高校生の私にも会える気がする。

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