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ラカンに思いを馳せる必要ってある?

ラカンはフランスの哲学者、精神分析家である。

ラカンは難しい。

これは世界中で言い尽くされていることなので敢えてここで述べなくてもいいが、そう言ってみたくなるくらいラカンの理論は理解し難い。

しかしラカンの言葉はなんとなくかっこいいし、わかる気がする部分もある。

例えば「他人の欲望を欲望する」というラカンの言葉で、なぜ人はブランド品が欲しくなるかという気持ちを説明することができると私は考える。

ブランド品は多くの他者が欲しいものである。欲望とは他者が欲望しているから生まれる。よって自分もブランド品に欲望を抱くようになる、というようなことである。

ブランド品の品質がいいとか、物としての価値が高いというよりも、みんなが欲しいと言ってるから欲しい、というような気持ちだろう。

子どもだって友達が持っているものを欲しがったり、お兄ちゃんやお姉ちゃんが使っているものを弟や妹も使いたがる場面は多い。

私の解釈なのでこれが正確にラカン理論と合っているかどうかは分からないが、たぶん「他人の欲望を欲望する」とはこんなことかなと思っている。

しかしラカンの言う「現実界、象徴界、創造界」「対象a」「大文字の他者」などの理論は正直よく分からない。

やはりラカン理論は難しいなと思う。

そんな中で「生き延びるためのラカン」という斎藤環さんが書いた本がある。これはラカン入門書の名著である。
ラカン理論がどのようなことか考えるきっかけになるいい本である。

たぶんラカンの入門書として最も面白く分かりやすいのではないかと私は思っている。
難解な理論を身近な例に喩えつつ解説してくれる。
この本以外のラカンの入門書もいくつか読んだがよく分からなかった。

しかしこの「生き延びるためのラカン」は分かりやすく、この本を読んで得たことが、私にとってのラカンの知識のすべてである。

しかし、なぜ私たちはラカンの理論のような小難しいことを考えるのか。
ラカン理論を知らなくても普通に生きていけるように思われる。

ラカンに限らず小難しい理論はこの世にいくらでもある。
そしてその入門書もたくさんある。

例えば相対性理論入門なんて本はたくさんあるだろうし、研究者でもない一般の人が好んで購読する。

ただ私たち一般人が相対性理論の入門書を読み、そのことについて考えても直接的に役に立つことはないだろう。

しかし私はこのような、なかなか考えても分からないことを考えるというのは重要だと思っているのだ。

入門書を読み、ラカン理論や相対性理論などを考えた結果ほとんど理解できなかったとしても、それはものすごく意味のあることだと思っている。

なぜかというと、小難しいことを考えるという過程が重要だと考えているからだ。

小難しいことを考える時には、いつもと違う思考が働く。

日常生活にものすごく変化がある人は少ないだろう。だから、繰り返される日々において必要最低限のことを考えていれば暮らしていられる。

しかし時として人間は、想像もしていないような困難や、大きな選択に迫られる時がある。

子どもが突然不登校になる、マンションの自治会委員になり大規模修繕について住人の意見を取りまとめなければいけない、遺産相続のトラブルに巻き込まれてしまったなど、急に困難に見舞われることがある。

また進学、就職、結婚、昇進、転職、再就職など人生には大きな選択をしなければいけない時がある。

突然の困難や大きな選択をする時は、普段しないような思考をもとに解決したり、最善のものを選んだりしなければいけない。

そこで役に立つのが、小難しいことを考える経験である。
日常的に必要なこと以外のことにも思考をめぐらす機会を増やしておく。

そうすることで、急な事態が起こっても、思考停止に陥らないでいられると私は思っている。

困難に出くわした時に「だりぃ」「まじ病み」では解決しない。

漫画の「ウシジマくん」に出てくる登場人物はサラ金のローンを闇金で返すみたいな「絶対それは事態がもっと悪くなるだろう」というような行動をとる。

これはなぜかというと、「ウシジマくん」に出てきてどんどん事態を悪くする決断をする人は、物事を深く考えるトレーニングが決定的に不足しているからである。

それは本人のせいだけでなく、そういう家庭環境に生まれたということはもちろんある。
いわゆる底辺と呼ばれるような家庭環境が再生産されてしまう社会であるので、その家庭が悪いというわけでもない。

しかしどうあれ、小難しいことを考える経験は、難しい事態が起きた時に最善の手を考えて解決に導くトレーニングになると考えている。

そう、まさに「生き延びるためのラカン」のタイトルにある、「生き延びるため」に小難しいことを考えるのだと私は思っている。

これからも思考力を鍛え続けて、この小難しい世界をなんとか生き延びていきたい。

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