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カトマンズの野犬と私

現在、カトマンズの郊外で生活している。

五階建てのアパートの四階に、手ごろな値段の部屋を借りて暮らしている。


日当たり良好、ベランダ付き。

これで月二万五千円。

安い。



セキュリティも厳重。

敷地に鉄製の門があり、一階エントランスはシャッター付き、各階フロアーには扉が設けられていて、

簡単に入ることはできない構造になっている。


いつも寝ているけど、一応、番犬っぽい犬もいて、

ロックダウン中のネパールでも、比較的安心して生活することができている。


ところが、どういうわけか時折、


野犬がしれっと、勝手に上がり込んでくることがある。


ある朝。


買い出しに出かけようと部屋のドアを開けると、見慣れぬ犬が廊下をウロウロしている。


すべてのセキュリティゲートを潜り抜けてきたらしいこの犬は、

悪びれるそぶりもなく、目をキラキラと輝かせている。


犬は、待ってましたとばかりに私の後を付いてきて、


いきなり、良く知らない野犬との散歩が始まった。



階段を降り、門を出て、大通りに繋がる小路を歩く。

すると、

犬もまた、階段を降り、門を出て、大通りに繋がる小路を歩く。


追い抜かれたり、追い越したり。

ペットみたいで、かわいいなあ。

なんだか、楽しいなあ。


私もまんざらでもなかった。


しかし、大通りを少し進んで、道路を横断しようとしたその時、


楽しい散歩が一転。


犬は突然、他の犬から襲撃され、

しっぽを巻いて、どこかに消えていった。


切ない。

なんて切ないのだろう。


野犬に置き去りにされてしまった私は、

尾を引く悲しみに包まれながら、スーパーに入店した。


暫くしてアパートへ戻ると、



目をキラキラと輝かせた犬が、

何食わぬ顔で、

しれっと座っていた。


似たような出来事が、かれこれ三回ほど繰り返されている。

<完>


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