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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2022年1月の記事一覧

【第□章】メビウスの輪を巡り (4/4)【終点】

【第□章】メビウスの輪を巡り (4/4)【終点】

【目次】

【抵抗】←

「絶対に逃がすな! 仲間を呼ばれるぞッ!!」

 かつて下水道だった地下通路のなかで、五人の人間と一体の異形がにらみあっている。そのうち、一人はルーク青年だ。

 正面に立ちふさがるパンドラの怪物は、大人の身長の三倍ほどもあるイナゴ型の個体だ。通常は群れて行動するが、はぐれたのか周囲に仲間らしき姿は見あたらない。

 ルークも含めた五人の男たちは、ライフル、サブマシンガン

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【第□章】メビウスの輪を巡り (3/4)【抵抗】

【第□章】メビウスの輪を巡り (3/4)【抵抗】

【目次】

【螺旋】←

 夜の空を一筋の輝きが駆けていく。虹色の尾を引く、パンドラの流星だ。この光景を見るたび、ルーク少年は自分が生死のループを巡っていることを思い出す。

 これは、m回めだ。『前回』は、アトランティス中央研究所にたどりつくことしかできなかった。今回は、どうだろうか?

 少年の夢想は、それ以上、続かなかった。パンドラの流星の様子が、『前回』と違う。虹色の尾が走り抜けた夜空に、

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【第□章】メビウスの輪を巡り (2/4)【螺旋】

【第□章】メビウスの輪を巡り (2/4)【螺旋】

【目次】

【起点】←

 西暦20XX-1年、大西洋上に造られた巨大人工島、通称『アトランティス』。

「ルークくん! ひさしぶりではないかナ……なんとなればすなわち、健康そうでなによりだ!!」

「博士課程ぶりです。ウォーレス教授のほうこそ、お元気そうでなにより……」

「ミュフハハハ! 半数正解すれば採用を検討される試験で、全問正解しておきながら、ずいぶんと涼しい顔をしてくれるかナ。設問を用

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【第□章】メビウスの輪を巡り (1/4)【起点】

【第□章】メビウスの輪を巡り (1/4)【起点】

【目次】

【第■章】←

 西暦20XX年、大西洋上に造られた巨大人工島、通称『アトランティス』。

 各国と国際企業群の出資で建造され、運営されている人口100万人ほどの海上都市は、もっとも新しい独立国家として国際的に認知されている。

 温暖で安定した気候と物珍しさから観光地としての人気も高いが、その本質は、人類共通の利益を目的として設立された国際研究機関である。

 海上航空に、一機の飛行

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (24/24)【望郷】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (24/24)【望郷】

【目次】

【縫合】←

「しっかりするのだわ、アサイラ! 気を強く持って……早く目を覚まして!!」

「うるさいですわ、『淫魔』ッ! 詠唱の邪魔ですから、治療魔術が使えないなら、黙っていなさい!!」

「──グヌッ」

 黒髪の青年は、小さくうめく。かしましい声が耳元に響き、眠りが妨げられる。まぶたを薄く開くと、白と黒、それぞれのドレスにおおわれた、ふたりぶんの豊満な乳房が、ぼやけた視界に映し出

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