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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2021年12月の記事一覧

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (23/24)【縫合】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (23/24)【縫合】

【目次】

【瘴気】←

──ザンッ!

 アサイラの投擲した『龍剣』は、不可能物体を形作る石材製の骨組みの『遺跡』をくぐり抜け、その中央の地面に刀身深々と突き刺さる。

「あやとれ! 『星辰蒼尾<ソウル・ワイアード>』ッ!!」

 漆黒の瘴気にかすみ、見通せぬ視界のなか、黒髪の青年は上空から右腕を伸ばす。目視による確認はできないが、己の意志が剣に通じた手応えはある。

 その証拠に、闇の荒海のな

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (22/24)【瘴気】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (22/24)【瘴気】

【目次】

【裂傷】←

(──アサイラ、聞こえている!? エマージェンシー! 緊急事態だわッ!!)

 リーリスの声が、けたたましく脳裏に響き、アサイラは閉じかけたまぶたを開く。心身は完全にスリープモードに陥っていて、四肢の先から五臓六腑に至るまで気だるさに満ちている。

「どうした、リーリス……モーニングコールには、早すぎるんじゃないか? 少しは、ゆっくり休ませろ……」

(グリンッ! 寝ぼけ

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (21/24)【裂傷】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (21/24)【裂傷】

【目次】

【崩怪】←

「グリン……アサイラは、間違いなくグラー帝を倒した。空から落ちてくる次元世界<パラダイム>も、押し返した。それなのに、なんで……今度は、グラトニアの地面が崩れているのだわ!?」

「問いただしたいのは、わたくしのほうですわ! 『淫魔』ッ!!」

 リーリスとクラウディアーナは、悲鳴じみた叫び声をあげる。エルヴィーナは、片腕を失った肩を侮蔑するようにすくめてみせる。

「ア

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (20/24)【崩怪】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (20/24)【崩怪】

【目次】

【輝跡】←

「アはは! アははハはハッ!!」

 眼孔から膿汁と肉片と毒蟲をまき散らしながら、『魔女』は狂ったように哄笑する。踊るような動きで空を舞いながら、指先で魔法文字<マギグラム>を描く。共鳴するがごとく、エルヴィーナのすぐそばに浮かぶ『天球儀』の輪が、淡い光を放つ。

「グリンッ! 龍皇女、左右両方から同時だわッ!!」

 クラウディアーナの魔法<マギア>によって、三つ編みの

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (19/24)【輝跡】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (19/24)【輝跡】

【目次】

【天地】←

「なんだい、ありゃあ……」

 修道服を身にまとう大柄な初老の女性が、蒸気自動車のハンドルを切りつつ、急ブレーキを踏む。ただでさえ舗装されていない荒野を走っていた車体が、大きく揺れる。

 助手席に座る孤児院の少年の抗議を無視して、運転手の女──シスター・マイアは、フロントガラス越しに目を凝らす。

 地平線の果てから、アメジストのような輝きを放つ光点が、空に向かって昇っ

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (18/24)【天地】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (18/24)【天地】

【目次】

【十分】←

「ぐ、ぶァ……! なにをした、愚者め!?」

 持ち主の意志に応じて縦横無尽に張り巡らせた蒼銀の糸が、暴君の全身に巻きついている。腕の、脚の筋肉をどれだけ盛りあげようと、引きちぎれない。

「神さま、なんだろ? 俺に聞くまでもないんじゃないか、裸の王さま。人智を超えた力とやらで、ふりほどいてみろよ」

 アサイラの拘束など、誤差程度の意味すら持たないと思っていたのだろう。

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (17/24)【十分】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (17/24)【十分】

【目次】

【増進】←

「グオラッ」

「ウラア!」

 小惑星帯を思わせる浮遊がれきのなかを縫って、グラー帝は左フックを放つ。対するアサイラは、張り巡らせたワイヤーのうち1本を巻き取り、己を引っ張って三次元方向に回避する。

「なんだ……無重力状態になって、かえって避けやすくなったんじゃないか?」

「飽きもせず、無意味なことを……一言以ておおうならば、不快の極みである」

「つまり、嫌がらせ

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (16/24)【増進】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (16/24)【増進】

【目次】

【臨界】←

「グオラッ」

「グヌウ!」

 激しく振動し、ところどころ崩落すらしている足場の悪さをものともせず、グラー帝が拳を伸ばす。アサイラは、寸でのところで直撃を回避する。音速を超える拳圧が頬をかすめ、切り傷を刻む。

 黒髪の青年は、ひびだらけの柱を遮蔽に使いつつ、彼我の間合いを保とうとする。諸肌に傷ひとつない偉丈夫は、まるで石ころでも蹴飛ばすように、『塔』の部材を破壊しなが

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (15/24)【臨界】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (15/24)【臨界】

【目次】

【堅忍】←

──オオォォォ……ンッ!

 次元世界<パラダイム>そのものが鳴動するような音を立てて、『塔』全体が本格的な崩壊を始める。壁面の部材が剥離し、『伯爵』へ向かって倒れこんでくる。

 あまりにもスケールが大きすぎて、遠近感がつかめない。伊達男自体、崩落の開始を、なんらかの錯覚かと思ったくらいだ。

 大小様々のがれきが重力フィールドに引っ張られて、地面に叩きつけられていく様

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (14/24)【堅忍】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (14/24)【堅忍】

【目次】

【表明】←

「ふむ? なにか……我輩にとって、有利な形の……不確定要素が、働いた……かね」

 超巨大建造物の根本に立つ『伯爵』は、難儀そうに頭をあげる。周囲の地面には見渡す限り、漆黒の重力フィールドが広がり、『塔』の基部を蝕み続けている。

 髭の乱れた伊達男の転移律<シフターズ・エフェクト>、『世界騎士団<ワールド・オーダー>』を構成するひとつ、『塔<タワー>』が持つ能力だ。

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (13/24)【表明】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (13/24)【表明】

【目次】

【船守】←

『導子力場<スピリタム・フィールド>、三次元形態安定……仮想カタパルト、展開完了……突然の作戦変更だけど、OKということね。お姫さま!?』

「無論だ。むしろ、望むところだ……この男に自分の手で一矢報いずして、ことを済ませるなど、悲憤慷慨の極みだからだ」

 腕組み姿勢からコンマ秒未満で右ストレートを放ち、次元巡航艦の船体を拳圧で貫こうとしていたグラー帝の耳に、上部甲板か

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (12/24)【船守】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (12/24)【船守】

【目次】

【供犠】←

「グオラッ」

 ボクシングスタイルで両腕を構えたグラー帝は、右足の裏を『塔』の壁面へ強く叩きつける。地震のごとく足場が大きく揺れたかと思うと、地割れのような亀裂が生じ、アサイラを呑みこもうと迫る。

「ウラア……ッ!」

 黒髪の青年は、大剣を握ったまま側転し、足元に口を広げる顎から逃れる。回転しつつ、蒼黒い瞳は筋骨隆々とした偉丈夫から視線をそらさない。

 アサイラが

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (11/24)【供犠】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (11/24)【供犠】

【目次】

【惑乱】←

『それはそうと……ダンスを再開するまえに、ひとつ、質問ですわ。あの男、グラー帝は、いったい何者なのです?』

 龍態のクラウディアーナが、重々しい気配をともなって問う。『魔女』は、片腕をもがれた激痛に耐えながらも、敵愾心をむき出しにして、にらみかえす。

「あの御方は……この宇宙に存在する、すべての次元世界<パラダイム>の頂点に君臨する……偉大なる、覇者なので……」

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【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (10/24)【惑乱】

【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (10/24)【惑乱】

【目次】

【横槍】←

「グラトニア帝国に仕える一員として……偉大なる皇帝陛下の支配にあらがう存在は、決して看過できないので……」

 ぼそぼそとつぶやきながら、『魔女』は両腕を広げる。背負うように、左向きに回転する輪のような魔法陣が展開され、ここではないどこかから、生理的嫌悪感を覚える触手が這い出てくる。

「グリン。言葉だけ聞けば、大した忠誠心だけど……本当かしら? なーんだか、あなたの言う

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