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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2021年10月の記事一覧

【第2部29章】至高の騎士、最強の刃 (2/16)【両断】

【第2部29章】至高の騎士、最強の刃 (2/16)【両断】

【目次】

【斬撃】←

「ふえ──ッ!?」

 アンナリーヤは、思わぬ斬撃の重さに吹き飛ばされ、そのまま上昇乱気流にさらわれる。マグマのごとく光を発する地面からの輻射熱に、全身をあぶられる。戦乙女の姫君の軽い肢体は、木の葉のように上空へ巻きあげられていく。

 火刑に処されたような肌を焼く痛みを味わいながら、ヴァルキュリアの王女は全身から血の気が引いていく感触を味わう。

(なんだ、これは──!

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【第2部29章】至高の騎士、最強の刃 (1/16)【斬撃】

【第2部29章】至高の騎士、最強の刃 (1/16)【斬撃】

【目次】

【第28章】←

「──むぐっ!?」

 魔銀<ミスリル>の大盾の内側にうつ伏せの飛翔体勢のアンナリーヤは、逆手で口元をおさえる。肺腑を焼かれるような熱波にあおられて、思わずうめく。

 上昇乱気流に翻弄されて体勢を崩しかけるも、どうにか有翼の姫騎士はバランスを保ち、失速をまぬがれる。

 地面からの輻射熱は魔銀<ミスリル>が、遮断してくれる。おかげでヴァルキュリアの王女は、左右に大き

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【第2部28章】竜、そして龍 (8/8)【威迫】

【第2部28章】竜、そして龍 (8/8)【威迫】

【目次】

【龍血】←

──ドジュウウゥゥゥ!

 煮えたぎる龍血が、赤い雨となって周囲に降り注ぐ。一瞬、ヴラガーンの威迫に気圧されていたプテラノドンは、すぐに我にかえる。

「龍メ……ナニヲ、シタ……!?」

「なにをした? 異なことを聞くぞ、翼龍モドキ……オレの腹をえぐったのは、ほかならぬ……ウヌではないかッ!!」

 ドラゴンの鮮血が、じゅ

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【第2部28章】竜、そして龍 (7/8)【龍血】

【第2部28章】竜、そして龍 (7/8)【龍血】

【目次】

【屈折】←

「こ……が……ぐうアッ!」

 ヴラガーンは、苦悶の表情を浮かべる。一瞬、視界がホワイトアウトしかける。周囲の空気に低周波の振動が響くほどに、強く奥歯をかみしめ、意識を保つ。

「闘争は、正面からぶつかりあい、腕力で勝敗を決するものだろうが……! やはり、知恵比べのたぐいは好まん。女々しい連中のすることだ……ぞ!!」

 めまいを覚えるなか、上空からの落下物にともなう気流

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【第2部28章】竜、そして龍 (6/8)【屈折】

【第2部28章】竜、そして龍 (6/8)【屈折】

【目次】

【経験】←

「シュー、シュー、シュー……よりによって、あてになりそうな経験がこれか。気に喰わんぞ……」

 ぎりぎりと歯ぎしりの音を立てながら、さらにヴラガーンは記憶の底をさらう。千年まえ、多くのドラゴンを膂力で圧倒した暴虐龍は、その勢いに乗って龍皇女クラウディアーナのもとへと迫った。

 しかし、白銀の鱗と6枚の龍翼を持った上位龍<エルダードラゴン>は、単純な身体<フィジカ>能力で

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