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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2021年2月の記事一覧

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (13/13)【寂寥】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (13/13)【寂寥】

【目次】

【現実】←

「それでも、自分は地獄行きだから……グリフィンに、この身をついばませながら……」

 アサイラと肌を触れあわせていたアンナリーヤは、身をはなし、両ひざを抱えて寝台のすみに座りこむ。すすり泣くような声が、聞こえてくる。

「別にあなたのせいじゃないのだわ、王女どの。どう考えても悪いのは、あのエルヴィーナとかいうやつじゃない」

 ベッド縁に腰をおろすリーリスは、戦乙女の姫君

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (12/13)【現実】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (12/13)【現実】

【目次】

【反吐】←

「んん……っ」

 耳元をくすぐるような無防備な女性の寝息で、アサイラは目を覚ます。戦乙女の姫君の寝台のうえだ。

 右にはリーリス、左にはアンナリーヤの姿がある。一人の男と二人の女は、それぞれ半裸で川の字になって横たわっていた。

 アサイラは上半身を起こし、周囲の様子を確認する。広く、天井が高く、薄暗い部屋。つい先ほどまで閉じこめられていた融肉と触手におおわれた異形の

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (11/13)【反吐】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (11/13)【反吐】

【目次】

【傀儡】←

「つまり、だ……最後の手段として、アンナリーヤどのを手にかけるという選択肢もとれない、ということか?」

 少しずつ近づいてくる白目をむいた姫騎士から目を離さず、足の裏にうごめく融肉の感触を覚えながら、アサイラは尋ねる。

「グリン……そういうことになるのだわ。現時点で、王女どのの精神がどれだけ無事なのかすら不明だけど」

 黒髪の青年の背後で、リーリスがくやしげにうめく

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (10/13)【傀儡】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (10/13)【傀儡】

【目次】

【動揺】←

「ちょっと、私の声が聞こえている? しっかりするのだわ、王女どの!!」

 黒翼を広げたゴシックロリータドレスの女は、全裸で粘液まみれのアンナリーヤを抱きかかえ、その頬を軽くはたく。

 触手の残骸に絡みつかれながら、リーリスの腕のなかで姫騎士は脱力しきり、かすかに乳房を上下させている。

「さて……おまえ、いったい何者だ? なんのために、こんなことをしているのか?」

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (9/13)【動揺】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (9/13)【動揺】

【目次】

【深淵】←

「リーリス! もう十分だ……記憶の再生を止めろッ!!」

 アンナリーヤの深層心理に潜りこんだ傍観者の一人、アサイラは怒鳴り声をあげる。その拳は、血がにじむほどに強く握りしめられている。

「グリン……わかってる、わかってるのだわ。でも……止められない! 記憶再生のコントロールが、効かなくなっている!!」

 もう一人の傍観者、リーリスが悲鳴のごとく叫ぶ。黒髪の青年とゴシ

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (8/13)【深淵】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (8/13)【深淵】

【目次】

【禁呪】←

──ガコオ……ォォンッ!

 詠唱が終わると同時に、姉姫エルヴィーナの背負う咎人の門、追放者の石扉が重い音とともに勢いよく開かれる。

 禁断の門の向こうには、正気を蝕むような極彩色の輝きを放つ空間が広がっている。アンナリーヤは臓腑が凍りつくような恐怖を味わいつつも、脚を微動だにすることができない。

「……ふえっ!?」

 おぞましい感触に、アンナリーヤは悲鳴をあげる。

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (6/13)【試練】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (6/13)【試練】

【目次】

【隔絶】←

──ヒュオオォォォ……

 凍原の上空を、からっ風が吹き抜けていく。雪は止んでおり、雲の裂け目から陽光が注ぐ。城勤めの魔術師が、『託宣』の魔法<マギア>で慎重に日取りを決定した。

 アンナリーヤは一人でヒポグリフにまたがり、手綱をにぎっている。その表情は、硬い。周囲に側近や護衛の戦乙女の姿はない。

 身にまとう実戦さながらのミスリル<魔銀>製の兜と胸当てが、陽光を反射

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (5/13)【隔絶】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (5/13)【隔絶】

【目次】

【童心】←

「たあぁぁーっ!」

「とりゃあーっ!」

 二人の戦乙女のかけ声が、同時に響く。片方はアンナリーヤ、もう一人は年長の戦乙女だ。それぞれ、訓練用である木製の突撃槍<ランス>を手にしている。

 天空城の中庭、成人ではないもののある程度の年齢を重ねたヴァルキュリアたちの集う訓練場に、堅木のぶつかりあう音が激しく響きわたる。

 平均的な戦乙女の身長ほど間合いをとって、けがを

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (4/13)【童心】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (4/13)【童心】

【目次】

【夜這】←

「エル姉さまー!」

 正午の明るい日差しに照らされる天空城の廊下に、少女の幼い声が響く。とてとてと足音を立てながら、小さな戦乙女が駆けていく。

 白い翼をと蒼い瞳を持ち、肩にかかった金色の髪を揺らしながら走り寄ってくる妹に対して、通路の先を歩くもう一人のヴァルキュリアが振りかえる。

「アンナ、どうかしたので。これから武術の稽古ではなかった?」

「どうもこうもないわ

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (3/13)【夜這】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (3/13)【夜這】

【目次】

【行動】←

「ふえ──ッ! 何者だ!?」

 自らの居室、その寝台のうえで横臥していた寝間着姿のアンナリーヤは、上半身を起こし、大声で侵入者に誰何する。

「アサイラッ!」

「あまり気は進まないか……!」

「いまさら、あとには退けないのだわ!!」

 リーリスの呼びかけに応じて、黒髪の青年が無防備な姫騎士に向かって駆けこんでいく。

 ひざ立ちになったアンナリーヤとアサイラは敷布

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (2/13)【行動】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (2/13)【行動】

【目次】

【歓待】←

「あー、食べた食べたのだわ。胃袋が破裂しちゃいそう……!」

 晩餐を終えて客間に案内されたリーリスは、ベッドに腰をおろしつつ下腹部をさすりながら、満足げに天井をあおぐ。

「おまえの胃袋には、無限に食べ物が入るのか? それはそうと……」

 自身も重い腹を抱えたアサイラは、あきれたため息をつきながら背後を振りかえる。すると、同行者は唇のまえに人差し指を立てている。

 

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【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (1/13)【歓待】

【第2部10章】戦乙女は、深淵を覗く (1/13)【歓待】

【目次】

【第9章】←

「緊張しているのか? ならば、不要だと言っておこう。今回の招待は、自分たちの厚意だからだ。羽を伸ばすつもりで、くつろいでほしい」

 アサイラとリーリスの対面に座るアンナリーヤは、横に並ぶ側近とともに上品な微笑みを浮かべる。黒髪の青年のゴシックロリータの女の身体は、こわばったままだ。

「あなたたちに対して、というより、この高さに緊張しているのだわ。雲のうえから地面に落

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