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いつも揺れていた

おめでとう
ーありがとう おめでとうー
 ”ありがとう おめでとう”
まさかこの三人旅が全員の婚前旅行になるなんてね
ー本当だよね すごい偶然!ー
”楽しもうね”
もちろん! で、もう式場や住まいは決めてるの?
ーうちは式は北海道がいいって彼が言っていて、ほら彼の故郷だし
 おばあちゃんにどうしても見てほしいんだってー
そうか、年配の人に飛行機移動はお願いしにくいからね
”私たちは職場が名古屋だから名古屋でって話しているよ、お互いの実家から
 もそんなに遠くないからね”
良いね、参列の人達も行きやすそうだね
ーそれで  自分は?ー
うちはほら プロポーズ先週だったしね  まだ何も話し合ってないよ
”そうだよね  これからだよね”
そうそう


綺麗な海でのアクティビティを終え
スパへ行ったのちに  夕暮れ後の海辺でディナーを楽しむ
海と空の境目が分からないくらいの暗闇から  穏やかな波音が聞こえ
砂浜に寄せる波しぶきの 細く白い真綿のような泡が消えては現れる

ー最初はね北海道のここの式場にしようって話していたんだけどー
”あっ知ってるよ その場所  確か有名な建築家の人が設計した建物なん だよね?”
ーそうなの!やっぱり有名なんだね  でもそこ披露宴をする所が無くってー


料理が運ばれてくる間の雑談は結婚式に関する情報交換ばかりだった


予定を立てたり  一つのイベントに向かって準備をしていく事が
得意な女性達
細やかな気配りを細部に散りばめ 自分自身と招待客、共に楽しもうとする
姿勢
はたからみる彼女たちは
女性である事の意義を全て持っているように思えた


私は結婚式の話よりも    
真っ暗な海の向こう側で生活する話に夢中になって 約束を置き去りにした


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