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コロナ禍のフランス② 衛生パス

2021年11月末にフランスに入国した。
事前に必要とされたワクチン接種証明書も誓約書も確認されずにあっさりと入国審査を通過できたことはすでに書いた。

入国して真っ先にするのが、衛生パス(Pass Sanitaire)の取得。

これがないとレストランや美術館に入れないし長距離鉄道にも乗れない。
正常な日常生活を送れなくなる。
反ワクチンを唱える人達が「自由を奪うな」と抗議デモを繰り返している様子が日本でもニュースになっていた。

海外からの旅行者が衛生パスを取得する場合、当初はオンラインで受け付けていた。
申請から取得まで3週間ほどかかると言われており、渡航に間に合うかどうかひやひやしていたら、11月5日に突如としてシステムが変わる。
オンラインサイトが予告もなく閉鎖され、フランスの薬局で直接対応する体制に。
フランスらしからぬといっては失礼だが、状況に応じた極めてスピーディな対応だ。
いまの日本では考えられないほど迅速で柔軟な措置。

スーツケースを拾って空港の薬局へ向かう。
特にどうということのない、普通の薬局だ。
行列待ちを覚悟したが、特に並んでいない。
パスポートと日本での接種証明書を提示して5,000円ほど払うと、すぐにQRコードを発行してくれる。
身構えていたけれど、あっけないほど簡単に任務完了。

AntiCovidというアプリを事前にダウンロードしておいた。

薬局で入手したQRコードをAntiCovidに読み込ませる。

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なんだかお気楽な紙吹雪が舞っている。
どうやらこれで完璧らしい。

あとはレストランなどの店舗で見せるだけ。

11月末時点で、レストランやショップに入店できる条件は以下の3つのいずれかを満たすこと。

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①2回目のワクチン接種から7日以上経ったことを示す証明書の提示
②48時間以内の陰性証明書の提示
③過去11日から6か月までの間のCovid-19感染証明書の提示(すでに感染した人は抗体が出来ているだろうから健康だという、フランスらしい合理的な発想)

ワクチンを打たない人は、②の条件を満たすためにレストランに行くたびに検査を受けるしかない。

検査はあちこちでやっているが、ワクチン未接種の人は3,000円から6,500円ほどかかる。
ワクチン接種をしていれば無料のようだ。

違反がばれると客は17,000円、店舗側も120万円という重たいペナルティが課される。
うっかりなのか、確信犯なのか、ごくたまに確認されないこともあるけれど、レストランは基本的にはどの店もルールを守っている。
ノルマンディーへの行き帰りの列車では確認されなかった。
(というより、そもそも切符の確認すらなかった。)
美術館は必ず確認される。
スーパーやデパートはされない。
ホテルもされない。
外食をせず長距離移動もしないのであれば、なくても困らないとも言える。
まあ、パリに来ていて外食をしないという選択肢は僕にはないのだけれど。

12月15日からは、65歳以上の人は3回目の接種(ブースター)をしないと衛生パスが無効になることになった。
2022年1月15日からは、ブースター接種をしてないすべての成人の衛生パスは無効になる。
つまり②と③の条件は使えなくなる。

フランスはヨーロッパのなかでもきわめて中央主権的な国家。
一度決まったら、さあーっとそちらに動く。

大統領の決定が、国家の方針が、日々の生活に直結してくる。
歴史のなかで生きている。
そんなことを実感させられる日々。

今日は誰が誰とどの店で食事をし酒を飲んだか。
すべての情報が国家に吸い上げられることになる。

ジル・ドゥルーズも真っ青のハイパー管理社会だ。
毎日毎日レストラン通いを続けているこの日本人は誰だ、
と話題になっているだろうか。
魚ばかりじゃなく肉も喰えとか、酒を飲み過ぎだとか思われていやしないだろうか。

衛生パス所持者の大半は2回のワクチン接種者だろう。
2回の接種だけではオミクロン株には脆弱であるとされている。
つまり、衛生バスを所持しているからといって、感染予防にもはや何の意味もない。
店は特に換気もしていないし、飛沫が紙吹雪のように舞い踊っているに違いない。

1日30万人という「歴史的」な数字を記録するのも、当然だろうと思った。

それが、フランスが選択した道だ。

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