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おバイク一人旅~福島県いわき市→最上峡→山形県酒田市(1日目)2021.4.22

2年前の7月、秋田を訪ねた際、道路の左右に桜の木が並ぶ、感動的なほどまっすぐな国道を走った。
大潟村のその道が「菜の花ロード」と呼ばれ、春には菜の花と桜が、道路の両脇でいっせいに花を咲かせる、と知ったのは、旅から戻った後のことだ。
それ以来、その風景を見たい見たい見たいと、ずっと思い続けていた。
見たいなら、話は簡単。行くしかない!
・・・というわけで、この春、私は愛機と再び、秋田への旅に出た。

1日目のルートは、磐越道の三和インターから、東北道を経て山形道へ入り、山形北ICで下りて北上。舟下りで有名な最上峡を通り、酒田市まで行くことに決めた。
前回は岩手県の盛岡ICから、田沢湖を通って秋田市に入ったので、今回はまったく違うルートを選んだ。

出発の朝は「一円玉のお天気」だった。
崩しようのない快晴、という意味らしい。
しかし、上機嫌で走り出した磐越道は、下道では想像もしなかったほど、風が強かった。
磐越道から東北道に乗り換えても、風はおさまるどころか、強くなる一方。さらに山形道では、あまりの横風に、飛ばされ高速から落ちる・・・という、どうしようもなくリアルな想像をしてしまった。
頭の中のその光景に、すっかり恐れをなした私は、予定よりひとつ手前の、山形蔵王ICで高速を降りることにした。

山形蔵王ICからはR13を北上し、まずは道の駅天童温泉で、昼食をとりつつ長めの休憩をした。
桜やユキヤナギが咲き、天童市は春真っ只中だったが、遠くに見える山々はまだ真っ白で、青空に美しく映えていた。
地元では見られない風景に、遠くへ来たという実感が湧き、心が飛び跳ねる。私は旅に出た時の、この何とも言えない感覚が、本当に大好きだ。

天童から、R13をさらに北上して、道の駅むらやまへ立ち寄った。
道路をまたいでいたのは、歩道橋だろうか。その上に鳥たちが止まり、お喋りをするように並んでいるのが可愛らしかった。
この駅限定の、ずんだ餡をホワイトチョコレートで包んだお菓子を買いたかったが、バイクに積んだシートバッグではつぶれてしまうので、やむなく断念。いまだに未練がある。

さらに北上して、尾花沢の手前、大石田町で県道189号を経由して、30号へ入った。
大石田畑線と呼ばれる、この県道30号が、なかなか楽しい道だった。最上川が見え、ちょっとした峠もあり、展望台のように視界が開ける場所もある。峠を攻める方には、きっと物足りないが、のんびりと走るにはちょうど良い。
そのままR47にぶつかるまで進み、左折して道の駅とざわを過ぎると、この日の1番の目的地、最上峡に入った。

かの松尾芭蕉が「五月雨を あつめて早し 最上川」と詠んだ、雄大な風景。山沿いに流れる川と、音を立てて落ちる白糸の滝が、不思議な雰囲気を作り上げていた。
舟下りをすることはできなかったが、最上川に沿って愛機と走るのは、とても開放的で、素晴らしい時間となった。

R47からR345に入ると、少し風景がさみしくなったが、迷わず走っていくと、とても神々しい風景に出会った。
真っ白な雪をまとって、下界を見下ろすようにそびえ立つ名峰、鳥海山。初めて見たその山は、驚くほど大きく、思わずバイクを止めて息を飲んだ。
出羽富士とも呼ばれる鳥海山が、信仰の対象となるのが、わかる気がした。厳しい火山の側面も持つ一方で見せる、白鶴のように凛とした美しさ。私は、生まれて初めて、山の姿に見惚れた。
そして、R345の反対側を見ると、忍び足で近づいていた夕景が、国道に沿う矢流川を銀に染めている。朝から1日、ここまで走ってきた疲れが、一気に吹き飛ぶ絶景だった。
この2枚の写真は、どちらも修正をしていない。

この日は、湯ノ台温泉にある、鳥海山荘に宿を取っていた。
湯ノ台温泉は、鳥海山登山の拠点らしいが、その一方で、湯治の温泉でもあるということだ。
山道を登っていったところにある、素敵な宿だった。露天風呂は温度が低すぎて、長くは入れなかったが、その分、内湯はのんびりと浸かっていられる心地良さ。部屋の大きな窓からは、R345から見たよりも、さらに大きな鳥海山を拝むことができる。
それだけでも、とても贅沢な気分だった。

和洋折衷の夕食はとても美味しく、山菜の天ぷらや岩魚のステーキなど、山荘ならではのお料理が嬉しかった。
食後、幸せな気分でもう一度温泉を楽しんだ。脱衣所に置かれていた、鳥海山の伏流水が美味しく、それだけでご利益がある気がする。
この日の走行距離は、約350キロだった。もっと走ったような気がしたのは、途中まで強風と戦っていたせいだろうか。
けれど、風光明媚な場所では風も止み、素晴らしい一人旅の初日だった。満足を抱き枕に、ベッドに潜り込むと、いつものように、あっという間に眠りに落ちていた。

2日目はこちら


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