見出し画像

映画【アルプススタンドのはしの方】

製作年 2020年
製作国 日本
配給  SPOTTED PRODUCTIONS
上映時間 75分
映倫区分 G

【概要】
夏の甲子園1回戦に出場している母校の応援のため、演劇部員の安田と田宮は野球のルールも知らずにスタンドにやって来た。そこに遅れて、元野球部員の藤野がやって来る。訳あって互いに妙に気を遣う安田と田宮。応援スタンドには帰宅部の宮下の姿もあった。成績優秀な宮下は吹奏楽部部長の久住に成績で学年1位の座を明け渡してしまったばかりだった。それぞれが思いを抱えながら、試合は1点を争う展開へと突入していく。

【評価】
★4.5(5段階評価)

【感想・レビュー】
―限定的なシチュエーションにこそ浮かび上がる物語の力強さ―

有名な俳優・女優が居るわけでわなく、
大掛かりな仕掛けやCGが散りばめられてもいない。
映るシーンはアルプススタンドと球場の廊下ぐらい。
メインキャラクターは6人ぐらい。

そんな限定的なシチュエーションだからこそ、話に力が無ければもはや目も当てられない。

が、

この映画はその話を、物語を浮かび上がらせるためにシチュエーションを限定したかと思わせるほどの魅力が詰まっていた。

端的に言うとめちゃくちゃ面白かった。

話の筋としては甲子園の応援にやってきた主要な登場人物達はどこか冷めた目で自分達の学校を応援している。熱血先生に促されても変わらずだ。

演劇部員の女子二人、元野球部一人。秀才帰宅部一人。吹奏楽部のマドンナ一人。熱血先生一人。基本はこのメンバーしか出てこない。

しかもまともな接点があるのは演劇部員の二人ぐらい。
あとは初めましてか、知っているけどほとんど話さない。
そんな関係性の中。グラウンドで進んでいく試合と共に彼、彼女らの悩みが解き解かれたり絡まったりしながらと共に話は進んでいく。

そんな小さな青春群像劇として話は進んでいく。

さて、そもそもこの作品なぜこんなに限定的なシチュエーションかと言えば、原作が第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞に輝いた、兵庫県立東播磨高等学校演劇部による戯曲なのだそうで。(!)

演劇で使われるからこそシチュエーションを絞ったわけかと、凄く納得した。

しかし、演劇部の先生がこの作品を考えたと考えると相当びっくりだなと思った。そのぐらいしっかりした内容でそれでいて、コミカルで、なのに10代にしかだせない悩みが描かれていた。本当にいい話。

さらに、上記の登場人物の他にも多少は出てくるのだが、基本本筋にはあまり絡まない。しかし、顔や姿は出てこないのだがやたら名前が出てくる登場人物はいる。しかも割と本筋に絡む。そこが本当に面白い。きっと見た人は皆「彼」が好きになると思う。

そして登場人物は皆、捨てキャラというか、ぞんざいに扱われる人がいないのも凄く好感が持てた。めちゃくちゃうざがられた熱血先生ですらだ。

ひとりひとりが心に「何か」を引っ掛けていて、中々取れないのだが、そのもどかしさも10代ならではないだろうか。実は大人だって同じなんだけどね。 

そういったもの全部ひっくるめて高3のあの頃をギュッとまとめてアルプススタンドのはしの方に押しやったのがこの作品だ。

本当に素敵な映画でした。
出ている人も凄く魅力的でした。

気になった方は是非!
映画館ではもう中々上映していないかもですが、上映していたら是非是非!

【公式HP】
https://alpsnohashi.com/

【予告】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?