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乙 まみこ
2021年10月4日 23:37
プロウテスはいつも眠かった。仕事をしていても、食事をしている時でも、夢の中でさえも眠かった。家業の魚屋の店先で商品が猫に盗られないように番をすることがプロウテスの仕事だったが、たいていは寝ているので魚は盗られ放題だった。それでも仕事を終え夕食を囲み、プロウテスがその日の居眠りで見た夢の話を聞くのが家族の楽しみだったので叱られることもなかった。店先に置いた使い古しの肘掛け椅子に座り、今日もウ
2021年10月18日 23:25
困った、困った、困った。これは本当に困った。まさかこんなことになるなんて想像もしていなかったことが世界に起こった。耳と両目までは黒く、鼻筋から胸の辺りまではふわふわとした白い毛に包まれたハチワレ。彼氏の浮気が発覚(しかも相手は親友)した朝にアタシは猫になっていた。しかし不幸中の幸いと言えるのかどうかは微妙だけれど、世の中の働き方が変化していたおかげでアタシは猫だけれど仕事を得ることができた
2021年10月25日 22:20
「そのひと、やめた方がいいよ」「え?何、急に。私に彼氏ができてひがんでるの?」久しぶりに会って幼馴染みの小雪に新しくできた彼氏の話を聞いていた。夏の暑さをずいぶんと引きずったままだった10月もさすがに落ち着き、窓の外には冷たい雨が降っていた。大きな通りから一本入ったところの古いビルの二階にあるデレデレダンネバードでコーヒー好きの小雪はブラックコーヒーを、私はカルダモンとしょうがのよく効い