ひどい気分だ
最悪だ。今このタイミングで読む本ではなかった。
最近対人関係のどうにもならない壁と向き合うことがあり滅入っていた。
私はメンタルが強くない。
人にはいくらでもかっこいいことを言えるくせに自分がそれをできないのだ。
生まれた場所、育った場所、学んだ場所、働いた場所、付き合った人、仲良くなった人、職場の人、家族。
今までの全ての出来事によって形成された自分の人格を私は認めることができない。周りのせいにしてしまいたくなる私はまだ子どもなのだと自分の脳みそに押しつぶされる。
気が滅入ると、読書をする。自分の知らない世界を自分の知らない誰かになって体験できるから現実逃避にはもってこいだと思っている。
好きな作家は乙一さん。非現実的な現実をスリルと共に言葉で体験させてくれる。バッドエンドが多いが読み終わるとにやけてため息が出る。
私は紙媒体で読むのが好きだけれど移動中に聴けるのでオーディブルをダウンロードしてみた。知らない人の作品も覗いてみるか、と目に止まった作品を読んでみることにした。
『汝、星のごとく』
本屋さんで表紙を見て綺麗だなと気になっていた。
朗読時間は12時間
3日間で聴き終えた。
ストーリーだけでいうと、よくある話だなと思う。
ただ言葉の表現が上手い。言葉にするのが上手い。
現実じみた話で主人公達の状況や心境がいちいち心に刺さる。刺さる上に自分と重なるところが多い。特に今は。ストーリーを聴いていると苦しくなる。し、何度も泣きそうになった。
もっと非現実的な話を選べばよかった。
今の私にはひどくダメージが与えられた。
ストーリーは別に好きではない。ただ言葉の表現が的確すぎる。気持ちがわかりすぎる。
そこまでの気持ちにさせる作品はなかなかないと思う。
いや、私が現実的でない作品を読むことが多かったからかもしれない。
私は、普通本を読む時は現実にいる自分と切り離して、
脳内で言葉で作り上げられた映像を再生している。
観ている。という感覚に近い。
しかしこの作品は現実にいる自分と切り離してはくれない、嫌でも自分の環境を考えさせる作品だ。
きっと今読んでいなければここまで響かなかったのかもしれない。
自分でもわかっている現実、どうにもならない状況、それでも足枷を自分で決めつけ決断できない自分。それを的確に言葉で教えてくれる作品だった。
苦しくなった。
作中に自分の心に響く言葉がいくつかあった。
ずしりと現実の重みと共に自分にのしかかったようだった。
しかし、この作品から学んだこともある。
人は選択し、切り捨てていくことで自分を認めていく必要がある。同情だけでは人の感情の波にさらわれて自分を見失ってしまうのだ。
きっとこのタイミングだからこの作品に出会ったのだろう。必然がそこにあってここに私がいてそこにこの作品があった。
ひどく心を突き刺す作品だったが大人な部分の私から言わせると『とても良い作品』だったと言えるのだろう。
被害者ぶってる弱い自分からしたら現実の自分と向き合わせられる『出会いたくない作品』でもあった。
いつかこの作品を読んでよかった。と思える自分になれたらいいなと思いました。
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