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こたぬきたぬきち、町へ行く➃

 一歩踏み出すと大勢のひとが行き交う駅前通り。
 たぬきちはおおきなおおきなビルを見上げすぎて、首が痛くなりました。

 (そうだ!お芋畑のおばあさん、その辺の人に道を訊けばいいって、言ってたな!えーと、その辺の人、その辺の人……)

 ちょうどその辺にいたのは、学生服を着た金髪のお兄さんでした。たぬきちは彼を見た瞬間、思わず「ヤンキーだ」と後退りしそうになりました。
 ぽんた父さんから、

「するどい目つきで不自然に肩をいからせながら歩行する若者がいたとしたら、それはヤンキーという種族の人間に違いない」

 そう教えられていたからです。
 また、ぽんた父さんはこんな風にも言っていました。

「ヤンキーにはけっしてなめられてはいけない。奴らの前では常に堂々としているように。さもなければ、お前はかつあげというすごく油っこい食いものにされてしまうのだ」

 たぬきちは足がすくむ思いでしたが、ここで負けてたまるか、と意気込みます。ヤンキーなんか怖くないぞ!堂々と、話しかけるぞ!

「お、お、お兄さん。ちょっと教えてくださいな。この町の映画館って、ここからどうやって行けばいいのでしょうか」

「あん?なんだよ、ぼうず。映画観に行くのか?ひとりで?」 

「そう。今日が人生で初めての映画なのです」

⑤へつづく

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