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20170626診察日記

家族面談のあと、はじめての診察は6月最終月曜だった。いつものように、まずは血を採ってもらうところこから、長い1日は始まる。


◎病名:進行性乳がん(多発性骨転移・多発性肝転移)
◎治療歴:ホルモン療法→外科手術(右乳房全摘+腋窩リンパ節郭清)
→トモセラピー(骨)→アフィニトール →ケモセラピー ※この間、骨治療でゾメタ継続
◎治療スケジュール:アバスチン+パクリタキセル【再】‥3クール目に入れるかどうか
◎おもな症状:骨髄抑制(免疫↓)、睡眠障害、倦怠感など。2週間休んで元気。

「今日は(専用容器に)4本分採取しますね」と言ってきたナースは、若い女性。見かけない顔だった。自慢じゃないけど患者は、初対面で採血のうまいへたがわかるという特殊能力をもっている。この人は残念ながらハズレだということはわかっておるよ。ちょっと難しい血管で申し訳ないけど、せいぜい良い経験をするがいい。

偉そうに心の中でそう呼びかけていたら、案の定ナースは苦戦していた。血管をキャッチできず、ぐいぐいと針を奥まで刺し込んでくる。血管が動くっていったでしょ。そんなに動かしたら痛いんだよー。1度目はやっぱりだめで、別の場所を選んでなんとか入った。すると今度は血が出てこない。勢いが弱くて、容器がなかなかいっぱいにならないようだ。まあ、これは患者側の問題でもあるかもしれない。(←水分不足とか言われますね)

3本目に差しかかかったところで、血の流れがぴたっと止まった。どうするんだろうと思ったら、ナースがこういった。

「3本でいけるかどうか(採血室の偉い人に)確認してきます」

いや、大丈夫じゃないと思うよ。だって、必要だから4本って指示が出てるんでしょう。3本の日もあるけど、それは検査項目が少ない日なんだよね。5分ほど待たされて、ナースは息を切らして戻ってきた。「いけそうなので3本でオッケイです」

えー!うっそだー!!

ぜんぜん納得できなかったけど、終わりと言われたらもう採血室を去るしかない。診察までの間、院内で時間をつぶすことにしよう。「傷病手当」の申請とか、書類がいろいろたまっていたから、事務作業でも片づけておくか。院内の「患者サロン」というコーナーのテーブルを借りて、黙々と作業‥患者業ってほんとあれもこれもいろいろ、あるんですよ。すると小一時間ほどして、院内の放送が聞こえてきた。

「エリィさま(実際は本名フルネームで)、エリィさま、2F採血室までお越しくださいませ」

言わんこっちゃない‥

身に覚えのある患者はぶつぶついいながら、1Fの患者サロンから2Fの採血室へ移動した。がんセンターは広い。でっかいイオンモールみたいなの。この建物では、ちょっとしたことが大移動になる。

採血室の受付へたどり着くと、申し訳なさそうに事務員さんが待ち受けていた。「ちょっと血液が足りなかったみたいなんです‥もう1度採血させていただきたいのですが‥‥」と謝っている。

どうぞどうぞ。何回でも刺しちゃってください。毎回かならず何かしらのミスにふりまわされるのが患者業というもの。こんなことどうってことないさ。

患者は右腕注射禁止である。乳がんの外科手術で、脇の下のリンパを取っている。以来、右腕の制限は「重たいものを持つな」から「蚊にさされるな」まで、多岐にわたる。

そのなかでも、不便度で断トツ第1位が、「右腕注射禁止」だ。この何年ものあいだ、左手1本にすべての針を刺してきた。回数は100回を軽く超えているだろう。血管はさされるのを嫌がっている。腕を見ても血管がどこかわかりづらい。意を決して刺せば逃げる。(血管が動く)

あるナースは3回失敗してとうとう採取できなかった。交代しますとやってきたナースが、また刺せないこともあった。そしてどんなときでも、患者は針を刺す前にわかってしまう。目の前の人が1回で刺せるかどうか。ここ重要なんですけど、できない人もいれば、もちろんできる人も(たくさん)いるってこと。

はじめから「この人ハズレ」と思っても、患者は腕を差し出すことにしている。なるべくやりやすい血管に誘導したり、寒い日はカイロで腕を温めたり、こちらも最大限の努力をするのが礼儀ってもんだ。幸い、やりなおしのナースは「アタリ」だったため、不足の容器1本分採取は、1分以内に終了した。

無事に血が出そろったところで、診察の順番が回ってきた。2週間ぶりの採血結果。月末は腫瘍マーカーも調べてくれる。あんまり重要視されないけどさ。患者にとって「数字」って唯一のこたえみたいなものでしょ。あてにならないと知っていても、マーカーが上がればどんよりする。下がればスキップのひとつもする。今回は結果をすべて公開してみよう。↓ケータイの人は見づらいかも‥↓

毎週のように血は採っているんだけど、1ヵ月前のデータと並べてみました。未校正のためミスありありです。また基準値は通院先のもので、あんまりアテにしないでください。memoもあくまでじぶん用であります。もろもろご容赦願います。

「白血球」「好中球」を合格ラインに保てていて、一安心。まずは化学療法が受けられるかどうか?が最重要課題なもので(少ないと好中球100とかになる)。肝臓の値、これは多発性肝転移の影響で軒並み異常が続いている。何とか「あんまりあがっていない」ということで、オレ的合格ラインである。

皆さんが気になるのは下段の腫瘍マーカーだと思う。これは気にしない。というか、気にすると生きる気力がなくなるでしょ。CA15-3というのが、進行乳がんの指標でおなじみのマーカー。以前、値が100を超えたって泣いて相談されたことがあるんだけど、どうかオレのを見てください。長い間、900前後をうろうろしていた。でもごはんを食べてじぶんの足で歩いて、調子に乗ったらライブで踊っちゃってるから。あんまり気にしない気にしない。

もちろん、これは自慢できる結果ではないんだけどね。これが治療方針の決定打になることはないんです。先月より、少しだけ下がっているので、今の化学療法、ちょっとは病気の進行をコントロールしているのかも。ってことで、3クール目もがんばんべ。

===診療明細===
再診料…73点
医学管理等‥410点
検査料‥312点(採血)
投薬料‥151点(眠剤ルネスタ20回分)
注射料‥22415点(パクリタキセル・アバスチン・吐気止など)

合計→23361点(233,610円)※患者は3割負担/高額限度額超過で支払いゼロ