見出し画像

プラットフォーマーの原則

近年、数々のプラットフォームが空前の速さで出現し、古典的な企業をデジタル化と共に飲み込んでいるのは、ある意味1つのトレンドと見て取る事ができます。

GAFAMと呼ばれる時価総額TOPtierのテック企業は、どれもプラットフォーム企業であり、ここ10年の間台頭してきたと考えると、プラットフォーマーの急成長の様相が十分な程に分かります。

また、プラットフォーマーの中では、創業わずか数年で評価額10億ドルを超えるユニコーンも続々と輩出され、市場を破壊している点からも脅威を感じざるを得ません。更には、様々な業界で見られるシェアリングエコノミーの概念もプラットフォーム企業によって牽引されています。

そこで、これだけ注目されているプラットフォーマーにおいて、何が成功要因となりここまでの成長を遂げているかを見ていきたいと思います。

1.プラットフォームの支柱

プラットフォームは従来の企業とは明らかに異なっており、そこには様々な経済原理も働いています。

まず、イメージしやすいのが「ネットワーク効果」でしょう。

プラットフォームでは、ユーザーが増加するにつれて、サービスそのものの価値が高騰し、指数関数な価値向上が見られます。また、SNSのように直接的な影響をもたらすものと、AppStoreのような間接的なネットワーク効果をもたらすものがあり、それによって特徴も異なります。

更にネットワーク効果というものは、普及率が加速する臨界点があり、そこを超えると、市場において独占状態を形成し、競合他社に対して障壁を構築します。これは紛れもなく、プラットフォームを支えています。

他にも、Amazonのようなプラットフォームでは、価格のフレキシビリティーに目を向ける事ができます。プラットフォーム内の製品の需要は価格に応じて弾力的に変化し、価格の変化率に応じて、需要変化率も表現されます。つまりは、プラットフォームの成功において重要な指標になり得ます。

上記の2つ以外にも外部性や規模の経済等、プラットフォームの支柱になる原理はまだまだありますが、ここで全て書いても面白くないので徐々に綴っていきたいと思います。

2.構造プランニング

プラットフォームを立ち上げる際に、重要なポイントとしてまず挙げられるのが、設計期にいかに隅々までプランニングできるかどうかです。

ここでいうプランニングというのは決して技術的側面を指すものではなく、より根本的な事業構造に対してのものです。設計期の段階では、プラットフォームの基盤を作る事が重要であるため、技術的課題に関しては副次的なものとして捉え、主要課題に対してアプローチしていく必要があります。そこでその主要課題を3点取り上げていきます。

まず、1つ目が、「ステークホルダーの把握」です。

プラットフォームは生産者と利用者を誘致し、取引を仲介する事をビジネスの基盤としているため、当然ながら両者を初めとしたステークホルダーの存在を明確に把握する必要があります。生産者や利用者以外にも、プラットフォーム運営において協力して下さる事業者や関係者等、抜け漏れなく把握しない事には、後々、プラットフォームに穴が生じ、支柱でもあるネットワーク効果は生まれなくなります。そのようなリスクも加味した上で、全てのステークホルダーの把握にまずは注力するようにしましょう。

そして、2つ目が、「マーケットサイズ」です。

マーケットサイズは、TAMやSAM、TMを中心に大局的に算出され、この工程は基本どの企業も踏む事でしょう。しかし、プラットフォーマーにおいては何点か注意する点があります。

私が最も重要だと思うのは、優先的な市場の選定とそれに応じた具体的な展開ストーリの設定です。ここへの注意は、指数関数的な成長を担保する上で重要なファクターになり得ますし、競合との優位性を築く上での根拠になります。また、戦う上での明確な方向性の確立にも繋がりますので、最初に検討する必要があります。

他にも生産者と利用者の相互作用における性質や参加者同士の繋がり(直接or間接)についてもマーケットサイズを算出する際に意識を向けるべきだと思います。

最後に、3点目が「ガバナンス」です。ガバナンスに関しては以下のnoteで書いたので軽く振れるだけとします。

https://note.com/551455/n/nf816e8d97f18

プラットフォームを運営する上でのルールを初期の段階である程度設計していく事は、後々の運営に大きな効果をもたらします。生産者と利用者の登録やプラットフォーム内での活動、更にはそのようなものにどこまで関与するのか等、細かな粒度でガバナンスを検討してみて下さい。

以上が、初期の初期に重要視される、事業における構造プランニングとなります。内容としては当然かもしれませんが、初期に取り組む事に意義があるのでその点を念頭に置いてみて下さい。その上で、技術的ソリューションを構築し、プラットフォーム事業に乗り出しましょう。

2.プラットフォームのPMF

技術的ソリューションを構築し、プラットフォームを開始すると、自分たちが掲げた仮説を検証するための実験に移行するようになります。

始動したプラットフォームにおいて参加者が交渉、取引を実現できているかどうかといったプラットフォームのPMFが1つの目標として浮上してきます。コミュニティ内での強固な結びつきが根拠に基づいて証明されない事には、サービスとしての規模の拡大も当然ながら実現しません。

そこで上記の目標の達成率を高めるためにはどうするべきかについてお話していきたいと思います。

まず、重要な観点になるのが、「参加者の獲得」です。

しかしながら、プラットフォームは両サイドの存在よって成り立っている特徴があるため、どこからメスを入れるべきかという膠着状態に直面してしまいます。そのため、まずはその状況を打破する必要があるでしょう。

そこで、過去の成功事例から読み解いても、最初のステップとしては、生産者(供給側)の参加者獲得からスタートするのが良いと思います。その理由としては諸説ありますが、大きく2つに分けられます。

1つは、インセンティブ設計のしやすさです。

何も享受できない中で利用者にインセンティブを与えるのは難しいですが、生産者には、長期投資としての初期利用のメリットや金銭的インセンティブを提供でき、参加者として誘致するハードルは低いと考えられます。

そして、もう1つが上記のようなインセンティブを設計すると何が何でも利用者が必要となるため、生産者自体も積極的に利用者を誘致する努力をするようになり、サービス全体として追い風になる事でしょう。

次に、参加者を獲得し、本格的にプラットフォームを始動できる状態になった際に求められるのが参加者同士の仲介人としてのサポートです。

流動性の最大化を意識した上で、双方にとって相性がいいマッチング精度や表示速度、また双方の課題解決に足りない機能の実装等、あらゆる観点での検討は仲介人としての責任になります。また、規模が拡大していく未来を見越した上で、ルールの設計も必要になってきます。

このように、検討事項は多岐に渡ってありますが、その可能性全てに対して、事前対処する事がPMFにおいて重要になってきます。

そして、最後に重要になるのが、最適化とも言えるプラットフォームの根本的見直しです。

参加者双方の根本的な課題の解決になるためのプラットフォームがコアとなっているかや参加者からのFBを取り入れ、改善するといった循環ループが行われているかといった取り組みです。そしてその取り組みを、自社で定めるKPIと共に緻密に追跡する必要があり、それがPMF達成のラストワンマイルの最適化になります。

ここまでのポイントはあくまで最低限のものなので、意識的に取り組み、後は自社のサービスの特徴に合わせて各段階をアップデートし取り組みをしていきましょう。

それでは、プラットフォームのPMFが達成し、次の段階として一定の臨界点を超え、ネットワークを生むためには何が求められるでしょうか。

3.爆発的成長のカラクリ

ここは、プラットフォームが一定の成功を生むために重要な観点となります。

そこで、まず求められるのが更なるユーザー数の拡大です。

オウンドメディアでのアプローチだけではなく、SNSやペイドメディアを活用した戦略的獲得が命題として浮上してきます。そこで、顧客獲得にかかるコストが重要になってくるため、ただ運用そのものを作業的に行えばよいといったわけではありません。SNSによるマーケティング等の詳細はまた別途記載しいていくつもりですが、根底にある意識としてバイラル係数を意識したマーケティングに取り組む必要があると思われます。

そして次に、上記のような獲得ユーザーを確実にエンドユーザーとしてサービスに滞在させるためには、オンボーデイングプロセスの最適化が重要課題となります。

ユーザーの継続的利用を確実に担保し、そして獲得ユーザーとの安定的な関係性を維持する効果を生むための取り組みであり、それは同時に他のユーザーにも相互的な作用として影響をもたらします。ユーザーがサービスを使用し続ける上でのインセンティブにもなりえますし、オンボーデイングプロセスはかなり重要です。

エンドユーザーがサービス内に長期滞在結果を生むという事は、ある程度の満足度の実現に繋がり、この結果は、既存ユーザーによる新規ユーザーの獲得といったバイラルループを作り出します。他のプラットフォームを活用して新規ユーザーを直接的に獲得する事も重要ではありますが、同時にこのようなバイラルループを生む事を戦略的に考えると、既存ユーザーとの関係値もかなり重要なポイントになってきます。

そこで次のステップとして意識するのは、両ユーザーのバランス感覚です。利用者における需要と生産者による供給の均衡が崩れると、当然ながら利用者はプラットフォーム内で十分に満足できる体験ができなくなり、関係性の構築は愚か、解約率が高まる悪循環を生んでしまいます。

そのため、上記のような状況を生み出しているボトルネックが何かを特定し、相互作用とユーザーの取引体験が最大化されるようなポイントまでコントロールする必要があります。

そして最後に、各ユーザーへの価値提案を考える事の重要性について触れたいと思います。

既存顧客と新規顧客、ここだけを見ても当然ニーズは微妙に異なります。更により細かくセグメントを分けると、より多様で具体なニーズが抽出されます。それ全てに対応する事はかなり難儀かもしれませんが、それぞれのユーザーに応じた価値提案は欠かせません。また、最低でも上記のニーズをある程度言語化して念頭においてユーザーに向き合うかだけでも全く異なる結果を生むと思います。

以上の点が、プラットフォームにおいて爆発的な成長を生む上での基盤になるポイントです。

それでは、クリティカルマスを超え、ネットワーク効果を生み、安定性を維持したまま、成長をしつづけるには何が必要でしょうか。

4.防御壁の構築

爆発的成長の下、ある程度の成長を遂げた段階において、サービスに確固たる防御壁を構築する必要が出てくる同時に、それは利益的な成長にも直結します。

そこでポイントになってくるのが、ユーザーのリピート率やセッション時間等の指標です。ここを安定的に維持する事が、対競合に対しても大きな防御壁となります。具体的には、上記ので記した各セグメント毎のユーザーへの価値提案の把握、そしてそれに応じた機能開発が鍵になってきます。must haveのみならず、ユーザーの課題感の優先順位に応じてnice to haveの機能もしっかりと意味を見出して、開発していく必要があります。その際には、must haveの機能との関連性も念頭に置く事がポイントになってきます。

そうする事で、各ユーザーに対してプラットフォームの多機能構造の価値をシンプルな体験として提供できるようになり、ユーザーのサービス利用度は高まっていくと考えられます。

このように、サービスそのものの盛り上がりを生む事はプラットフォームを運用していく上で重要な視点となります。

更に、上記でも少し触れましたが、対競合に対しての直接的な防御壁の構築もこのフェーズにおいては必要不可欠な施策となります。

その具体例としていくつか挙げていきたいですが、まず有効な施策として該当するのが、利益率の高いかつニッチな領域にリソースを特化させる事です。プラットフォーム全体に対して意識をむけつつ、その中で特にフォーカスするべく領域を設定する事が、対競合との1つの戦い方です。このようなニッチ特化の戦略は更なるサービスの成長における起爆剤になる事でしょう。また、他にも積極的な模倣も1つの戦略として挙げられます。全く同じモデルで全く同じ領域で展開するのは意味を持ちませんが、例えば成長性のあるプラットフォームのビジネスモデルを利益率の高いマーケットで模倣し、それを促進剤として今後の展開に繋げていく事は、プラットフォームの成功において大切な戦略になり得ます。

他にも例を挙げるとキリがないので、プラットフォーム戦略に関する書籍を読む事をオススメします。

ここまで、プラットフォームにおける成功要因をある程度掴む事ができたと思います。しかし、更なる成功において欠かせないのが、ユーザー同士の信頼の醸成です。

最後にここに触れて締めたいと思います。

5.プラットフォームの基本は「信頼」

生産者と利用者等、ユーザー同士の取引を前提とするプラットフォームにおいて互いが信頼できていない事には、決して成功に導く事はできません。

それでは、一体そのような「信頼」はどのようにして構築されていくのでしょうか。

まず、ポイントになるのが、「信用」です。

参加社同士の身元や背景が不透明な状態では当然ながら利用者は常にサービスに対して、生産者に対して疑念を抱く事になり、いずれはサービスを解約する結果になる事でしょう。互いのプロフィールの品質とプラットフォーム内での一連の体験のアクティブ率は一定の相関性があると考えられます。自分事化してみても分かりますが、このような点は信用の基本要素になるので注意しておく必要があります。

次に肝になるのが、貢献度の可視化です。

これはユーザーに対しての信憑性の把握にも繋がります。各ユーザーの貢献度、関与度等は、ユーザーの過去の行動における信憑性の担保になりますし、そのような表示がされるからこそ、ユーザーは意識的に良質な行動をするように統制される事だと思います。貢献度がプラットフォームでの取引において重要であると理解すると、質の高い行動がプラットフォーム内で自然に量産され、好影響を生む事でしょう。

そして、最後にもう1つ挙げるとすると、コミュニティの一貫性が重要視されると思います。

それは、コミュニティの特色や文化、更には規制等、コミュニティ内で意図的に構築できるもので、ここに一貫性があり、それに応じた体験が全ての利用者に提供できているかは、信頼を形成する上では欠かせません。

以上が、プラットフォームにおいてユーザー同士が信頼を構築する上で意識するべき視点となります。

これは、当然ながら初期に構成し、持続させる事が重要で、その持続の過程においても細かな信頼の再構築を求められるので、常に「信頼」というものをプラットフォームのキーコンセプトに置いておくのが良いと思います。

これまでかなり長々とプラットフォームの成功要因について綴ってきましたが、身近なサービスに目を向けてみると納得感を得られる事がもしかするとあるかもしれません。また、プラットフォーム自体はまだまだ量産されていくモデルですし、今まで書いてきたポイントだけでは成功しない程、未知な視点も隠されています。

それらを紐解き、更に成長確度を高める上で今回の内容を活かしていければと思い、長くに渡って書いてみました。

今回も最後まで精読して下さった方ありがとうございました。今後も発信し続けるので読んでくれたら嬉しいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?