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切なさに寄り添う

幼子の心は狭い。喜びや悲しみですぐいっぱいになってしまう。そんなにきつく叱ったわけでもないのに、涙目が怒っている。先生に不満があるのかと尋ねると「そうだ」と大きく頷いた。こちらも不満の原因が思い当たらなかったので、怪訝な顔で相手をにらみ返したが、正直なところ穏やかな子が初めて見せた反乱に戸惑いを隠せなかった。

「不満があるのなら、言ってごらん。」

でも、こちらをにらみ返すばかりで埒が明かない。胸がいっぱいで、どうすることもできないのだろう。にらみ合いは10分間ほど続いた。

「わざと押したんじゃなかったんだよね。」(うんと首を縦に振る)

さっき、そう言って涙目になったのだが、「わざとじゃなくても、それがもとで大怪我させることになったら、ただじゃすまなくなるから、気を付けてなくちゃね。」と言ったとたん口を開かなくなってしまったのだった。

「君が押す前に相手に何かされたのかな?」(ううんと首を横に振る)

さあ、困った。他に何があるのだろう。

「じゃあ、その時、謝った。」

そう、これが、幼子にとって待ちに待った一言だった。今までぐっとこらえていた感情が一気に爆発した。涙は、堰を切ったように溢れ出し、嗚咽が体を震わせた。

「そうか、謝ったのか。」

「ぼく、3回も謝ったんだよ。」

涙声でそう言った。切なかった。小さな心で、精一杯、自分の誠実さをわかってもらおうと懸命に戦っていたのだ。何とも切なくて目頭が熱くなった。

「そうか、3回も謝ったのか。先生、それを知らなくて、すまないことをしたね。」

感情とは、厄介なものだ。でも、感情無しでは人と人とを深く結びつけることはできない。

「先生、お花に水をあげてくるからね。」

泣いたカラスがもう笑っている。確かな手応えを感じながら、今度はこちらが大きく頷いて見せた。

(See you)




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