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『おちょやん』6 大正児童労働の地獄が始まる

 テケテンテケテン! 今週も、舞台の上から始まります。あの悲惨極まりない一週を、テンポよくボケとツッコミをしながらざーっとダイジェスト.毎週やるのかと言いながら、綺麗にまとめます。

 これも軽いようで超絶技巧。本作がなんで松竹を描くのか、理由はわかるで。ビフォー吉本、本来の上方を取り戻したいんやろなぁ。

 『スカーレット』の撮影秘話で、納得したものがありました。関東出身の松下洸平さんは、「やんけ」という語尾を使ってしまう。それを滋賀県出身の林遣都さんが、きつい言い回しだと指摘したというもの。そうなんですよ。吉本が全国区にした関西弁って、地元からすればちょっとちがうものではあるのです。

 吉本のお笑いには、違和感がある。笑いながらおちょくって、マウンティングするような。笑いは笑いでも、冷たい何かがあって。正直、何がおもしろいのかわからなかった。自分はずーっと、笑いのセンスがないと思っていたものです。今でもあるかようわからんけど。

 でも、大阪に行くと、もっとやらかいあったかい笑いがある。そこまで戻したるっちゅう、熱いもんを感じますわ。ほな今週もいくで!

 あ、そうそう、購読者の皆様ありがとうございます。無料部分も長めにしますが、総評部分は有料にしますので。よろしくお願いします!


道頓堀、おとぎの国、そしてなにわのブロードウェイ

 大正5年(1916年)――。
 うちは捨てられたんやない。うちがあんたらを捨てたんや――そう啖呵を切って出てきた道頓堀。東京の浅草と並ぶ、日本のブロードウェイ。そんな道頓堀ですわ。『鬼滅の刃』では炭治郎が山の中から浅草まで出てきてびっくりしていましたが、それと同じ驚きが千代にもあるのです。

 何もかも驚く千代は、奉公先の「富安」へ。ここからいかにも“いらち”(せっかち)な座布団抱えた女中さんがででーっと出てきて、千代とぶつかります。千代はここでとっさに、河内弁で言い返す。これから働くところで生意気と思われそうですが、ええと思います。千代は怒りの反射神経が鋭い子。怒り方がそもそもわからない人もいて、女性はその傾向がより強くなるものですが、千代はそこがちがう。
 
 ここから、怒涛のあたたかくない、人情どころではない大正児童労働が始まります。

本音と建前は、子どもでも使い分ける

 まずは面接。女将は親が好きかときいてくる。 女将は親が好きかと聞いてくる。まあ、大正の子は教育勅語を習ってますから。千代は学校行ってませんけれども。ここで千代の脳内が出てくる。肯定したらええんやろな。そういう下心ありきで、ハキハキと親への思いを言います。

 しかし、これがハズレ。親孝行だと盆暮正月帰りたがるからダメだとマイナスをつけられる。ここで千代は、面接用の仮面ではなく、栗子への煮えたぎる怒りを思い出し、戻る場所はないと言い切ります。

 でた。日本企業のあかんところを見せてくるし、関西人なら「あーっバースはそれで!」となりそうな話やね。

 こんな大正から時代が変わったっちゅうけど。こういうこと、子持ちの労働者が言われますやろ? 進歩しとるんやろか? なんでバースを出したかっちゅうと、バースもお子さんへの対応めぐって阪神と揉めたやん。
道頓堀に沈めたカーネル・サンダース像よりも、バースへの塩対応のような、家族愛すら認めんことが、日本にかかった呪いなんやないですか。

 『パラサイト』が話題かっさらったやないですか。あれは作品そのものの出来がよいだけでなく、労働基準を徹底的に守ったことも画期的でした。韓国芸能界も労働搾取が酷い。そこを改善する流れもできてきている。朝ドラも週5になったし、複数脚本家になったし。ちゃんと働くもんを守ってええもん作る、そういう時代にしていかなあかん。そのためにも、大正児童労働の悲惨さも描いていかなあかん。

 だって、しずは容赦ないんですよ。
 千代の対応があかんと、一ヶ月で首にすること前提にして、コキ使うことはそうするんです。しかも、労働指示が曖昧っちゅうか。引き継ぎ書とかないんやろな。まあ、千代はそもそも読めんけど。
 家事労働を朝から全部やる。細々と見て覚えろとぶん投げられる。その中に、“いとさん”(お嬢さん)への弁当配達も入っている。いつ休めばいいか? そういう指示、なし! しかも千代は、ネズミの始末で聞いた指示が飛んでいってしまいます。この脳内をきっちり味のある絵でも説明するところがよいですね。
 そうそう、『鬼滅の刃』の悪影響みたいなもん言われますけど。あれは休憩と治療にかなり時間をとっているから良心的なんですよ。仙豆食べたら疲労回復! ドラゴンボールで死人も復活! そういう方がむしろあかんから……。

視聴者もフル回転の月曜朝

 月曜日から、情報量がちょっととんでもないことになってます。千代の業務内容もすごいけれども。

 いとさんがいること。
 夫婦関係で夫が弱そうなこと。
 河内弁とはちがう、別の関西弁のこと。返事は「へえ」!
 タイトルの「おちょやん」は、使い走りの女という意味。
 脳内描写をみっちりとしていくつもりらしい。千代が何を考えてそうするのか、本音と建前の使い分けにご注目。
 『わろてんか』では今ひとつ使いこなせなかった成田凌さんを、朝ドラで再生する野心があるとみた!

 『スカーレット』喜美子の女中時代も、大変なものがあった。その喜美子すら霞む、圧巻の大正時代児童労働のおそろしさがそこにはありました。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.c…

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