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コロナ禍の黄色いバスの運転手・オンラインインタビュー<ドライバーの給料>from USA

NYのスクールバスドライバー、ボリス・クルシンさんのオンラインインタビュー第3段です。前回(子供の置き去り事故前々回(パンデミック禍での大型免許取得)の記事もあります。


――今回は気になるお金事情についてうかがっていきたいと思います。

ボリスさん:給料についてですか?

――はい。ダイレクトで恐縮です。

ボリスさん:いえいえ、別に隠すようなことでもないので、どんどんいきましょう。

――ありがとうございます。まず日本とアメリカでは給与の仕組み自体が違いますよね。日本ではだいたい給料というと月に一度支払われるものですが、アメリカは週払いや2週間に一度の支払いが多いですね

ボリスさん:そうですね。僕の会社も支払いは2週間に1度です。

――やはりそうなんですか。アメリカの給与コンサルタントのHPを見たのですが、アメリカでは企業の規模を問わず、隔週払いが一番多いとのことでした。文化の違いというか、経済の違いでしょうか。それはさておき、ボリスさんの会社は皆さん時間給なのでしょうか? 年収ベースではなく?

ボリスさん:はい、そうです。それから会社との契約の仕方によって働き方と待遇が変わってきます。

――というと?

ボリスさん:正ドライバー(Contracted Drivers)と代替ドライバー(Substitute Drivers)(*1)というのがあります。正ドライバーは会社と10か月の契約を結び、その間は学校が休みでも給与がもらえます。代替ドライバーは学校が雪やホリデーで休みの場合は給与はもらえません。働いた実働時間だけ給与が支払われます。

(*1):正社員と契約社員のようなもの

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――正ドライバーは、1年契約ではなく10か月契約というのが面白いですね。

ボリスさん:2ヵ月の学校の夏休み期間は含まれませんから。

――スクールバス会社ならではということですね。働く側としては不利な気もします。

ボリスさん:実際の給与は、どのルートを割り当てられるかで大きく変わってきます。1ルート5時間のところもあれば、2時間しかかからないところもあります。

――それはだいぶ違いますね。

ボリスさん:長年所属している人に、良いルート(時間が長いルート)は割り振られるようになっています。なので僕のような新人は短いルートを回されがちです。

――アメリカにも年功序列がありましたか。

ボリスさん:長年会社所属していれば、いろいろ仕組みも知っていて慣れていますしね。

――交通事情によって、想定通りの時間で到着しないこともあるかと思います。そういう場合、時間外労働費(残業代)は出るのですか?

ボリスさん:15分単位で出ますよ。これは正ドライバーであろうと代替ドライバーであろうとちゃんと出ます。渋滞に巻き込まれた時や、オフィスで何らかの仕事をしている時にも出ます。

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――それは安心しました。時給換算ということがわかりましたが、実際に時給はいくらなのでしょう?

ボリスさん:10年以上のベテランドライバーで、時給$30~$35くらいです。

――3,200円~3,800円くらいですか。それはかなり良いですね。

ボリスさん:新人でスタート時は、正ドライバーが$22.50(約2,400円)で、代替ドライバーが$18.50(約2,000円)です。ただこれは、州や地区、会社によって全然違います。僕の会社は全米でもかなり高水準な方です。それはこの会社が民間ではなく地区(*2)に所属しているとうということもあります。運営は税金で賄われています。

(*2):アメリカは、州(State)、郡(Country)、地区(District)、街(City)に行政区画が分かれている。

――ある種の公務員みたいなものですね。

ボリスさん:アメリカでは教育の権利がとても重要とされています。広大な国土なので、全ての子供が平等に学校に通うためにはスクールバスは欠かせません。だからスクールバスが重視され、仕組みも給与もちゃんとしているんです。

――それは素晴らしい発想ですね。アメリカのスピリットを感じます。

ボリスさん:日本にスクールバスはないのですか?

――日本は国土が狭いし、公共交通機関が発達しているので、スクールバスはポピュラーではないですね。だいたい徒歩か自転車か、もしくは一般のバスや電車ではないでしょうか。

ボリスさん:へぇ。NYでもシティー(マンハッタンやブルックリン)では、徒歩通学や電車通学もありますけどね。都市部から出たら、難しいです。

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――ところで長年勤めると時給が上がるようですが、昇給はどうなっていますか?

ボリスさん:毎年夏に一度昇給します。

――それはいいですね。

ボリスさん:トリッキーなのは、たとえば同じルートを走っても、新人の給与はベテランより低いことです。

――確かに。仕事のパフォーマンスの評価=時給ではないので、そうなってしまいますね。しかし仕事の内容を評価されれば、昇給に関係してきますよね。

ボリスさん:そうだと思います。

――それを信じて頑張るしかないといったところでしょうか。新人対ベテランの構図もありますが、雇用形態によっても随分差がありますよね。正ドライバーに比べ、代替ドライバーは時給も安いし大雪で学校が休校になったらその日は給与ゼロです。代替ドライバーのメリットが感じられませんが、どうでしょう?

ボリスさん:代替ドライバーは大抵他の仕事も持っています。なので、空いた時間にバスの運転手をしているという状況じゃないでしょうか?

ああ、なるほど。時間を有効活用するために、ということですね。

ボリスさん:2つか3つ仕事を持っていたり、あと子育て中の人なんかは、代替ドライバーの方がしばりが少ないので働きやすいと思います。

――日本でも最近、ダブルワークとかセカンドジョブとか、いわゆる副業が流行っています。アメリカではそういう働き方が既に浸透しているようですね。

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ボリスさん:僕もいくつか他に仕事をしています。複数の仕事のコンビネーションで収入を増やすようにしてますよ。

――ひとつの仕事でがっつり稼ぐ時代ではなくなってきているようですね。

ボリスさん:そうですね。一つの仕事で全てをカバーするのは難しいです。

――複数の仕事を持つことは、リスクヘッジにもなって良い面もありますよね。日本なんかはバブルが崩壊してから随分立ちますし、非正規労働者も多いです。掛け持ちで仕事をしなければ生活ができないという実情があり、世間がそれを堂々と後押しを始めたという流れかもしれません。

ボリスさん:そうですね。

――子供の学ぶ権利を守るために、スクールバスは行政が運営しているケースもあるということが印象的でした。インタビューは続きます、お楽しみに!