秀吉、勝家の戦い
勝家が飛び込むために後ろに引いている左足に体重を乗せる瞬間を藤吉郎は狙っていた。
飛び込もうという意識が強くなり、守りが甘くなるときだからだ。
すぐに間合いを詰め、藤吉郎は勝家の木刀を自分の木刀の剣先で軽く抑えた。
すると木刀を元の位置に戻そうとする反動で勝家の右手側に少しスキができる。
この瞬間に体を左前に運びながら木刀を勝家の右手首に降ろした。
駆け引きと相手の動きに合わせた観察が勝負を決めた。
藤吉郎は己の体の動き具合の良さを感じていた。
今までならば観察して隙を見出しても体が動かなかったものだが今回は無駄なく動けた。
桶狭間での戦いが藤吉郎の武に磨きをかけていた。