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全統模試マーク式 現代文(評論)の解説

 皆さん、こんにちは。今回は8月12日に全国各地で実施された全統模試の 現代文(評論)の解説記事を書きたいと思います。

 今回の出題は宮原勇「図説・現代哲学で考える<表現・テキスト・解釈>}からでした。このタイトルから分かる通り受験生の皆さんとって馴染みの浅い哲学に関する話です。マガジンでもお話した通り皆さんにとって馴染みのない言い換えれば背景知識が不足しているお題に対して如何に対応できるかが、合否を分けると言っても過言ではありません。今回は間違いが多発するであろう大問2、3、4を私なりに解説しました。それ以外の設問に関して詳しく聞きたい方は、コメント欄にてリクエストをお願いします。また、説明内で不明な点、最も詳しく知りたい点があれば合わせてコメント欄に書いてください。よろしくお願いいたします。

 2、設問には原則二種類あると考えています。言い換え箇所を探す言い換え問題、因果関係を探す理由を問う問題。この設問においては傍線「わたしたちは、自分なりに、解決策を考えださなければならない」に対応する筆者の考えが分かる箇所を見つける必要があります。その点で、この問題は言い換え問題といっていいでしょう。それでは傍線に対する筆者の意見が分かる箇所を探します。まず何に対する解決策なのかということを理解する必要があります。傍線Aまでの文章ではプラトンの知に対する考え方が記されていました。要約するとプラトンは「知」=「パラドックス」=「想起」=すでに見知っていることを思い出すことである」とし、未知を探求することは不可能だと指摘しました。そして筆者はこの考え方を否定します。そして傍線Aの一文につながるのです。つまり筆者は「知」とはなにかということに対して自分なりに考える必要があると論じているのです。そしてそのことについて、筆者は次の段落で「まず」と断りを入れながらも「知」を筆者なりに定義づけています。因みにこの時点で分かる通り、この文章のキーワードは「知」になります。そのため、「知」が文中に登場すればその都度チェックを入れ、「知」の定義づけがされている箇所に線を引きましょう。第三段落で筆者は逆説の接続詞「しかし」の後で「知」の定義づけをしています。この「しかし」という接続詞の後には筆者にとって大変重要な考えを述べることがあるので、必ず「しかし」が出てきたらチェックを入れましょう。ここでは「知」=一つのプロセス=中間的状態=未知と既知との間に明確な境界線が引かれうるわけではないと定義しています。ではここまでを把握した上で設問に移ります。設問では筆者は「まず」「知」に関してどのような意見を述べているのかと問ているわけですから、先程の「知」=未知と既知との間に明確な境界線がないとなっている選択肢が正解の選択肢となります。五つの選択肢で上記の構図で「知」を説明しているのは三番の選択肢以外ありません。三番以外の選択肢は未知と既知とを分離した考え方に基づいて「知」を説明しています。よって三番が正解です。次回以降の問題でも使える考え方を下記にまとめておきます。内容を理解しておしまいでは再現性の低い学習になります。「知」に関する知識など今後の模試で問われる可能性は極めて低いです。どんな問題でも使える汎用性の高い「解法」を理解することを毎回主眼に置いてください。

 ・言い換え問題or 理由を問う問題かを認識する

 ・複雑な文章は自分なりに図式化する

 ・キーワードチェック

 ・接続詞に注意する。接続詞ごとの役割を理解する

 3、長くなりました。この調子で進んでいきます。心して読み進めてください。問3は「~とはどういうことか」と問うているので言い換え問題です。そのため、傍線B<未知と既知の循環>の言い換え箇所を探す作業をします。傍線Bを含む一文は「ここに、「知」なる営みにおける<未知と既知の循環>とも呼ぶべき関係がある」です。ここから解法を始めます。この文章では指示語「ここ」が出てきました。解答に関係する文章中に指示語や代名詞が出てきた場合、それが指すものを必ず明らかにしましょう。つまり上記の文章ではどこに<未知と既知の循環>関係があるのかと考えればよいのです。どこにあるのでしょうか?指示語 this は直前の一文を示すことが大半ですから前文をみていきましょう。前文を図式化するとこのようになります。                          

      探求対象が未知=「知」の探求をする動機になる。

      探求対象が既知=探求対象の具体的道筋を教えてくれる。 

 この関係式の中に筆者は<未知と既知の循環>関係があると述べています。設問に戻ります。では傍線B<未知と既知の循環>の言い換え箇所はどこでしょう。もう皆さん、わかりますよね。そうです。上記の二つの式に循環関係があり、傍線Bの言い換え箇所になります。嚙み砕いていえば、知らないことがあるからこそ知りたいと思うようになり、「知」の探求をはじめ、そうして得た「知」によって我々はより深く対象を知るための方法が分かるわけです。そして「知」を深めるごとにまた知らないことが増え、それは更なる「知」の獲得のための動機を生み、、、、、。というように循環していうわけです。

 では選択肢を見ていきましょう。上記の関係になっている選択肢はどれでしょうか。上記の説明と完全な言い換えになっている選択肢は1番しかありません。皆さまももう一度各選択を確認しておいてください。最後にこの設問を通じて学ぶべきことをまとめておきます。

  ・指示語に注意。

  ・言い換え箇所を探す。

  ・簡略化。図式化

  

4、それでは大問4に進みたいと思います。大問4では「一般的な概念的枠組み」が「個別的で具体的な現象」を規定することの具体例として最も適当なものを選ぶ問題構成になっています。なのでこの文章では「一般的な概念的枠組み」と「個別的で具体的な現象」の言い換え箇所を文中から探すことから解法を始めます。評論においてかぎかっこ付きで記されている言葉は辞書的意味とは違います。かぎかっこの意味はこの文章において筆者が特別に付与した意味があるということです。非常に重要な約束事なので忘れないようにしましょう。では「一般的な概念的枠組み」と「個別的で具体的な現象」の言い換え箇所を探しましょう。まず「一般的な概念的枠組み」からみていきましょう。第五段落以降、幾度となく「枠組み」(framework)という言葉が出てきます。この言葉は「一般的な概念的枠組み」と類似語であると言えるでしょう。では「枠組み」(framework)にもかぎかっこがついていることからこの言葉を筆者がどのように説明しているかを理解する必要があります。第六、七段落の内容を図式化すると以下のようになります。

「知」→理解したり、解釈したりする行為=すでに「意味」を把握していること=「枠組み」=既知なる要素=(三段落より)知の対象に関する今までの経験や伝聞によって、あらかじめ得ている何らかの予備知識や基礎知識

            ↓   

 「枠組み」≒「一般的な概念的枠組み」=すでに知っている知識 

では「個別的で具体的な現象」とは何でしょうか。言葉の意味から類推するに第八段落にある記述されている個別的で具体的な事象や事実や物体、さらには人物といえるでしょう。まとめると

 「個別的で具体的な現象」=具体的な事象や事実や物体、さらには人物

それでは設問に戻りましょう。「一般的な概念的枠組み」が「個別的で具体的な現象」を規定することの具体例として選択肢の中から正しいものを選びます。言い換えればすでに自らが知っている知識を使って具体的な事象や事実や物体、さらには人物を一定のルールやグループに定めると言えます。ではそのような意味となる選択肢は五つうちどれでしょうか。正解は4番になります。4番の選択肢を少し分析します。状況はこうです。家具売り場に行きました。そこには一見して何に用いるのか不明な大変ユニークなものがありました。しかしその不明な何かをAさんは椅子であると判別できました。なぜならそれが人が腰を下ろせる部分があったからです。これはまさに椅子に関するすでに持っている「人が腰を下ろせる機能を持った家具」という知識を使って、ある国のある街にある店の家具売り場に展示されている個別的で具体的なものを椅子と認識できたわけです。故に四番が正解です。では最後に今後の演習にも生かせる重要事項を下記に記します。

  ・かぎかっこ付きの単語はその説明がされている言い換え箇所を見つける。

 因みに第九段落は流し読み程度で意味を深く理解すること≒読解は行いませんでした。その理由としてはまず第八段落で設問の解答根拠を探し出せたことと、第九段落ではそれを接続詞「つまり」で再度言い換えた文章であること、そしてその言い換え箇所に当たる第九段落が制限時間以内で読解するには大変時間が必要な難解な文章であったからです。これができるのも接続詞「つまり」があるからです。接続詞「つまり」の機能は抽象→具体の論理展開を起こすことを明示することです。そして抽象=具体ともいえます。上記の複数の要因から、今回の場合では読解する必要はないと判断しました。皆さんも参考にしてください。

 

ここまでお付き合い下さった皆さん、大変お疲れ様でした。最後にもう一度皆さんにお伝えしたいことがあります。それは、再現性のある解法、を身に着けるために現代文の勉強をしてくださいということです。今回の勉強を通して、哲学のことが詳しくなったとしましょう。しかし本番の試験で音楽に関する文章が出題されれば、その勉強は全く意味のないものになります。問題を読んで、答えを何となく選び、答え合わせをする。そんなフィーリング現代文からは卒業する必要があります。(フィーリング現代文についてはマガジンの方で詳しく書いています。興味のある方はマガジンをお読みください。)個別的で具体的な文章からどんな問題にも汎用可能な一般的な概念的枠組みを得る作業をしてください。そして、もし今皆さんが学校や塾で受講されている授業がそのようなものであるならば、授業の改善を先生に迫るかそれが無理ならば受講を取りやめることをお勧めします。私のマガジンではそのようなフィーリング現代文を絶対悪とし、論理的に現代文を読み解く方法を伝授しているのでぜひそちらを読んでください。それでは皆さん、ありがとうございました。