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【漫画】サマソニ出場を賭け鳳雛を得んとす『パリピ孔明』(2巻)

こんにちは、ごみくずです。
レビューは有料表示になっていますが、全て無料で読めます。
無為なコメントを避ける理由と本当にコメント残したい人用にコメントのみ有料としているので心配しないで読んでいただければ幸甚です。

『パリピ孔明』の9巻が最近発行されました。
いやあ、熱すぎました。毎度のことながら背筋が粟立ちますね。
癖になります。

そしてアニメ版もとうとう6話目に差し掛かります。
前半の一番の魅せ場である、孔明とKABE太人のラップバトル。
これがアニメで動いている所を見られるのですから、堪りません。

それ程の作品ですから、やはりアニメ化をしているうちに記事を書いて少しでも作品が広まる力になれると嬉しいです。

さて今回は2巻に進みましょう。

第十四回目は『パリピ孔明』2巻から

【第2巻の個人的な評価】
※5段階評価で普通が3。数字が少ない程低評価。
なお、エログロ評価は低い方が安心安全です。
評価★5
エロ★1
グロ★1

本題に入る前に、アニメについて

原作に忠実に作られた中に、コメディパートを増やしたり、4話目のつるとんたんでの英子の過去についての会話、そして5話目でのKABEの台詞や背景の説明追加等、話を壊さず、映像美と声優の質と蛇足にならない補足に力を使うという、よいアニメ化だな、と思いました。

その流れから、2巻は孔明とKABEとのバトル前まで行きます。

2巻に入る前に、作品の概要の記事を経て、1巻のおさらいをしたいと思います。
前回書いた総括のレビューとパリピ孔明の1巻のリンクを置いておきますので、興味があればご覧になって下さい。

前巻のおさらい

渋谷に降り立った孔明、これはやはり必然だったのかもしれません。

①夢をあきらめかけた英子

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第1巻より引用

このシーン、どこか既視感があるのですが、気が付かれた方は誰かに言いたいんではないでしょうか?

このシーンの台詞や嘆きを見ていると、三国志の話ではよく取り上げられる、劉備の「髀肉の嘆」を想起させます。

歌手になるという夢を追い、東京で踏ん張っているが、ネオンの灯りの一つになっていきそうな英子が、荊州に雌伏し、現状の自分に嘆く劉備と同じ境遇である。

そして、孔明もまた、劉備と出会って天下三分を語り合った頃に若返っている。…というのが、三国志好きには響きますよね。

②ミア西表

視察として訪れたクラブに、人気シンガーのミア西表が出演。

フォロワー10万人を誇る、渋い歌声、ダンス、そして生き様が人気の女性歌手。
イリオモテヤマネコみたいな名前です。

何の縁もないミアに、孔明はファンを装い会いに行きます。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第1巻より引用

孔明には何やら考えがある模様。

対して、英子のフォロワーは200人。
英子もこの頃はまだまだ音楽ファンの立場で歌っていたように思います。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第1巻より引用

そして不躾な英子達に意外な一言を掛けるミア。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第1巻より引用

人気者の余裕、のようにも見えますが、SNSを見てましたね。
フォロワー数を見たんですよね。
要するに英子はミアに当て馬にされたのです。
フロアの観客数の差を話題にするためでしょう。

孔明はミアの意図と悪意を察すると、逆に楽しそうにし始まります。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第1巻より引用
『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第1巻より引用

ここまでのこのシーン、全て最高です。
まだ1巻を読んでいない方は、早々に読まれる事をお勧めいたします。

さあ、ミアの児戯に対して孔明はどうするのか、気になりますね。

③代々木のフェスへ出てしまう進展の速さ

そして英子への更なるステップの為、孔明は既に手を打っておりました。
動員数1万人規模の代々木の野外フェスに英子をエントリーします。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第1巻より引用

全てが繋がっている、というのが背が粟立ち胸躍ります。

しかし、まだまだ無名の英子が得られるステージは隅っこも隅っこである小さいステージ。

そして更に、英子の出演するステージの隣の大きなステージには、インディーズで人気のバンド『JET JACKET』が同時刻に出演。どう考えても不利な状況ですが、孔明は淡々としています。果たしてどうなるのか。

2巻の見所

さて、2巻に参りましょう。

①代々木公園の野外フェスと「無中生有

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第2巻より引用

「無中生有」とは即ち「オオカミ少年」の心理を利用した計略ですが、逆境の中、英子が歌い始まれば観客が続々と集まり、皆盛り上がってる。

英子には初めての体験であり、この成功体験が自信につながり、英子の言動も少しずつ変わっていきます。

②サマソニ出場権を掛け、10万イイねバトルに参加!

英子の次のステップの為、孔明の策略に引き寄せられた運営元のお偉いさんがやってきて、英子に2つの大舞台のどちらかに出演できるチャンスを与えます。

一つの舞台は、福岡のフェス。観客1万人規模。

そして、もう一つの舞台が、なんとサマソニ。
動員数30万人を誇る夏の最大フェスです。

但し、サマソニの参加資格はSNSで期間内に10万イイね獲得が条件。
この企画に安易に乗ったおかげで、自信喪失し解散に追い込まれたバンドや、無理なイイね獲得で炎上し消えたアイドルなど、ハイリスクハイリターンのイベントです。達成したのは5年でたった1組のみ。。

昔の英子ならこじんまりした福岡を選択していたでしょうか、孔明を得た英子は自信に溢れています。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第2巻より引用

このシーン、熱すぎませんかね?

さて、孔明の新たな戦略とは。

なお、この周辺がアニメ第4話で描写されており、英子の夢へのバックボーンについて、かなり原作に追記補足しておりました。
アニメは放送回数12回位な為、後に語られる英子の過去を大まかに説明し英子の想いを視聴者に整理させていますが、よく出来ていました。
信頼できる原作アニメ化です。

ただ、この英子の過去について語るのは今回アニメには盛り込まれない英子の地元で出てくる為、2期はやらないつもりか、2期になったら巧く編集するのか、という所が気になる点ではあります。

「Wake up…baby phoenix!」~目覚めよ鳳雛~

サマソニ出場10万イイねの為、孔明の提示した策は「ラッパーを仲間に加える」でした。

かなり唐突なので驚いたのですが、孔明は答えを鮮明にイメージできており、在野に眠っている最高峰の人材に目を付けます。

それがMCバトル最高峰「D・R・B」3連覇を成し遂げたフリースタイラー『KABE太人』です。

ただKABEはラップバトルでのプレッシャーにより急性胃潰瘍を患い、ラップを捨て、未だ精神が定まらない状況。
そのKABEを孔明が煽り、ラップバトルで孔明がKABEに勝てば、英子とユニットを結成するように依頼します。

コインランドリーでの孔明のラップが耳に残り、頭は嫌がっていても、魂にまでは嘘が付けなかったKABE。気になって孔明の待つBBラウンジへ来てしまいます。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第2巻より引用
このコマ熱すぎて鳥肌立ちますね…

Baby Phoenix
演義系三国志を読んだ事のある方は、この孔明の言葉に直感的に気が付いたと思います。そう、『鳳雛』です。

三国志を知らない方向けに簡単に説明すると、「Baby Phoenix」とは即ち、諸葛亮の師匠である『水鏡』先生こと司馬徽が『臥龍』諸葛亮孔明と並び称した『鳳雛』こと龐統その人を差します。

龐統が分からない方は下記のWikiのリンクをご参照願います。
なお、正史の人物としての情報なので小説とは違っています。

龐統は孔明と並び称される程なので、極めて有能な人物ですが、容姿が垢ぬけず、口下手だった事が災いし、登用されるまで時間がかかりました。

容姿が垢ぬけず口下手…。
これはまさしく『KABE太人』の事です。

俗な言い方をすると「モブキャラ」「陰キャ」の部類だったのですが、ある日KABEは、割腹の良い級友の虐められっ子佐々木が橋の下で厳ついラッパーとサイファーしている現場に遭遇し、佐々木から赤兎馬カンフーのCDを紹介して貰いサイファーに参加するようになってから人生が変わります。

孔明にとって、KABEは『鳳雛』。

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第2巻より引用
このコマも熱い

このシーンに背筋が粟立たない訳がないでしょう。
孔明はKABEのこの眼光に、自分と並び称される程の軍師龐統を見たのではないでしょうか?

臥龍と鳳雛

吉川英治三国志や横山光輝三国志等の三国志演義系の物語では「臥龍か鳳雛、何れかを得れば天下を獲れる」などと言われますが、「じゃあなんで劉備は天下統一できなかったんだよ」やら「天下を何分もすれば誰でも天下人、ってコト!?」などと当時はツッコみ入れたくなったものです。

しかしその出典は、劉備が司馬徽に鳳雛の話を聞いた時代から100年程未来の東晋時代に習鑿歯が編纂した『襄陽記』という襄陽郡(現在の襄陽市)の地方志で、司馬徽も上記のような大仰なキャッチコピーは言っておらず「時勢を読めるような人材なんてそうそういませんけど、臥龍の諸葛亮と鳳雛の龐統がいますよ」と勧めた程度。

劉備が訪ねる程の先生から二つ名付きで推薦されるのですから引手数多では?と思うのですが、実は龐統は見た目が冴えない上に口下手で、その後のやり取り等を見ると淡々と率直に物を言うタイプで、お世辞など言わなかったのでしょう。優秀な人材ですがおべっか使いが幅を利かせるような時代では売れ残っていた、と見る説が有力なようです。

まだ在野にいる龐統。しかしこの時期は劉備の家臣にならず、呉の周瑜の部下となり、周瑜の死後に魯粛の斡旋?で劉備の配下となります。
当時は呉のスパイ疑惑があったようで、採用後意図的にか遠地配属。そこでの職務怠慢から免職、と最初は巧く行きませんでしたが、孔明と魯粛の説得があり、劉備改めて面談すると、その朴訥ながら率直で端的で媚び諂わない言動が逆に劉備の心を掴んだようです。その才能を認められ、治中従事という劉備の秘書として、そして孔明と同じ役職である軍師中郎将に任命され、軍団の中核を担い、蜀獲りに同伴するなど重用されます。

ちなみに、『襄陽記』の編者習鑿歯を辿っていくと、先祖の習禎は蜀(季漢)の政治家で劉備の家臣であり、洒脱で談論が巧みで龐統の次に名声があり、劉備に付き従て蜀入りし広漢太守(郡の長官)にまで昇っている優秀な人物でした。そしてその妹は龐統の兄の龐林に嫁いでいました

さらに、龐統に「鳳雛」とキャッチコピーを付けたのは、実は司馬徽では無く、その師匠筋の龐徳公
龐徳公は荊州名士の中心人物の一人であり、人物鑑定の大家(つまりは人材コピーライターの大御所)その龐徳公の従子(つまり甥)が龐統。そして龐徳公の息子に、孔明の姉が嫁いでいるという

上記の人物達は互いに姻戚関係がありましたので、家伝として『臥龍鳳雛』の話が伝わっていたのかもしれません。

そして、その姻戚関係の繋がりは、もう一段大きい枠組みである荊州の「名士」という上流階級サロンのような派閥の中にいました。

孔明は曹操が殺戮の限りを尽くした徐州の出身で、曹操の殺戮から逃げて荊州にやってきました。後ろ盾が心許ない状況でしたが、龐徳公の姻戚となる事で、人脈と基盤を創っていきます。

この時代は同郷の上流階級同士で繋がりを作り、情報交換や人脈を使った政治家人材の推挙等を行っていたようですので、その名士社会と名士たちの社交性をこの物語の孔明のクラブ通いに投影させると、より様々な物が見えてきて面白いです。

すっかり話が逸れましたが、KABEは鳳雛に準えています。

そして、KABEとのラップバトル、孔明は制し、KABEを仲間に引き入れる事はできるのでしょうか?

『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第2巻より引用
『パリピ孔明』(四葉夕卜/小川亮/講談社)第2巻より引用

論破オバケは笑いました。

ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
また更新しますので、次もお読みいただけますと幸甚です。
それでは良い一日を。

なお、コメントだけ有料にさせていただきます。

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