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【漫画】全てのクリエイターへ捧げる『Re:CREATORS』は逆召喚が圧倒的に面白い(1巻)その3~独創性~

こんにちは、ごみくずです。
このレビューは有料表示になっていますが、記事は全て無料で読めます。
無為なコメントを避ける為にコメントのみ有料としているので、安心して読んでいただければ幸甚です。

今回も前回及び前々回に引き続き『Re:CREATORS』を。今回は主にこの作品独特の世界観、独創性、この部分に焦点を当てて紹介します。

前回は登場人物編だったので考察やらなにやら追記したら8,000文字を超えていました(笑)。前回のレビューは読むのに20分位かかるかもしれません。
果たして今回こそは5,000文字以内で収まるのか(笑)。
というか1,000文字から2,500文字位が一番読み易いのが分かってはいるんですが(笑)

それでは見ていきましょう。

第十八回目は引き続き『Re:CREATORS』(1巻)。この作品の「独創性」のご紹介

【漫画版】

【アニメ版】

【個人的な評価】
※5段階評価で普通が3。数字が少ない程低評価。
なお、エログロ評価は低い方が安心安全です。
評価★5
エロ★1
グロ★2 (グロというより戦闘シーンがあります)

前回同様、上記の評価は定型で入れているので前回のその1及びその2から据え置きです。

その1ではこの作品の導入部の説明と被造物を現界させる『軍服の姫君』、その彼女に敵対した女騎士『セレジア』、そしてオタク高校生の『颯太』について。

その2では『軍服の姫君』及びセレジア以外の被造物たちの解説と、初めて登場した『創造主』でありセレジアの生みの親である『松原』に焦点を当てました。

そして今回のその3は、冒頭で申し上げました、「この作品の独創性」について、現界した物語世界の登場人物である「被造物」の現実世界での反応や変化を通して解説していきたいと思います。

被造物たちは現実世界を体験し、どういう反応をするでしょうか?

なお、その1、その2についてはこちらから確認できますので、まだお読みでない方は参考までに読んでみてください。

この物語の「独創性」

「物語世界の登場人物が現界し、現実世界の人間たちと意思疎通し関係を築きながら物語を回す作品」というのが、漫画やアニメ、そして実写動画を含め何作位あったのか、というのをネット検索していますが、『Re:CREATORS』のように、作者のいる世界に作中の人物が現界し並行した存在として意思疎通を行うという作品が出てきませんでした。

検索ワードが悪いのかもしれませんが、現界する作品で個人的に思い当たるのは、桂正和さんの『電影少女』位で、その作品も全て読んだわけではありませんが、イメージビデオから現界する彼女達は現界する事を前提としているので、彼女達は自分自身の生まれた目的は事前に知っており、複雑な感情になるのは現実世界の人物に情が湧き、未練を感じてからだったと記憶しています。

また、視点を変えれば「神が人間世界に現界する」という話は良く見かけますが、神は人間の上位存在ですので、似て非なる物語でしょう。

『Re:CREATORS』については単純に物語世界の人物が「現界した」事では終わらず、「物語世界の人物がどの様に感じ、どう変化していくか」という描写を掘り下げて描いていくため、その部分に着目して物語を読み進めた方が物語の深みや人物との関連性や影響が読み取れ、感情移入し易い作品だと思います。

悟空でもピッコロさんでもいいですが「好きなキャラクターが自分の前に現れ、時間と体験を共有する」というのは、きっと誰もが妄想した事があるのではないでしょうか?

しかしその妄想の大筋は「自分がそのキャラクターの存在する物語世界へ転送される」事を想定しているかと思いますので、その逆の発想により「被造物」という異次元人が現実世界に現界し生活した場合の感じ方や戸惑いを、具体的且つ現実的に描写する作品は珍しいと言えるかと思います。

今回はその部分を深堀していきます。
本題に入りましょう。

現実世界が持つ「情報の量と質」により、戸惑い、変化する被造物

外見は我々と変わる事がない被造物たちですが、現界し現実世界で過ごしたメテオラが面白い事を言及します。

現実世界での最初に受けたギャップとして
「現実世界は情報量が多く、元いた世界より重層である」と表現していました。

五感についての「情報量の差異」が描かれる驚き

『Re:CREATORS』(広江礼威/加瀬大輝/あおきえい/小学館/アニプレックス)第1巻より引用
『Re:CREATORS』(広江礼威/加瀬大輝/あおきえい/小学館/アニプレックス)第1巻より引用

現界した被造物たちがまず驚くのは、現実世界の情報量。

特に「食」、つまり「味覚」についての情報量に驚き、強い関心を持ちます。

「味覚」についての豊富な情報量、それに合わせて、食の味を左右する「匂いや香り」、つまり「嗅覚」の情報量についても味覚と同様です。

現実世界と物語世界の違いを「情報量の差異」で描いているというについて、作中明確に描写がある作品が他にあるのかは知りませんが、この表現は個人的には非常に目から鱗でした。

物語世界の登場人物の現界を作品のテーマのひとつとしている為、世界の差異を描く必要があり、その差異は創作の中で詳細を表現できない情報。
そして、その差異が認識できるのは被造物のみ。

物語世界と現実世界の、実は気づきづらい相違点を、物語世界から登場した人物が現実と同化するリアルを巧く表現しており、様々な被造物が今後の展開でもこの驚きについて言及するのが読み進めていてとても楽しいです。

しかしまあ、メテオラは良く食べる事食べる事。。
この先も食べる描写はありますが、メテオラが最初に颯太に近づいたのは、情報より金銭が目的では、と思うくらいもりもりと現実世界の食べの物を摂取しては颯太にお金を出させます。

「この出費は高校生の君には痛いかもしれないが、自分が見ているものは幻覚でなく自分は頭がおかしくない、とこの出費で認識できたと思えば安いもの」と、颯太を丸め込もうとする所も何というかキャラに似合わず酷いというか(笑)

なお、セレジアは同様の情報量の差異を感じてはいるものの、メテオラと比べあまり暴食するような事は無いのですが、それは「設定」の影響なのか。
もしくはメテオラの世界より味覚に対する情報量が豊富な世界な為、現実世界の我々とそこまで相違なく、メテオラ程食事に固執しないのか。
…という推測も湧いてきます。

作品のテーマや掲載された媒体によって、重点的に描かれる情報量も其々違いがある為反応の大きさが違ってくる、という物語世界同士の「情報量の差異」も関連するのでは、という推測も湧いて来るため妄想は方々へ広がります。

上記を交えて考察すると『美味しんぼ』から海原雄山が現界したらどうなるのか?というのは知りたくなってくるので飽きがきません。


「私のいた世界は血なんて出ないのに…!!」

冒頭の最大の見所は、まみかとセレジアの戦闘で「被造物」の存在していた世界と、現実世界の差異を見事に表しているシーンです。

まみかはセレジアとの戦闘の中で、サンシャイン60と思しきビルと周辺を散々に破壊し、自分の行った正義が周囲を危険に陥れるだけの、ただの蛮行であったことに気付き、意図しない結果に怯えます。

『Re:CREATORS』(広江礼威/加瀬大輝/あおきえい/小学館/アニプレックス)第1巻より引用
ここからの一連のシーンは語彙が乏しくなるほどに圧巻です



前回の「その2」のまみかの紹介と重複しますが、
まみかの居た物語世界は、女児向けの魔法少女物。時代や地域は現代の東京。そして予想されるストーリーはシンプルであり、概ね勧善懲悪物語。

幅広い年齢層に人気とはいえど、本質は女児向けの作品の為か、まみかが敵対者であるアクマリンをマジカル・スプラッシュ・フレアーで攻撃してもアクマリンは血も出ないし痛みを感じる程度で、そのアクマリンも悪さはすれど人を殺したりはしないのでしょう。

しかし、現実の世界では自分の攻撃で人が傷つき苦しみ、何も解決せず、自分自身も流血します。

このまみかの認識のズレは、現実世界との「情報質量の差異」によるものです。

元々は大味な世界の人物が、現界し現実世界の物理法則に引き直された状態で自分の存在を維持する事になった途端、自分自身も現実世界に併せて豊富で詳細な情報が付与された事で
、元いた世界には概念のみの事象だった破壊や流血や死という、まみかが人々を守る為に敵視している事象を自らが引き起こしている重い現実を目の当たりにしてしまい、この世界の出来事はまみかにとって異様なものに写り、精神が追い詰められていきます。

他の現界した人物たちも同様に、物語世界と現実世界との「情報質量の差異」が、被造物に大きく影響を与えていきます。
そしてこの部分についての掘り下げが非常に魅力的です。

彼女の元いた世界は「現代の日本」という設定ですが、正確に言い表すならば、「現代の日本という設定で作られた物語世界」であり、現実世界とは違った、物語に準じた独特の物理法則や物質の強度があります。現実世界の日本と似た環境だったからこそのギャップにまみかは戸惑い、暴走してしまったのです。

ちなみに、「物語世界のマジカル・スプラッシュ・フレアーが当たった相手が流血したり瀕死になるような事が無いんだから、現実世界で瀕死の破壊力になるのはおかしいのでは?」という考えになる方もいるかもしれませんが、物理法則が現実世界で引き直されるので、相手が100m吹き飛ぶような衝撃が作用するのであれば、その物理法則が反映されるという事なのでしょう。

例えばアンパンマンの「アンパンチ」は、作中でば鉄の円盤に乗ったバイキンマンを遥か彼方に吹き飛ばすだけでバイキンマンは死にません。しかし、現実世界の物理法則に引き直したら、バイキンマンは円盤が殴られた瞬間に即死ですし、アンパンマンの腕が現実世界の強度に引き直されていたら、殴ったアンパンマンの腕自体が粉砕される可能性もあります。

アンパンマンを例にとって考察すると、アンパンマンとバイキンマンが現界して現実世界で戦闘になった場合、有害な細菌によりパンデミックが起り、アンパンマンは腐敗し、万が一腐敗しなかったとして、アンパンマンに殴られたバイキンマンは遠方に飛ばされる事はなく臓腑は飛び散り、アンパンマンは腕が折れ、ぐちゃぐちゃになったバイキンマンの死体を見て愕然としたアンパンマンが自死する…なんて展開になるかもしれません(意外にケロッとしてそうですが)。

現界したアンパンマンの顔交換は見てみたいですよね。


違う世界から来た使命感を持った者同士の「価値観の衝突」


セレジアとまみかの例に戻りましょう。

まみかは女児向けのファンタジー世界から現界した為か、非常に純粋で思考が単純明快。悪く言えば感情に影響され易く信じ易い性格のようで、その為か『軍服の姫君』の言う事を疑うことなく信じています。

しかしそのまみかの「善悪二元論」的な思考の単純さと「自分の信じる正義に承服しない者を暴力で捻じ伏せ従わせる」という価値観に、ひとりの大人として自立した人格を持ったセレジアは苛立ち、抗います。

『Re:CREATORS』(広江礼威/加瀬大輝/あおきえい/小学館/アニプレックス)第1巻より引用
このシーン激熱すぎますね。セレジアは最高です

個人的には当に共感しかないシーンですが、現実世界に別世界から来た者同士が並列に存在する価値観の衝突は、とても新鮮でした。


皆、物語世界では背負っていたものが違いますが、確かに人の心に深く重く残るような生き方をしてきた人物たちが集い、その価値観を突き合わせる場面は宿命を背負った人物同士の命のやり取りと共に、非常に見応えがあります。

まみかだって、間違っている訳ではないと思うのですが、大人はお母さんに怒られたから一時的にやめる、という事は絶対にしないのです。
理由もなく従属するというのは幼児だけであり、恐怖や暴力で服従さするような悪辣非道な輩に服従するという事は、自分の意志と尊厳を奪われる事でありますし、特に騎士にとっては相手に生殺与奪の権を握られるという事ですから。


今後の見所は「物語の枠から自立した人物の挙動」


作者(創造主)により、現実世界ではありえないような困難で悲劇的な宿命を背負わされ、日常に生きる我々より思想や言動の癖が強く、何かにつけ分かり易い程大仰な性格の彼らが、物語の枠組みから解放されるという事は、既に作者の思考や「鳥かご」ともいえる見世物小屋の外に出ており、文字通り「登場人物が目の前の困難に対してどう動くか作者にも分からない」状態となります。

作品を描くうえで、登場人物の行動結果の着地をまず考えるより、困難を考えるような状況に近いとも言えますが、現界当初は「キャラクター」然とした設定を引きづって物語の延長上のような言動をしていたのが、現実世界の環境変化で自分の背負う宿命から解放される事で、人格や言動にも変化が現れます。

我々の身近なケースで例えるなら、転職や部署異動、バイトの業種を変えた場合に、目標や課題、そしてトラブル等の問題の内容が変化し、それに伴って思考や行動にも変化を求められると思いますが、被造物たちもこの状況に近い体験をし、その経験によって成長し変化をしていきます。

人間としての行動原理は生活するうえでの問題や困難に対峙する事で変わる為、強大で残虐な敵対者と戦ってきた主人公たちも、ひとたび現実世界に現界した事で、目の前の困難や宿命ともいえる目的が無くなり、環境適応や目的や目標を新たに見つけなければならず、問題が我々と同じであれば我々のような解決方法を模索し、同じような苦悩を抱えます。

この「環境の変化に伴う『被造物』の人間性の変化」を描きだして物語に乗せた所が、また感銘をうけた点です。

我々が想定する描写は、物語のヒーローは現界してもヒーローのまま。
しかし、ヒーローをヒーローたらしめるのは、悲劇的な宿命や過酷な環境、そして自分の強さに見合った敵であり、これらと共存してこそ成り立つ。環境と問題が変われば、ヒーロー自身も変化する。その問題にヒーロー技が不要なら使わないで我々と同じように生活する。

こういうなかなか気づかないが実は当たり前の事を、恐れず描写していく。
創造主の意図と道筋を歩くはずだった被造物が、現界し自ら変化していく様子を追っていくのもこの物語の魅力です。


さて、颯太君。君はなぜ主役なのか…


我々と同様に目立つ所のないリアルな存在のオタク君の颯太。登場人物のクレジットは一番上に表記されますが、主人公には見えませんし、物語冒頭の回顧の語りの中でも、本人も主人公とは思っていません。

俯瞰してみた場合、作中の個性的過ぎる登場人物が揃うような物語で、更に颯太が問題解決能力があって逞しく勇ましい存在だったらどこをみて良いか分からなくなるため、狂言回しとして設定されたのかな?と思えなくもないですが、彼は実は作品のテーマに沿った存在です。

彼はセレジアとの出会いで、自身も創作家となり、セレジアのいた物語のような作品を作りたい、と想いを馳せています。

『Re:CREATORS』(広江礼威/加瀬大輝/あおきえい/小学館/アニプレックス)第1巻より引用

このシーンでは、大人しい言動と容姿に似合わず、内面では創作家になる自分の夢に対して、非常に強い想いを抱いているのが分かります。

現在は主にセレジアなど、既存の作品の登場人物を模写し自主創作のコミュニティサイトへ投稿している程度で、所謂「いいね」も2~3個。
つまり夢見ながら投稿している状況です。典型的な創作好きの内向的な中高生然としています。

ただ、これだけの想いがあるにも関わらず、実際には、颯太君は描く事に乗り気になれないようです。

『Re:CREATORS』(広江礼威/加瀬大輝/あおきえい/小学館/アニプレックス)第1巻より引用

セレジアに自作の絵を見せて欲しいとせがまれた際に、慌てふためいて断っており、単に皆に秘密にしているのか、もしくは下手で恥ずかしいのか?という理由が頭を過ぎったのですが、絵の描けない事と、面と向かって自分の絵が見られるのが恥ずかしいという事はまた別の話ですので、外的ストレスを感じる出来事によって筆が進まないのではないか?と思われます。

ネット社会ですので、劣等感が攻撃性に転化した心無い人物から「下手クソ」などとコメントでもされたのかもしれませんし、今の時点では何ともわかりません。


創造主はプロだけではない


セレジアの生みの親である松原は、創作一本で生計が立てられる程の豊富な才能とそれを支えるファン、そして出版社からの信頼を築きあげた、正真正銘の「プロ」ですが、颯太君はそうではありません。人気も実力も目立つ所もない、ありふれた「絵が好きで、好きが高じて自分で描くようになった人」です。

松原と比べたら貧相で心細い存在かもしれませんが、しかしその松原でさえ、最初は颯太君と同様に、誰にも見られない所から作品を発表し始め、そして見られないという、心細い存在でした。

では松原と颯太君の違いはどこで、颯太君はどうすれば松原のように創作を生業として生きていけるようになるのか?

颯太君の立場は、創作のプロである松原よりも我々に近い存在であり、彼の苦悩や踏み出しの一歩が、作者の伝えたかったテーマの一つでないかと思う次第です。

こちらの視点は重要ですので、後ほど深堀していく事として、やはりまだ作品に触れていない方はご覧になっていただきたいです。

【漫画版】

【アニメ版】

1巻についてはこれで締めたいと思います。
これでも削ったのですが、文字数が大分オーバーしてしまいました。
これ読んでくれるひといるのでしょうか?(笑)

感想などがあれば、コメント(有料)でもいいですが、メールやTwitterのDMなどでも構いません。

さあ、2巻はとうとう弥勒寺優夜大活躍です。
余計な事しそうなやつが登場。
悪人なんだろ?君は。

『Re:CREATORS』(広江礼威/加瀬大輝/あおきえい/小学館/アニプレックス)第1巻より引用

今回もここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
2巻以降はネタバレを考慮して、登場人物の紹介や熱量高い名シーンや名ゼリフをピックアップしていく所存です。思わず書き過ぎてしまったらごめんなさい(笑)

また更新しますので、次もお読みいただけますと幸甚です。
それでは良い一日を。

なお、コメントだけ有料にさせていただきます。

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