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読書感想文「笑うマトリョーシカ」(ネタバレあり)

一部ネタバレ含みます

話題のドラマ原作

少し酔いが残る夜、電車の待ち時間で立ち寄った品川駅構内の書店で手に取った。
ドラマを1話見て、これは原作がおもしろそうだと思っていた。

主な感想

直感は的中。複数の主要人物が交互に語るストーリー展開は、中だるみを感じることなくテンポ良く進み、引き込まれっぱなし。

主要な舞台となる愛媛、とりわけ東京からはアクセスが不便な宇和島方面や愛南町になじみがあると、その情景描写が目に浮かぶとおもう。

筋書きはだいたい予想どおりの展開ばかり、、、と高をくくっていたらクライマックスから終盤にかけて驚きの答え合わせを迎える。
中江有里の解説まで読むとおもしろい。

でも読み終わって振り返ると、最後まで明かされていないナゾや腑に落ちない点もあり、広げた風呂敷の回収が雑っぽい点もある。

立身出世ミステリー?

この作品は登場人物がみな人を思いのまま支配しコントロールしたがる思惑が渦巻く、人間の粘っこくてドス黒い欲望が軸になっている。

しかし政治モノにありがちな不条理でやり場のない苦々しさやイヤらしさは感じず、そこまで重々しい空気ばかりではない。

その点においては政治世界のかけひきもさほどなく、政治モノというより立身出世モノがただしいかもしれない。

クセの強い個性的な登場人物

登場人物は本当に実在していそうな個性が際立つキャラクターばかり。一人一人の性格、立ち振る舞い、表情、わずかなクセまで想像できそうなほど細かい。

登場人物の心理状況というか、心の機微、大胆さと傲慢さ、醜さまで手に取るように伝わってくるぐらいで、スピンオフ的に別の視点から、もっと主人公の清家一郎目線の話が読んでみたい。

印象に残った一文

「僕には嫉妬こそが世界を狂わせるという持論があります。嫉妬が束縛を生んで、その束縛が憎しみを生み、憎しみが戦争を生むのだと若い頃から考えていました。」

終わり

読了してみると、ドラマは原作とはだいぶ違うストーリー構成じゃないかなと思った。どちらも楽しめそう。

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