見出し画像

#激画団 山本寛さん&植田益朗さんとの対談トーク「創作じゃないなら、なんでぼくが呼ばれたの」

 2018年10月27日(土)、渋谷のCAMPFIRE本社にて、学生アニメ制作集団こと激画団の劇場アニメ『空中軍艦アトランティス』最終上映を観てきた。下北沢トリウッドでの初回上映から2度目。わたしなりに、この対談トークがあったからこそみえてきたものがあったなっておもうので書き留めておきたい。

 アニメ監督・山本寛さんとの対談が白熱していたのだけど、細かいことはドンクライ編集部に任せてわたしはわたしが覚えてることだけメモ。

 対談を進めていくなかでみえてきたのだけど、DAICON FILMに憧れ、制作物をWeb上で公開するのではなく劇場で上映することにこだわり、アニメが好きなひとたち(観客)に「ぼくらはこれが好きなんだ!」と伝えることに重きをおいた激画団の立ち位置を、どう捉えるか? が、どんな話をするにしてもキイになるのがわかった。

 ①激画団は、アニメが好きで集まった大学生のクリエイター集団であり、この先もアニメ業界で生きていこうと考えている団員がいる

 ②「激画団」という制作集団としてアニメをつくるか、個々人がそれぞれ別の所属先をみつけるかといった具体的な進路は未定。

 団員すべてがアニメ業界に進むつもりではないけれど、これ一発でおわるつもりはないクリエイター志望の学生たち、という見方でいいとおもう。とりあえず、ざっくりだけどそういう前提で進めると……、

 アニメ監督の山本寛さんのお話をきいていると、いちクリエイターとして「創作ではなく、発信だ」と激画団が断言することの危うさがみえてくる。

 「創作のつもりがないなら、アニメ創作のプロとして仕事をしているぼくはどうしてここに呼ばれたの? アドバイスのしようがなくなってしまう。自分の好きなもの、おもしろいとおもうものを発信する立場だというなら、もっと分かりやすくて手っ取りばやい、別の手段があったんじゃないかな。わざわざアニメにするなんて大変なことをした理由は、何? 今の気分は、たとえば、Youtuberが大盛ラーメンを食べる動画をみせられてどうですかっていわれてるようなものだよ」

 お互いが畑違いの立場になってしまいそうで、なにも言えなくなる、と。山本さんがここまで仰るのには、もちろん理由がある。まず、山本さんからみて『空中軍艦アトランティス』から感じられるオリジナリティ性が極めて薄かったこと。そして、それに対する激画団・長野監督のアンサーが、初回上映から確立されていた「創作ではなく、発信だ」というものだったからだ。

 長野監督の意図としては、「自分たちが好きなものを詰め込んで、これ、おもしろいでしょう!? と、現代の子どもたちにも伝えられる作品にしたかった」。『天空の城ラピュタ』や『エースをねらえ!』など、わりと古い時代の作品をパロディにしているのは「アニメを語るとき、ぼくらが好きで観てきたものを知らない世代がどんどんふえていくから」。この数年のうちに流行ったものをあえてピックアップしなかったのはその観点からだろう。(下に続く)

 山本寛さんは、「パロディは自分もいっぱいやってきてるし、むしろしようとおもってした作品もあるし、それを否定する気はまったくない。でも、これは自分がつくったんだ、自分にしかできないものだっていうオリジナル部分を必ず入れる。それが創作だとおもう」と。

 『天空の城ラピュタ』のパロディじゃん、といわれてしまった有名な作品名をご自分の制作物も含め3点挙げ、それでもそのなかで抜きんでたものがどんなふうにオリジナリティをだしていたかを説明してくれたのだが、これが目からうろこだった。「オリジナル部分がはっきりしているものは、それを一行で言いあらわせる。そこが全然ほかと違うから

 長野監督の話をどんどん掘り下げていくと、『空中軍艦アトランティス』は元々60分アニメにするだけの脚本を書いており、実際に制作した約19分はそのなかでもクライマックスなところをつなげていくようなものだったらしい。さらに、予告編を作ってアニメの解説をするような手段だけはとりたくなかったというきもちもあり、本編がすべてだった。だから実は、おもてに出していないオリジナル部分がめちゃくちゃあり、山本さんいわく「誰にもみえない裏設定なんてどうでもよくない? なんでそれを出さなかったの」と、わたしでもそうおもうような事実が発覚した……!ええーっ、てかんじだよ、もう(笑)。余裕があったらもっともっとおもしろくなってたんだなって。これをひきだしたのは山本さんのトークだし、辛口だったけど聞けてよかったとおもう。

 あと、わたし自身『空中軍艦アトランティス』は1度目より2度目のほうがおもしろいっておもえたクチで、噛み応えのある作品だとおもっている。「あとらんちす」とか「わかば」とか「GEGIGA号」とかの字面もくすっとくるんだけど、こういうシーンってこういうヤツいるよね的なキャラがあちこちにいるから、たまたま同日開催されていた『デイリーポータルZ』主催の<地味ハロウィン>に通ずるものがあるな、なんておもったりもした。(ご存じないかたはTwitterで #地味ハロウィン で検索を)

 ほか、世代によるオタクやアニメ好きの絶対的な違い、ジブリでアニメが終わってしまってる説、アニメを刷新する特異的な存在は誕生するのか?、アニメ業界の政治的な話などアーカイブしてほしいネタがいっぱい話されたのだけど、にわか知識しかないわたしでは、うまく説明できる気がしないので、割愛。

 植田益朗さんが登場すると、柔和なオーラとトークが全体を包み込んで、ほんわかしたのだけど「サンライズを辞めた本当の理由」とか、「ガンダム20周年についてのおもい」がフッと出たりして、山本寛さんも「すごい話が出てますね。それは触れられないわ……」と。わたしも書けないっス。

 ……それにしても、ここまでやりのけた激画団はスゴイ。CAMPFIRE本社での最後の上映がおわったとき、ちらっとみえたのだけど長野監督、さすがにちょっと泣いてたんじゃないかとおもう。こっちまでじんわりきた。そして諸々のプロデュースを仕掛けたドンクライもスゴイ、ほんとうにイイ機会をつくってくれたなあ。クラウドファンディングに参加して心からよかったっておもってるし、これからも彼らの活動を見守っていきたいとおもう。

 なんだかなあ。いろいろおもうことあったなあ。これだけのことが人生に起こることってそうそうなくない? しかも、まだ続いていく。よかったよなあ、激画団。くそー、感動をありがとう!! これからもがんばって!!


この記事が参加している募集

イベントレポ