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(仮)仮想村社会物語

仮想村にポツンと一軒スナックがあった。
そこにひとりの男が入っていった。

「それでな。農協の職員が偵察に行ったんだけども。家庭菜園だっていうわけよ」
「勝手に商売されるとあいつら、黙っておけんからな。だけど、シロウトがよぉ一年じゃ何もできんじゃろが」
「誰の話し?」
「新入りの爺さんだよ」
「沢さん?」

入った男は、決まった席につくとマスターに挨拶をした。
「ついさっきまでカナイさんが来てたよ。すれ違わなかった?」
「うーん?気が付かなかったな?そういやあいつ、かみさんにガミガミ言われて
出歩かなくなったと思ってたらまた通うようになった?」

「真理ちゃんがいなくなったからね」
マスターがボヤくように言った。
「せっかく真理ちゃんを看板に店を繁盛させようと思ったのになあ」


「カナイさん、真理ちゃんにメロメロだったからね」
その会話に先客ふたりが割り込んだ。
「俺だって、あんなさぁムチムチした娘を見たらたまんないべ。うちの嫁より若くて良いべ?あそこもねぇ」
「俺も拝んで、手合わせしてもらいたかったねガハハハ」
「だけどカナイがしつこいから、シロの息子がある日ここに来て、睨みつけてたよ。
カナイが真理ちゃんの方ばっかり見るからシロがヤバい雰囲気だったな。
そんで、真理ちゃんもここに手伝いにあまり来なくなって…いつの間にか姿がなくなった」
「シロは普段は気の良いやつだけど酔うと親父に似て酒乱になるからなぁ」

「真理ちゃん可哀想だよ。真理ちゃん困ってたよ」
マスターは、アテを男のテーブルに置いて言った。

一番奥にいた客が言った。
「カナイの女房って、新興宗教にハマってるんだろう?旦那はそれほどでも無いけどね。
息子の名前も教祖がつけたってな。
そんでさぁ、家が嫌なんだってよ。本気で離婚して真理とイチャコラしたかったみたいだべ」
「幸太って名前だっけ?うちの息子の友達だよ」
入ってきた客がアテをつまみながら酒を飲み始めた。
「そういや、息子も変な事を言ってたな。
シロの息子がやばいって。
あと、今日は…妙に落ち着かなくて、学校の名簿を探して同級生の家に電話をしようとして、やっぱり恥ずかしくて出来ねえって言ってたな」
「お前の息子ってコナンだかなんだか推理もんが好きだよなあ笑」
「オレも真理ちゃん良かったな」
「人の女房だべ」
「だから、良いんだべ」
「良いの〜?良いの〜?さてはお前やってるな?」
「馬鹿こけ」
「どこんちの嫁だ?さしずめお葉か?あれは俺も狙ってます」
「馬鹿〜オメェなんか相手にするかよ〜誰も相手にするわけねぇ!オメェ顔を鏡で見た事あるか?」 
「なにい?!俺だって昔はなぁ〜京子と」
「京子って、今はキシの家のか」 
「昔ちょっとイチャコラしてました!」
客が唐突に立つと顔を真っ赤にして、大笑いした。



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