意思をもって生まれる

七夕といえば16年前、息子のあなたを出産するために産婦人科に行って『人工的に自然分娩』したことを思い出す。

あなたは逆子で臍の緒を敷いて座っている状態だったから破水してしまったら30秒も生きないと言われていた。ただ、母の実家の近くにあった赤ちゃんポストで有名になった慈恵病院では逆子を帝王切開ではなく、人工的に自然分娩する技術を持っていたの。だから、7月7日に出産準備をして入院。

七夕の日に陣痛誘発剤を打って12時間の陣痛に苦しんだ末、日が変わってしまって、病院の先生や看護婦さんたちはもう終わりにしましょうといったムード。
そんなときに、あなたはお腹の中から強烈に蹴った。母のお腹から足が出てくるんじゃないか？といった力強い蹴りを２発。あなたの蹴りで破水し、やっと生まれてきたんだよね。しかも、逆子のまま出産だから頭からではなく、お尻からエビのように出てきたの。

子どもは意思を持って生まれてくるというけれど本当ね。母はあなたの意思で、このタイミングで世に出てきたことを強く実感した。

母も同様で、私たちは意思を持って生まれてきている。

何をやりたくて、この時代、この親を選んで生まれてきたのかハッキリとは理解できないし、この世を去るときにもわからないものなのかもしれないけど、自分の意思で決断したものなら意味があるのだと思うのよ。

偶然にも母は私という人間で、あなたはあなたという人間で生まれてきていることがすでに完全であるとするなら、母はこの自分をしっかり生きたい。最大に活かしたいと思う。

人は贅沢にできてるから、あれが足りない、これがあったら…とつい無い物ねだりをしてしまう。でも、自分の意思で選んだんだから腹を決めなきゃね。自分自身で生きると。

明日で16歳のあなたは今から自分を創っていく。
どう創りたい？
どう取り組んだら自分は最大に発揮できそう？

先は長いわよ。あなたが還暦を迎える時の顔を母は見れないだろうけど、
いい顔になってて欲しいなぁ。