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【クリエイティブなミィーテングを作る「わかりません」は禁止のルール】



アート思考のセミナーでは「わかりません・知りません」を言わないルールのワークショップがあります。逆に言えば妄想や捏造を許諾するということです。
私たちは日常で「わかっていること」と「わかっていないといけないこと」に囲まれて生きています。でも、実は世界のほとんどが「わからないこと」だらけです。

「今日は新規事業の企画会議です。皆さん自由に新しいアイデアを提案してください」突然こんな会議が始まったらどうでしょう?面白いアイデアが参加者全員からドンドン出てくる会社はすばらしいですよね。でも実際は自由に発言するって、かなり難しい事です。なかなか手が上がらない事が多いと思います。

理由は2つ
1、アイデアが浮かんでこない
  他人事なので思考すらしていないのは問題外(そういう組織にいる事自体考えものですが)として、何か良いアイデアはないだろうか??と思考を巡らせても、全然思い浮かばない場合、これは、発想力=アイデアの創発の問題です。何か思いついても、既知のものや、特別意見するほど魅力的でない事しか思いつかないという場合、取るに足らないアイデアになってしまいます。直感的に<ユニークでワクワクするようなアイデアを生み出す方法>を身につける必要があります。自分で面白い!世界にたった1つのアイデアだ!と思っても、次の課題として実行可能なものか?を検証してから発言する必要があります。思いついたアイデアを自分の中で検証し実現可能性を確認します。それがなければ荒唐無稽な妄想で終わってしまいます。100%実現可能というアイデアはオリジナルではなく、すでに誰かが実行している可能性の高い案になります。荒唐無稽と実現可能性の絶妙なバランスが必要とされますが、その検証をして、それでやっと、提案できるアイデアになります。実現可能性ばかりを優先してしまうとスケールが小さなアイデアになってしまうので、直感的なアイデアを優先する事も重要です。

2、アイデアはあっても言いづらい環境
Google のリサーチチームは効果性が高いチームに固有の 5 つの力学のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性だといいます。心理的安全性とは個々を尊重した自由な発言の場作りのことで、「一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態」のことを言います。組織やコミュニティなど複数の人が関わる場において、自分の考えや感情をそのまま表現できる環境かどうかが重要となります。(『「効果的なチームとは何か」を知る』(Google re:Workより))

私のセミナーでは受講生ははぼ100%初対面です。その中でより自由な発言の場を作るために以下の3つ要素を取り入れています。

1.内在的思考への切替と個人の尊重
セミナーが始まる前にアイスブレイクとして、3つの質問をして、それぞれに発表してもらっています。その質問は
1、最近欲しいもの・こと
2、あなたが困っていること
3、最近、ときめいたこと
この質問によって、受講者が自分の内面と対話する事で外的要因(仕事や家庭など)の思考から内的思考に意識を切り替えます。内面的な自分を打ち明ける事で受講生同士が、社会的なバイアスなく、個人として他者を認識し、尊重するようになります。また、社内ではなく不特定多数の参加者がいる場合、会社名や自分の役職の話は織り交ぜないことが原則です。社会的な立場や社名というレッテルを気にせず参加することが基本となります。

2、全員が「間違える」問題、「正解のない」問題           自由に柔軟に発言してもらう為に前段階として、全員が「間違える」問題や正解のない禅問答で間違える事に抵抗がない様な環境を作ります。
みんなで間違えれば怖くない。「間違える」事を自分が許せる事は自己肯定感にもつながってきます。全員が間違える場で「間違える自分であっても良い」「間違っても恥ずかしくない」環境は会議に<心理的安全性>を生み出します。

ノースウェスタン大学 ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントのリー・トンプソン教授の研究によれば、「恥ずかしい話」をすれば心理的に「抑制」が取り払われ、いっそう創造的になるのではないだろうか。逆に成功体験を語ることで、階層や他者との比較が気になり、創造性が抑制されるのではないか。という仮説の元にブレストの前に半分のグループは恥ずかしい経験を話し、残りの半分は誇りに感じた経験を語ってもらう実験をしたところ、前者の方が26%も多くのアイデアを生み出したそうです。(ブレストの効果を高めるには「恥ずかしい話」を打ち明けよう

 通常のコンサルティングの基本では解決策、つまり正解に導くために、間違いに気づき、修正を提案する事でしょうが、私の講義では間違える事をみんなが肯定するところから始めます。ここが大きな違いです。

3、自分自身のバイアスを認める問題
自分がどれだけ既成概念や偏見にとらわれているかを知る事ができる問題を出します。いくつかの問題のうち参考にしている本が「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」ハンス・ロスリング著です。この本には様々な統計データが記載されていますが、そのデータをクイズ形式で質問すると、多くの人が間違った答え、むしろ正解の反対の答えを出してきます。このクイズは「世界がどんどん悪くなっている」という思い込みから正解率はチンパンジーよりも低いクイズなのです。自分の思い込みや既成概念に気がつくと同時に、参加者の多くが間違えるため、間違える事への羞恥心が軽減されます。

4、「わかりません・知りません」を言えない物語
1、2、3を通して思考を内発的にして、思い込みを外し、羞恥心が軽減されたところで妄想の時間が始まります。
何人かの人物のポートフォリオと数カ所の場所の写真を用意します。まずは人物の写真を見せ直感的に気になった1人を選んでもらいます。次に、場所の写真から気になった場所を1箇所選んでもらいます。1枚目の人物と2枚目の場所を組み合わせて、だれがどこで何をしているか?という物語を話してもらいます。この時、ルールは「わかりません・知りません」を言わないのがルールです。例えば、聖徳太子とピラミッドをえらんだとすると「あなたは聖徳太子と一緒にそこに居たそうですが彼は何をしに来たのですか?その時、大変な事件が起きました。それについて話してください」と言ったように知っている事を前提で質問をしていくと、最初は一生懸命自分の記憶から話を収束(筋が通った話)に向かわせますが、問い詰められて、次第に収束を諦めた頃から自由な妄想がはじまります。そうなると、この物語は荒唐無稽で独創的でとてもおもしろい話に膨らんできます。実はこの状態がアート思考の状態です。今までなかったものを結びつけて今までにない新しい物語を捏造する。まさにアーティストが創造するのと同じような行為を行っていると言えます。

ここで生まれた興味深いストーリーを紹介しましょう。
ルパンと宇宙を選んだ受講生のストーリです。
ルパン三世の最終回、宇宙船から地球を眺めながらルパンが最後に言った言葉は「俺が一つだけ盗めなかったものがある、、それが地球だ。。。」といって息をひきとる。という感動的なルパン三世のラストシーンです。
ルパン三世はスタートしてから50年を迎え、そろそろ、、というところで往年のファンも納得する最後です。

また、他の人は
ゴリラと自殺の名所を選びました。
もし、自殺の名所にゴリラがいたら。。自殺したくて来た人が、のんびりしているゴリラを見て思いとどまるのではないか、と実験的したところ効果が現れ自殺者が激減、それ以後日本の自殺の名所には必ずゴリラの檻がある。
という話です。

とてもユニークな発想だと思いませんか?
ルパンと宇宙はルパンの本当の最後という意味では、その先がないのですが、事業としてルパンというキャラクタービジネスに見切りをつけた事業の収束、もしくは次の事業への橋渡しと言えます。一方のゴリラと自殺の名所は今までに全くない発想で、もし実行して成果が出て自殺の名所に必ずゴリラがいたら、それはイノベーションと言えます。

このように、人の想像力・創造力は環境さえ整えれば発揮できるものなのです。この4つを実践する事で、誰でも簡単にクリエイティブなマインドセットになることができます。 会議の場は確実に盛り上がり、意外なストーリーや発想が生まれやすくなります。

経験上、そこまでファシリテーションしてからの企画会議は間違いなく創造的な案が出てきます。そして、今まで発言しなかったスタッフが活発に発言し出し、頭の硬い上司も一緒に人の意見に耳を傾けます。
これがアート思考を使ったクリエイティブな会議の作り方です。 ファシリティションする側はこの時、とてもロジカルに構成していきます。
自由な発想を生むための入口はロジカルな方が有効です。最初から自由に、ではなくロジカルにバイアスを解いていきます。慣れてきたところで一気にバーっと思考を拡散していきます。

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