オーケストラの録り方
壮大な表題をつけてしまいました。あくまで一例ということで、「クレド交響楽団」さんを引き合いに、「オーケストラの録り方」をざっくりお話しします。
こういうことは「社外秘」であったり「お家芸」であったりするので公表する人も少ないと思うのですが、音楽はもちろん録音もまた趣味として楽しいものなので、趣味を深めていただくキッカケになればという思いもあって、(YouTube等でも)ノウハウをたびたび公開しています。
さて、すでにご存じかも知れませんが、私は「Ultra-Light Recording」というアプローチで録音しています。いろんな理由(資本がないとかw)があって、「最小限の機材で録る」んです。
ショスタコーヴィチの交響曲 第5番を題材に話を進めましょう。
まず、主となるマイクロフォンがあり(今回は4本で構成されていますが、2本の場合もあります)、これで8割ほどを捉えています。
マイクロフォンは(多くなると音が濁るので)少ないほうが音響・音質的には好ましいのですが、音楽的に成立しない場合が多々あるので、そこを補うためにマイクロフォンを追加します――(耳のようには音を捉えられない)マイクロフォンと耳との橋渡しをするのが、レコーディング・エンジニア(バランス・エンジニア)の役目です。
――この「スポット・マイクロフォン」は、ある意味 “嘘をついている” わけですが、「ひとたび嘘をつくと嘘を重ねなければならない様」に通じるところがあると思っています。例えば、ハープの音が弱いからといってマイクロフォンを追加すると、今度は弦楽器とのバランスが崩れてしまい、ヴァイオリンにもマイクロフォンを添える。すると今度は……と、マイクロフォンの数は増えるばかりになってしまいます。
で、今回、メイン・マイクロフォンの他に使ったのは
・木管楽器の周辺に2本
・ハープ、チェレスタ、ピアノの周辺に1本
・スネアドラムの近くに1本
・シロフォンの近くに1本
以上の5本。つまり、計9本で録っています。“ちゃんとした録音業者” なら、ハープ、チェレスタ、ピアノのそれぞれにスポット・マイクロフォンを置くでしょうし、おそらくスポット・マイクロフォンだけで14本程度は使うのではないでしょうか。
※保険で置いてあるものもありますが、使っていません。また、指揮台の下に置いてあるのは、楽団さんの記録用機材です。
とはいえ、ショスタコーヴィチを録るには、より多くのスポット・マイクロフォンを使いたいのが本音です。ただ、準備(仕込み)に充てられるのが1時間弱、しかもワンマンとなると……(汗)なので、「必要最低限かつ効果的なスポット・マイクロフォン」を見極めねばなりません。
さて、戸澤采紀さんがソリストを務められたヴァイオリン協奏曲 第1番では、戸澤さんの足もとに「バウンダリー・マイクロフォン」を置いています。(戸澤さんの)鳴りっぷりというか音色が良いのでメイン・マイクロフォンで事足りてしまったのですが、低音域を少し補う目的で活用しました。
包み隠さずお話しすると、協奏曲と交響曲とで、メイン・マイクロフォンの位置を変えたかったんですよね。ただ、演奏会の途中でそれは野暮ですから、どちらにも通用するマイクロフォンの位置を探るしかありません。
オーケストラがプロであろうがアマチュアであろうが、録り方に変わりなし! 音楽に貴賤なし!
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