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飯山市(長野県)に移住 【その2】

「移住はしたい。でも、東京を離れたら仕事が成り立たない。いったいどうすれば……」

コロナ禍でリモートワークは市民権を得たものの、私の録音という仕事は現場に出てナンボの世界。コンサートホールが多く集まる首都圏でないと成立しないようなところがあるので、移住はすなわち多くの仕事を失うことを意味します。

これはきっとほとんどの人が(移住にあたり)直面する課題で、私も延々と解決策を考えたものの決め手が見つからなかったのですが、ある時、「地域おこし協力隊」という選択肢に可能性を見出したのです。

キラキラした世界の外へ

2022年に信越トレイルを体験して以来「ロング・ディスタンス・ハイキング(ロング・トレイル)」に魅了され、熊野古道やあまとみトレイル等を歩く中で、「土のあるところで暮らしたい」という思いが高まっただけでなく、仕事に対する価値観も徐々に変わっていきました――

若かりし頃は、業界紙に連載を持つような人物に憧れ、いわゆる “メジャー” な案件に関わりたいと思っていたものですが、“そういった価値観の世界” への興味や渇望が一切無くなってしまったのです。「負け犬の遠吠え」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、“キラキラした世界” に「心の充足」はないと悟ってしまったのです。

私が言うものもおこがましいのですが、私の録音の師は決して有名ではありません。業界紙等ではしばしば「有名・著名」でなく「高名」と冠されるほどです……ですが、超一流です。「キラキラした世界の外にこそ本物は在る」とさえ思っています。

――やや専門的な話になりますが、昨今の音響業界では「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」や NHK の「22.2マルチ・チャンネル」など、従来からの(そして定着している)「ステレオ・サウンド」にくらべ機材の量だけでなく、手間もコストも増えるばかりです。従来にない表現が可能な点は素晴らしいと思いますが、果たして「感動」は比例するでしょうか?

私はこういった「物量によるアプローチ」が、過度な都市開発や環境破壊に重なって見えて仕方ありません。最先端の仕事は刺激的で、ときに羨望の眼差しで見られたりもするでしょうが、「最新・最先端=幸福」とは限りません……ロング・トレイルを歩く中、その横をものすごい勢いで走っていくトラックの風圧を感じながら、こんなことを考えていました。

40代半ばでの転職の手段

録音から退くわけではありませんが、東京を離れて失うであろう仕事を何らかの形で穴埋めせねばなりません……そこで「価値観を変えてくれた、山やトレイルに関わる仕事をしよう!」と決心、しかし仕事としては未経験者ですから、入口として「地域おこし協力隊」の制度を活用することにしたのです。

ところが、山やトレイルに関わるような募集は中々みつかりません。「どこかで新しいトレイルでもつくろうか」などと妄想してみるものの、地域とのミスマッチは容易に想像できてしまい……

そんななか目にとまったのが、長野県飯山市の “委託型” の募集でした。「新規就農」のように決まった枠はなく、何かしら提案をして個人事業主として関わる仕組みです。さっそく、「山やトレイルに関われる余地はありませんか?」と訊ねたところ、なんと「信越トレイル」に直接携われる可能性が浮上。併せて、地元のケーブルテレビ局「iネット飯山」も(私の経歴に)関心を示してくださり、私なりの関わり方を提案&相談し、晴れて 2024年1月半ばから着任となりました。行政と市民とがとても近い印象で安心できた点が、移住の決め手になった気がします。また、飯山駅は北陸新幹線の停車駅でもあり、録音案件の出張が比較的容易な点も移住のハードルを下げてくれました。

40代半ばでの転職は一般的に厳しいと言われていますが、地域おこし協力隊の募集を見ると 50代でもウェルカム、60歳でもOK だったりします。もし、「移住したら仕事が成り立たない。いったいどうすれば……」と私のように思い悩んでいるのなら、“委託型” は良い取っ掛かりになるかも知れませんよ。

協力隊のミッションは「地域を興して定住する」ですが、個人的には「どこでもいいから、みんなで東京を離れて、ストレスフリーに暮らそうよ!」と言いたいですね。その方が、日本が幸せになる気がするんです。

気が向いたら、「その3」を書きます^^

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