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組織設計概論 まとめてみた②

昨日はじめてnoteを投稿し、いくつかのスキを頂いた。自分の備忘録として始めたものの、とても嬉しく、モチベーションがアップした。こういうのを感情報酬と呼ぶのだろう。

また、他の方の読書レビューのnoteを拝見したが、図を交えてわかりやすく要約しており、歴然たる差を痛感。前置きはここまでとして。

今回の内容
2.組織設計の考え方
2-1 組織の3つの合理性
2-2 組織設計の意義・目的
2-3 組織改革にあたっての注意点

今回の話は実際に組織を設計する際に、押さえておくべき組織の特性や、組織を変えることの意味と留意点について言及した内容である。

組織の3つの合理性

良い組織を設計するためには次の3つの合理性を満たしておく必要がある。(ここでいう良い組織とは効率的、有機的に機能し、戦略を効果的に実行することができる組織である。)

①戦略合理性
②組織論理合理性
③業務特性合理性

なんやら前回のnoteで出てきた「組織の3つのS」などとごっちゃになって混乱しそうになるが、この合理性はいわば、組織を設計していくうえでのチェックポイント、外しちゃいけない注意点的な感じなものと理解してよいと思う。とりあえずそれぞれの詳細を記していく。

①戦略合理性
★目標とする事業戦略の特徴に対して合理的であること。
 企業には「戦略」と「組織」という2つのファクターが存在する。「組織は戦略に従う」という命題が示す通り、組織は戦略の達成のために設計されたものでなければならない。
 例えば、競合企業に先駆けて、消費者のニーズに合致した新製品を市場に投入し、市場を制覇する戦略を描いているとする。この場合、スピードが何より重要であり、現場の営業からの声がストレートに上層部に届かなければならないが、組織が多層のピラミッド構造となっていると、意思決定に時間がかかりすぎ、競合に先を行かれてしまう。
 このように、戦略の効果的な実現のためには、実行体制としてどのような人材でどのような組織ユニットを組み、どのような権限のもとに、どのような仕組みで行うのか組織や制度に関わる領域までトータルに設計することが不可欠である。

②組織論理合理性
★人間の行動様式や心理パターンに対して合理的であること。
 当たり前のことだが、組織とは人間の集まりである。組織がどんなに戦略に整合していても、人間の心理パターンや集団行動の特性を無視すると、その組織は有効に機能しない。
 組織の定義でもふれたように、組織がうまく機能するには、組織のミッションを遂行することを通じて、個々人の求める効用の達成が実現できる仕組みが必要である。3Sの「システム」で考えると、どれだけ成果をあげても褒められず、逆にミスしてもペナルティがないようだと、社員は頑張ろうが頑張らなかろうが同じだという意識が芽生えてしまう。極端な例ではあるが、人間の心理を考慮に入れた評価・報酬の組み方は非常に重要である。
 また、「ストラクチャー」についても組織論理を活かした組み立てが必要である。組織には一般論として最適なマネジメントサイズが存在する。

・上司が部下の個人個人に対して目配りがきく人数→10人
・必要十分な直接的なマネジメントができる範囲→30人

このマネジメントサイズは企業組織のみならず、すべてに通ずる。1人の管理職に対して多すぎる部下や、逆に管理機能が過剰な体制は非効率を生み出す。このように、組織を設計する際は、人間の心理面や行動原理、さらには最適なマネジメントユニットを設計することが重要なのである。

③業務特性合理性
★個別業務の内容や処理手順に対して合理的であること。
 各組織ユニットはそれぞれにミッションを有しており、それぞれが自らのミッションを果たすことによって戦略が達成される。この各組織ユニットは一律に同じものとして考えるのではなく、組織のサイズや業務の種類の違いや特性を踏まえ、それぞれに適したルールや規定を決めるべきである。
 例えば、生産機能は生産性の向上のため、業務マニュアルを作成し、属人性を生まない体制や制度が必要である。一方で、企画や研究開発では、個人の創造性や発想を最大限引き出すマネジメントや評価設定が必要である。このように、業務の特性に合わせ、評価制度や組織ユニットサイズの設計を行っていくことが必要である。

上記で紹介した3つの合理性は組織設計の大前提となる要件である。組織を設計する際には、3つの合理性を満たしていることが重要であるのと同時に、設計した組織体制がこれら3つの合理性を確保できているかというチェックにも有効。

組織設計の意義・目的
「組織成員の行動様式の規定」

組織を設計することの意義・目的は何か?
ここまでの流れがつかめていれば、「戦略を有効に遂行するために、最適な組織や運営制度をデザインすること」という答えがすぐに出てくる。だが、これは第一義的な答えである。この第一義的な目的の根底に存在する組織設計の本質的な狙いは、
「組織成員の行動様式の規定」であり、
同時に、組織変革を行う本質的な狙いは
「組織成員の行動様式の変革」である。

組織をデザインするとは組織の3Sに手を入れ、組織図を書き換えたり、評価制度を改革したりすることに間違いはないのだが、結局達成したいのはそれを通じて社員の行動様式を変革することである。そして、この変革を通じて、企業を環境に適応させ、組織の生産性を最大限向上させることが組織設計の意義であり目的なのである。


組織改革にあたっての4つの留意点

では、組織成員の行動様式を変革する効果的な組織改革を行うためにはどのようなことに留意すればよいのだろうか?留意点は4つある。

①デメリットの存在
②既得権の再配分を必然的に伴う
③当面の業務効率の低下
④1つの組織の効率・効果の持続性には限界がある

それぞれを詳しく見ていこう。

①デメリットの存在
「万能の組織制度はあり得ない」

まず、1点目は組織改革に際しては、メリットの裏側で必ずデメリットが存在するということだ。何かを選択することは、裏返すとそれ以外を捨てることである。組織改革の時には、一定の逆風があるのは当然である。デメリットに配慮しすぎたり、怯んでしまっては組織変革の第一のメリットを追求できず、組織改革自体が失敗に終わってしまう。

②既得権の再配分を必然的に伴う
「組織改革においてeveryone happyはあり得ない」

組織改革とは、極論それまでのやり方を否定し、新しい行動様式を導入することである。既存の組織で高いポジションにつく人材は、「それまでの」組織の功労者である。こういう人材がそのポジションを失い、新たな人材が高いポジションにつくことは頻繁に起こり得る。このような既得権の再配分は不可避である。しかし、変革による企業のプラスとマイナスを見て、プラスであれば合理的な選択である。組織能力の向上のために、個別成員はマイナスを被ることがあることは組織設計に携わるものとして、認識・覚悟が必要である。

③当面の業務効率の低下
「改革の評価基準は、実現すべき新しい行動様式の達成度にする」

社員の行動様式に変革をもたらすような大きな組織変革であればあるほど、そのインパクトは大きく、これまで是とされて来た考え方が否定されることになる。一定の混乱は起こり、組織力が一時的に下がってしまうことは不可避なのである。この一時的な組織力の低下や社員からの逆風に怯んでしまっては組織改革は達成されない。変革に伴う一時的な組織力の低下や業務効率のダウンはある程度受容し、目指すべき新しい行動様式の達成度を評価の基準に据えなければならない。

④1つの組織の効率・効果の持続性には限界がある
「意図的に組織を変えなければ、すぐ保守化・硬直化・肥大化する」

タイトルのように、1つの組織の効率・効果の持続性には限界がある。これには2つ理由がある。
1点目は組織は変化を嫌い、本能的に変化を排除する性格を持つからだ。組織がいくら環境の変化に適合し、新しい戦略に合理的に変革しても、次第に構成員は自己のポジションに保守的となり、新たな取り組みを嫌い、組織は硬直化し、組織の効率は低下していく。
2点目は人間の能力に関わることである。組織が変わりたての頃は、緊張感があり注意を払って仕事にあたる。そして、学習プロセスにおいて一定限度までは生産性が上昇する。しかし、業務に慣れてくると楽に仕事ができる反面、集中力も低下する傾向があり、生産性が低下する。
そのため、組織の見直しは定期的に行われなければならない。一つの目安としては、5年から7年程度でかなり抜本的な見直しが必要となるであろう。

長々と4つの留意点を書き連ねたが、著者はこの章の最後で、組織改革の成功に必要なものを、非常にシンプルな言葉で締めている。

必要なのは、組織改革を「断行」するという揺るぎない決意である。

なんといいますか、

極めてロジカルで構造化された文章の中で突如現れた根性論ですが、それほど重要ということなのでしょう。
これまでのnoteは、組織設計を行う上での基礎理論や、心構えが主な内容でした。次回からは実際の組織設計のプロセスの解説の章に入っていきます。




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