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すべてを演じてやったんだ

ホームセンターに、ハンマーを買いに行った。


オフィスカジュアルな服装の上に、薄手の上着を羽織り、何故か足元はサンダル、という謎スタイルだった。

私は普段から、スーツではなく、シンプルなパンツスタイルのオフィスカジュアルで営業活動をしている。夏場は、商談や新規のご挨拶でなければ、ジャケットも着ないことも多い。
さらに、車での移動中は、日焼けが気になるので薄手の上着を着ていることが多く、パンプスを車のなかに置いて、取引先に着くまではサンダルで運転している。この謎スタイルは、こうして出来上がるのだ。

そして昨日、仕事でハンマーが必要になったため、そのスタイルでホームセンターへ行った。


そのホームセンターは、園芸館と資材館が本館とは別で建てられており、私は、工具や資材のみがある資材館へ入った。平日の昼間の資材館には、DIYしそうな人か、作業服を着た人くらいしかいなかった。そのなかで、私の謎スタイルは、より一層ミスマッチな感じがした。

こんな服装で、一目散にハンマー売り場に向かい、ハンマーだけをレジに持っていったら、職場で突然上司に殺意が湧き、職場のサンダルを適当に履いたまま、上司を殺すためのハンマーを衝動的に購入しにきた女だと思われるのではないか、と思い始めた。
もしくは、自宅で、会社に行く準備をしているときに突然、旦那の(もしくは彼氏の)浮気が発覚し、玄関で適当なサンダルを履き、現場である女の家へ向かう途中で、凶器を購入しにきた女だと思われるかもしれない。


なので、念の為、サイコキラーの足取りでハンマー売り場へ向かい、サイコキラーの顔でハンマーを選び、サイコキラーの持ち方でハンマーをレジへ運んだ。

きっとあの店員は、あとで警察がきたときのために、私の顔や服装について何回か確認し、記憶したことだろう。
しかし、実際には、君がやっていることは、まったく無意味なことなのだ。何故なら、実は私は、なんと、サイコキラーではないからだ。は、は、は、は、



ということを脳内で考えながら、平和に仕事を終えた。


今日は金曜日だ。このまま平和に週末を迎えられることを、あと少し祈りながら過ごすとしよう。



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