鳥籠の中の鳥はよく泣く。
結婚してすぐに住み慣れた関東を離れ、地方の元夫ケンタ(仮名)の実家のある県に移り住むことになった。彼が長男であったからという理由だった。
同居ではなかったものの、スープが冷めないどころか、煮え立ったままの距離だった。
実家に帰って来たからか、なんだかケンタは非常に態度が大きくなった。
後から知った話だと、ターゲットが逃げられない状態にしてから、モラハラをエスカレートするらしい。そんなん知らんし。当時。義務教育で教えといてくれ。
右も左も、親族友人いない灰色の空が毎日続く、時には雪や霙舞い散るがらんとしたアパートで、本当に辛かった。
友達とも縁を切れと言われて、ここに来て、ケンタはゲームばかりしている。
そしてすぐ妊娠してしまった。
なんの場所も分からず、コンビニすら近くに見当たらない。行くのは近くの品揃えの悪い小さなスーパーと郵便局くらいだった。
よく窓の外を眺めては灰色の空を憎らしく思った。
鳥籠の中の鳥だな。
ケンタは自動車免許を持っておらず、地方で就職し生活するには車無しでは厳しかった。
ケンタの実家からの援助を受けて小さな車を購入した。私は自動車免許持っていたので、ケンタを教習所まで送迎した。2月の空はいつも灰色だった。
ケンタのいない間はアパートにポツンと一人で待っていた。
そして、お腹はだんだん大きくなっていく。
不安と心細さで泣くことなった。いつも慰めてくれていたケンタがある日泣いてる私を見下ろすようにして
『チッまた泣いてんのかよ!』
と舌打ちして言い放った一言が、甘く見ていた幻想の生活を打ち砕いていった。
そうして
【コイツの前で二度と泣くか!】と心に誓った。
それに反してそれからケンタの前で何十回と泣くことになる結婚生活が20年以上続くのだ。
ぎゃーー!
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