『あれよ星屑』感想(24/03/20)

山田参助『あれよ星屑』が電子書籍99円になっていたので、一気に全巻読んだ。戦中戦後の生と性を描いた作品です。

『ヴィヨンの妻』でヒロインが「私たちは、生きていさえすればいいのよ」と言ったのと正に同じ時代、戦争で決して癒えることのない傷を負った人(明るく開放的な新世代すら)達の悲喜こもごもを描きつつ、「生きていさえすれば」をどうしても飲み込めなくなった男・川島と軍隊での元部下・門松を軸に話が展開していく。

ブロマンスモノと銘打たれているが二人以外の登場人物との関わりも一つ一つが濃密で、つまりそれぞれの人間像が作り込まれているからだと思う。映画『ハート・ロッカー』について、殴り合いシーンが恋愛映画でいう身体を重ねるシーンと同じ位置付けだという評があったが、本作では数度にわたってコミカルに描かれる、メイン二人が「ご兄弟」になる場面がそれにあたるのかな、と思った。

また、戦中の回想シーンは恐らく『独立愚連隊』シリーズの影響をうけてる痛快活劇なんだけど、いっぽうで非業の死を遂げた班員達も美化せず、キャラクターの愛嬌とは独立してエグい悪行を悪行として厳然と描いていて、逃げていないなと感じる。

我々は過去のトラウマや悔恨と付き合って生きていくしかなくて、もしそこに本当に決着をつけようとするならば、イコール、それは死を避けて通れないのかもしれない。

以上

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