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コカ・コーラ初の酒類ブランド「檸檬堂」のマーケティング戦略から学ぶ、後発企業の勝ち方

前回からだいぶ空いてしまいましたが、Advent Calendarに参加したので、改めて書いてみようと思います。
今回は、コカ・コーラ社から2019年10月28日から発売された「檸檬堂」にフォーカスしようと思います。ここ数ヶ月で「檸檬堂」という言葉をかなり目にする、耳にする機会が増えました。そのマーケティングのポイントに迫ります。

市場環境の整理

・RTD市場は年々伸びている
缶のレモンサワーでいうとRTD市場(Ready to Drink=缶チューハイやカクテルなど)に含まれていますが、年々約110%の成長を遂げています。

RTD市場推移

(出典:RTDに関する消費者飲用実態調査 サントリーRTDレポート2019)

・居酒屋ではなく、自宅でお酒を飲む機会が増えている
家飲みの中でも若ければ若いほどRTDの割合が高く、食事中の飲酒機会が増加しているそうです。

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(出典:RTDに関する消費者飲用実態調査 サントリーRTDレポート2019)

・RTDの中でもレモンフレーバーの人気が高い。
レモンフレーバーが魅力的に感じるポイントとしては「飲み飽きない味であること」「飲みやすいこと」「食事に合うこと」「お酒の味が楽しめること」「お店の味が楽しめること」といった点があげられるそうです。

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(出典:RTDに関する消費者飲用実態調査 サントリーRTDレポート2019)

そもそも檸檬堂とは何か?

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(画像引用:檸檬堂公式サイト)

コカ・コーラ社が初めてアルコール飲料の販売に乗り出した商品。2018年5月から当時九州のみで販売し、2019年10月28日に満を持して全国展開されました。

商品コンセプト:
「こだわりのレモンサワーを出すお店」
そこを起点に居酒屋の前掛けに似たパッケージや檸檬堂というネーミングが採用されています。また、製法に関しても居酒屋での作り方「前割りレモン」を採用。従来と異なり、レモンを皮ごとすりおろし、あらかじめアルコールで漬けてなじませる作り方に至ったそうです。

商品ラインナップ:
大きく下記の4種類。
・はちみつレモン(3%)
・定番レモン(5%)
・塩レモン(7%)
・鬼レモン(9%)

「檸檬堂」を取り巻く競争環境について

上述した通り、市場自体も伸びていることもあり、競争はかなり激化。

大手酒造メーカーは、ターゲットに合わせたチューハイブランドを複数持ち、それぞれでレモンフレーバーを用意している。
例えばサントリーの場合、9%は「-196℃ストロングゼロ」、7%は「こだわり酒場のレモンサワー」、5%は「明日のレモンサワー」、3%は「ほろよい」とそれぞれ異なる。アサヒビールも、もぎたて(9%)、ウィルキンソン(7%、9%)、ハイリキ(7%)、贅沢搾り(4%)のように、各ブランドから出している。
キリンは氷結(5%)、氷結ストロング(9%)、旅する氷結(4%)のように「氷結」ブランドの商品が多く、サントリーやアサヒよりわかりやすいが、キリン・ザ・ストロング(9%)、本搾り(6%)にもレモンが存在している。

こうして見てみると、各社3%・5%・7%・9%のアルコール度合いだったり、レモンに限らず様々なフレーバーの種類を増やし、広いニーズに答える商品ラインナップのように見えます。
そんな中でもここ1,2年で大きく台頭してきているのがサントリー社の「こだわり酒場のレモンサワー」。この商品はレモンサワー領域のシェアをさらに拡大すべく開発された商品で「家で飲むのに店の味」というコンセプトも檸檬堂と非常に近いものとなっている。

家で作る従来品に加え、すぐ飲めるRTD「こだわり酒場のレモンサワー缶」と業務用コンクを発売。当初、缶の年間計画は210万ケースだったが、2度の上方修正を経て800万ケース計画へと成長した。従来の「素」の年間計画も、60万ケースへと上方修正。飲食店の取扱い計画も3万店から5万店へと拡大した。レモンサワー市場は19年、前年比2桁増で拡大しているが、「その50%程度をけん引」(サントリー)。

以上から「檸檬堂」における一番のベンチマーク先は「こだわり酒場のレモンサワー」だと一旦仮定。双方比較しながら詳細を掘り下げていきます。

「檸檬堂」と「こだわり酒場のレモンサワー」の4P比較

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改めて他の競合も含めて、檸檬堂の勝ち筋は何か?

1.レモンサワー自体の味の差別化

「お店の味を家に持ってくる」というコンセプトや製法に関しては、こだわり酒場のレモンサワーと大きな差異はないものの、それ以外の各社ブランドのレモンサワーに関しては製法自体が異なります。
さらに、同じレモンサワーでもアルコール度数に応じて味も変わるため、多様な消費者ニーズに対応することができると考えられます。

2.複数ブランド×複数種類ではなく、1ブランド×複数種類による差別化

基本プロモーションはブランド単位で行なっていくため、レモンサワーというカットで見たときに一つ一つのブランドにかける広告宣伝費は少なくなるのではないかと予想。
一方、檸檬堂は一点突破で同ブランドに広告宣伝費を全投下できるため、広告対効果の面でも良いのではないでしょうか。

3.パッケージデザインによる差別化

これまでの缶チューハイのパッケージというのは、大抵カラフルで、メタリックで、果実や水滴といったシズル感のあるものばかりだったんです。そこにいきなり、酒屋の前掛けみたいな紺色のパッケージがあったら目立ちますよね。

色のテイストも確かに異なるが、それが同じ棚に対して4種類横並びになるのでさらに目立ちます。商品を選んでもらうにあたり「まず目を止めてもらう」というのがとても重要だからこそ、ここでの差別化が大きいでしょう。
手にとってもらえさえすれば、上述したプロモーション効果も相まって購買に繋がりやすいはず。
このあたりのブランド戦略はもともと培ってきたコカ・コーラ社の大きな強みです。

まとめると・・
適切なマーケット・競合理解・ユーザー理解を元に、様々な変数の中で自分たちの強みが活きるポジショニングを見つけて実行したこと(=自社の独自性を持つこと)

コカ・コーラ社のCMO和佐氏は「意味のある差異性」と表現していました。
言葉にまとめると当たり前の話ではありますが、できていないこともおそらく多々あります。できているつもりでも深さが足りないこともあるでしょう。基本に立ち返ることの重要性を感じました。

もしCMOだったら

とにかく認知拡大に尽きると思います。
商品は差別化できている、飲んでもらえさえすればリピートしてもらえるだけのクオリティはある状態だからこそ、もっと知ってもらう必要があります。

・少しずつ広がって来ている間借り出店の店舗拡大
・kurashiruなどレシピ動画サービスとのタイアップ→Instagramアカウントとの連携
・テレビCM出稿量増加

など、もちろん配荷の問題もあると思うが、一定問題ないとした場合、このあたりの施策を行なっていくことで売上拡大・ファン化を進めていくでしょう。

最後に

元P&Gの出身の方らしく、極めて王道の戦い方で素晴らしいなと感じました。目先の手法にとらわれずに、独自性のある自分たちのポジショニングを決めること、そこを起点とした、一貫性のあるマーケティング。
自分たちにも落としこんで考えてみる良い機会になりました。
とはいえ檸檬堂自体、まだ全国展開して2ヶ月ちょっとなので、今後の動向も追っていきたいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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