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20201117


ゆうべ豚汁を作ったので、今朝もあたためて食べる。豚汁とトースト、というのはちぐはぐのようだけど意外と食べやすい。あたたまるし、朝から肉も野菜も味噌もとれるのでいい。

『パスタマシーンの幽霊』を読み終わる。短編集なので読みやすかったはずなのに、私にしてはかなり時間をかけて読んだ。ひとつひとつ短い話なのに、ふたつみっつ読むと休憩したくなった。短くて、川上さん流の淡々とした感じがあるのに、それぞれの世界が濃くて、続けて読めなかったのではないかと思う。

『ブイヤベースとブーリード』の中の萄子の矛盾した感じが、人間だなあと思い、対して、これから別れるというのに「萄子はかわいいね」という恵一の気持ちもとてもわかる(けれどこの言い方はものすごくずるい)。
人間は、ほとんど矛盾だらけでみっともない、と思う。でもそれを認めたくないし気づいてもいないのかもしれない。そういうみっともない姿を小説では軽やかに読める。かわいいなと思ったりもする。矛盾、だけどどちらも本当なんだな。本当で切実な感じが萄子に、二人にぴったりで、そして最後は微笑ましかった。

この本の話はとても真実なのに、ちゃんと最後にちょっとほっとするから、いいなと思う。悲しいも嬉しいも好きも嫌いも本当で、嘘くさく幸せにはならず、きちんと現実な感じがする。川上さんはファンタジーみたいなちょっと不思議な世界を書かれるけど、それもちゃんと現実だな、真実だな、と思ってしまう。
私たちの身に降りかかるできごとは実はどれもささやかなことで、大きな幸せも大きな不幸もない。だけどきちんと嬉しいし、きちんと悲しい。そうやって生きている人たちは、ほっとする。


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