20220304
二月は十四冊の本を読んだ。二日に一冊のペース。
本を読むのは、ここに居たくないなあと思う時。まあ、その都度「ここに居たくないなあ」と思っているわけではない、というか、常々「ここに居たくないなあ」と思っていて、それでもここに居なければならないことをしている時は平気で、それがなくなった時に本を欲しているんだと思う。
そして二月は本を三冊しか買っていない! 優秀!
(でも確認したら一月も三冊だった。一月は新刊、二月は古本だったので値段は全然違うけれど)
しかもそのうち二冊は図書館で読んだことのある本。
最近、新しい本を読むよりも、昔読んでしばらく読んでいない本を手に取ることが多い。好きな本は何回読んでもその度に同じところで感動したり(そう、ここの言葉が、台詞が、すごく好きなんだ!)、新しいところで感動したり(どうしてこんなみずみずしい言葉に今まで気がつかなかった?)、本当に飽きない。
江國香織のエッセイ『とるにたらないものもの』は読む度に
何が好きですか、と訊かれて、まよわず、ケーキ、とこたえられるような単純さで、私は生きたい。
のところで、私もそのように生きたい! と拳を握りたくなる。
それからこの本は、もくじを見ているだけで心が落ち着く。そういう本が、私は好きだ。
しもやけが落ち着いてきたので、先月末久しぶりに化粧をした。
入浴前に化粧を落としているとそれを見た夫が「そうか、化粧をしたら落とさなくちゃいけないんだね」と言った。化粧をしたら落とさなくてはいけないし、ご飯を作ったら洗い物をしなくてはいけないし、服を着たら洗濯をしなくてはいけないし、物を買ったら収納しなくてはいけないし、この世にやりっぱなしで済むことなどないのだ。
何の話をしていた時だったか、夫が「村上春樹の小説は髭を剃るシーンがよく出てくる」と言っていて、へー! となった。とても安易な考えだけれど、男の人の書いた小説だ! と思った。そうか、男の人の多くは毎日髭を剃るんだな。女の人の多くが毎日化粧をしたり落としたりするみたいに。
だいぶあたたかくなってきた。土が発酵したような生ぬるいにおいがする。網戸によくわからない小さな虫がたくさんやってくる。そしてベランダのミニバラが新しい芽を出しはじめた。私は少しずつ着るものを薄く軽くしようと試みる。
春は危険な季節だ。縮こまっていたからだと気持ちがぐーっと伸びたくなり、そうするとなんだか朗らかな空気に包まれ、いや、これは囮なんだ、となぜか懐疑的になり、そうすると周りの朗らかさが刃のように感じられる。春生まれなのに、春が苦手だ。穏やかで、新鮮で、みずみずしい季節に、うまく溶け込むことができない。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?