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鳥頭と人間性

ペットで文鳥を飼い始めて1年半ほどになる。

奥さんと一緒に住み始めたと同時に飼ったシルバー文鳥だ。

これが最高に愛おしい。
犬・猫と並んでもっとメジャーになるべき存在であると個人的には確信している。

それ単体で生きがいになってしまうくらい強力な存在。
その素晴らしさはまた別の機会に語りたい。

お世話が簡単な文鳥だけど、一つ緊張が走るものがある。

それが「爪切り」。
ほったらかしにすると伸びて危ないので、定期的に切ってあげるわけだ。

手のひらサイズの小鳥をむんずと捕まえて小っちゃい爪をパチリ。
文鳥を見たことない人も何だか危なそうだと感じるだろう。

その爪切りを先日奥さんがしくじってしまった。
平たく言うと「深爪」だ。

爪の根元には血管が通っているので、当然出血。
文鳥ちゃんは大混乱。

思ったより出血するので僕らも一緒に大混乱。
慌ててネットで止血法を調べ、飛び回る文鳥を捕獲し、何とか止血することができた。

また、むんずと握られ、止血される文鳥。
大量出血し、普段は温厚な平たい顔の巨人族には乱暴され、さぞ怖い思いをしたはずである。

傷口が開かないよう、早めに寝かせて翌日。

そこには、いつものように奥さんの手のひらでぐっすり寝る文鳥の姿があった。

普段とまったく変わらぬべったり感。
昨日のことがちょっとでも残っていたら、少しくらい警戒するだろうに。
見事なまでの「鳥頭」である。

そんな警戒心ゼロで幸せそうに丸くなる文鳥を見て、正直うらやましさを覚えてしまった。

過去のことは可能な限り引きずらないよう意識しているが、ご存知の通りこれが中々難しいものだ。

因縁のアイツの名前が聞こえてくれば一瞬、心に亀裂が入るし、苦い思い出の場所を通ると少なくとも20秒くらいはモヤモヤしてしまう。

人間にもここまできれいさっぱり忘れる機能が搭載されていたら、もう少し生きやすいだろうに。

……いや、もしかすると文鳥は忘れていないのかもしれない。

過去のことは完全に水に流し、今日を生きる。

もしそれを実践できていたとするならば、文鳥ちゃんは僕よりよっぽど人間ができていることになる……。

幸か不幸か、それを確認する手段はない。



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