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「営業はApple製品の箱である」 セールス体験もプロダクトの一部になるという話

40’s Biz talkは法人営業やBtoBマーケティングが大好きな40代男性2人がお届けするポッドキャスト番組。その内容をテキストでもお届けしています。第4回は「SMB企業向けプランを提案された時の話」です。

サマリー
先日、とある営業に「SMBプラン」をすすめられた件
SMBプランやSMB事業部などの名称は売り手視点にありがちな罠
営業が提供するセールス体験まで含めてプロダクトという認識を


それでは、本編の内容をお届けします。


営業に「御社向けのSMBプランもご用意してます」と言われたら

柳澤大介(以下、柳澤):今日は、僕からお話しをさせてもらいたいんですけど、私も自分の会社を経営してるんで、毎日いろんな連絡が来るんですよ。

最近多いのは、フォーム営業。問い合わせフォームから、1日にめっちゃ来るんですよ。

杉本浩一(以下、杉本): 私もちょっとやったことはあるんでですね、強く言えないけど。1回で辞めましたけどね。

柳澤:必ずしも、フォーム営業を全否定するわけじゃなくて、僕自身はフォーム営業っていうのはやったことほぼないんですけど、 自分がお客として売り込まれる立場で、フォーム営業がきっかけで買ったこともあるんですよ。

もちろん確率は低いですけど、ある程度パーソナライズされてたりとか、ちょうどニーズがあるタイミングにはまっていれば、購入されることはあるんだろうと思います。

私は仕事柄、営業にとても関心があるんで、興味のある話は時間が許す限り、できるだけ話を聞くようにしてるんですよ。

この前、とあるSaaSの会社から営業を受けた時に、サービスがすごい良かったんです。すごい良くて、使いたいなと思ったんですけども。

定価が月額30万ぐらいだったかな。

杉本:まあ安くはないですね。

柳澤:まあまあしますよね。年間だから360万円。初年度だけ初期費用が4、50万円かかるんでしょうね。

定価を見せられて、定価はこれですって話をされたんですけど、営業の人が「定価はこれなんですけど、実は御社向けのSMBプランもご用意してます」って言われてたんですよ。

杉本:あ、今、NGワード聞こえたぞ。SMBプランでしょ。

柳澤:「SMBプランです」って言われたんですね。たぶんその営業は全く悪気ないんですよ。

全く悪気なくて、もう本当にピュアに「喜んでくれますよね」っていうキラキラした目でSMBプランを出してくれてくれたんです。

杉本:SMBプランって何の略かって分かってんのかな?

柳澤:その日に僕もXでポストした時に、ちょっと盛り上がったんですよね。

杉本:分かる。たしか柳澤さんの話に乗っからせてもらったからだと思うんですけど、僕の場合、SMBプランならまだプラン名変えりゃいいじゃないですか。

僕の場合は「SMB事業部」っていうのが来たんですよ。事業部名がそれだったことがあって、いやいやいや、これすごいよなと思って、でもすげー分かるんだよね。

営業目線でいくと、エンタープライズ事業部とSMB事業部があって、顧客戦略とか接し方も分かれていて、分かるよ。

確かに僕も独り会社だったりスタートアップだったりすると、そりゃSMBですよね、小規模のビジネスですよ、そりゃっつって。

柳澤:でもまあ、一般的なセールスの方ってまず最初に営業に配属されて、買い手としての経験をせずに売り手になるんで、多分相手の気持ちは分かる機会ってないわけです。自分も20代の頃そうだったんで。

SMBって用語、社内で使う分には問題ないと思うんですよね。それを客先で使っちゃうとね。

杉本:そうね。たぶん今、キラキラした目で柳澤さんに営業してきたのは、若い営業さんですよね、おそらく。

柳澤:そうですね。

杉本:誰かおじさんか誰かが教えてあげなきゃいけないですよね。気がつかないですよ、若い時は、そういう細かいことって。

これが作法とかで気づきにくいから、教えなきゃいけないですよね。

柳澤:この話って闇が深いと思うんですけど、いまウェブ商談が多いじゃないですかZoomとかで。

相手の営業の方のバーチャル背景に「SMB営業部」って書いてましたよ、って他にも言ってた方がいました。

杉本:そうですよね。名前でつけちゃってる人いるんですよね。

些細なことでも信用をなくすきっかけに

柳澤:そう、だからそうなってきちゃうと営業個人のっていうか、もうその組織全体でそういうふうになっちゃってるんですよね。

杉本:そうなのよ。でもね、本当よくないっていうか、いかに売り手目線っていうか、自社目線でしかやってないってことですよね、営業が。

これは本当に闇深いし、もういないかな?って思ったらいるわけですよ、まだまだ。まだまだいるんだっていう感じで。

これみんなで発信したほうがいいですよね。SMB事業部ってつけちゃダメだよって。多分ね、一大運動にしてハッシュタグつけて「#SMBという言葉やめよう」とかね。

柳澤:フィールドセールスには、SMBとエンタープライズのヒエラルキーみたいなのも一定あるんですけど、ここで言いたいのはどっちが優れてるってことを言いたいわけじゃないんですよ。

お客さんの立場に立った時に「SMBプランです」って言われた買い手はどういう印象を受けるかっていうと、「小さい会社向けのプランです」って受け取るんですよね。

杉本:はいはいはい、そうですよね。

柳澤:小さい会社向けのプランですっていうのをちょっとカッコよく言ってるんで。言葉使いって難しいですよね。

杉本:ちょっと前、これは別にいいと思うんですけど、普通にSaaSの商品とか、昔のいわゆる既存大企業が売っているパッケージとかのプランとかそういうやつでも、中小企業向けプランとか書いてあったりとか、大企業向けって書いてあったり。

でもあれって基本的に自分が買う時に自分で選ぶから、それは別にいいじゃないですか。

柳澤:たしかにたしかに。

杉本:だけど営業で「SMB事業部の何々と申します」とか持ってこられちゃうと、ちょっとそういう担当さんがついてるのねみたいな。

別にその人があれじゃないんですけど、たぶん苦笑するぐらいですけど。どうなんだろう、これ嫌な気分になるっていう人いる? でも実際どうだったんですか?柳澤さんそれ買ったんですか、結局。SMBプランでってキラキラした目で。

柳澤:それは買わなかったですね。

杉本:それはちなみにSMBプランって言われたのが理由で?

柳澤:そういうわけじゃないんですけど、ちょっとタイミング的にも。ただ印象は良くはなかったですね。

杉本:良くはないですよね。小さなことなんだけれども、その些細なことで信用をなくすっていうところって多分あり得ますよね。

それこそそういう配慮が行き届いていないんじゃないかとか、例えば何かあった時に会社としてちゃんと対応してくれるのかみたいな。

たぶん組織的に信頼できるかっていう話になってきますよね。大きく捉えると。

柳澤:やっぱり良い営業から買いたいじゃないですか、買い手としては。

杉本:そうですね、特にスモールミディアムな会社からすると、月30万って大きな投資だし、失敗したら痛手じゃないですか。年間で360万だし。確かに信頼できる人から買いたいですよね。

営業=Apple製品の箱。体験も含めてプロダクトである

柳澤:最近は営業が提供してくれる、購入するまでの体験も含めてプロダクト(サービス)だなって僕は強く思って。

杉本:本当おっしゃる通りですよね。

柳澤:だから営業が提供する、購入するまでの体験ってすごく大きいなって思いますね。

杉本:例えば化粧品があって、その化粧品がいかに品質が優れて良いであろうと、茶封筒に入って化粧品が届いたら一瞬にして体験が失われるし、多分二度と買うかって思う。

最後に手に届くところまでが体験じゃないですか。パッケージにあんなに金かけてどうなんだって思う人、このパッケージかけなければもっと安く買えるんじゃないかとか思う人もいるかもしれないけども。

商材によってだけど、例えば化粧品みたいなものとかは、そういう美しい自分になれるっていうところをウキウキした感情も含めて、感性も含めてそれを体現する何かに入っていてほしいですよね。

ここら辺ってすごい難しいのは、物とかだったら包装紙も含めてだし、配送も。極論自社を離れるけど、配送してもらう時の日本郵便とかヤマトさんとかの対応とかも含めて、かもしれないし。

だから最後のラスト1マイルで自分に届くまでと、届いてからどういう体験なのかも含めて大事ですよね。

柳澤:そうそう、それ面白い。その話で言うとAppleとかめっちゃこだわってますよね。

箱がスッと開かないじゃないですか。

杉本:わかる。俺ちょうど、それ昨日思いましたよ。昨日たまたまMacBook Airを買ったんですけど、届いて開ける時のふわーってする感覚。

あの、独特の感覚。iPhoneの箱を開ける時もそうだったと思うし。

柳澤:あれは購入して開ける時の体験にめっちゃこだわってるんですよ。

杉本:よく考えると、あのふわーっていう感覚ってMacというかAppleから買った時しかないですよね。

柳澤:そうそうそう、ないですよね、ああいう感じのパッケージ。

杉本:あれみんななんでやらないの? あれって何か特許とかあるのかな。

柳澤:どうなんでしょうね。でもコストかかってますよね、あの箱。

杉本:絶対かかってるでしょうね。だけど、今こうやって柳澤さんと話してて通じるってことは、みんな多分思ってるじゃないですか。

横にMacBook Airの箱あるんですけど、この箱すげー金かかってる、原価いくらなんだろうとか思っちゃうけど、でもAppleの商品ってあんまり中古で買おうと思わないですよね、そういえば私。

この体験も含めて買いたいからかもしれないなと。だからメルカリでも買わないですわ、そういえば。お互い前にいた会社だけど、メルカリでも買わないよね。この体験が欲しいんだよな、個人的には。

柳澤:商品そのものの機能とか技術とか、素材にこだわりがちだけど、やっぱそこを取り巻く体験ってめっちゃ重要ですよね。

杉本:そうですね。でもむしろ体験を買ってるのかもしれない。体験の方が大事かもね。最後、営業もその体験の一部になってるわけですからね。

柳澤:プロダクトを良くするのも営業が担っていますよね。

杉本:そうですよね。その話とちょっと離れるかもしれないけど、営業って、今までだとデリバリーの感じの意味合いが強いじゃないですか。

でもSaaSとかスタートアップでは、営業がプロダクトに及ぼす影響って考えなきゃいけないなと思ってて。

届けるっていうところの体験もそうだし、お客さんが言ってたことを持ち帰ってプロダクトに反映させるっていう役割ってすごく重要だったりする。

大企業の営業だとなかなか声が届かないわけですけれども、せいぜい100人規模の会社とかだったら全然開発の人とかに届いたりするし、何だったら社長にも届くし、その人の持ち帰ったこと自体が体験になっていくじゃないですか。

だから、営業はその体験を司る存在であるっていうこと、特にスタートアップの営業だと大切ですよね。

届けるときのラッピングみたいな体験もそうだし、顧客ニーズをもとにプロダクトを進化させるっていう意味でも、営業が顧客体験に影響を及ぼす存在だっていうところは大事にしていきたいですね。

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