諦めの悪い男を熱演する大泉洋に泣かされる映画がディア・ファミリー?でどうでしょう。
医学知識ゼロの町工場の社長(大泉洋)がいきなり大学病院に掛け合って「人工心臓を作りましょう」などと、北海道で人気の番組みたいな無茶ぶりを見せる映画が公開中のディア・ファミリー。
そんな映画は意外にも冒頭からちょっとネタバレ的な始まり方にちょっとドッキリさせられる。結果は全てではない、そこまでの過程が大切なドラマなのでもあるし、実はラストの伏線にもなっている。
東大の医学部授業に潜り込み、専門知識を貪欲に吸収したかと思えば若き医学生たちの助けを得て、人工心臓完成への道を着実に進めてゆく・・・・・そこには予算獲得まで幾段もの審議を経なければならない大学側のシステムと学内のメンツ、上下関係が大きく立ちはだかる。
大泉には投じることのできる資金にも残された時間にも限りがあるのだ。
プロジェクトは完成を見るのだろうか?人工心臓を完成させなければ、大人に成長した娘の姿を見ることは叶わない。大泉はどこまでも諦めの悪い男を熱演している。彼は昔、医業現場が舞台のドラマを経験したからシリアスな現場の緊張感も実は懐に秘めていたのだ。
医療品の開発には気の遠くなるような臨床試験の積み重ねと莫大な手間、資金が必要とわかった時、自暴自棄になった大泉は巨額を投じた製造機器目掛けて試作品を投げつけて大破させてしまう・・・・・人工心臓はやはり無理だったのか?
この社長を演じる逸材は今の日本に大泉洋を置いて他に考えられるだろうか?
そして私が注目したのはその時代考証の正確さ。とりわけ邦画で時代に即した劇用車をこれだけの数用意したのは三丁目の夕日以外にこれまで見た記憶が無い。というか比べ物にならないレベルの数を揃えている。シーンの時代ごとに、その時代存在した車種を正確にエキストラ配置したキメ細かさ(執念)はこれまでの日本映画には見られなかったポイント。70年代のカローラやクラウン、84年のホンダ・シティはニュースにも取り上げられたカブリオレ。物語のキーパーソンの医大生がいかにも飛びつきそうな人気車だ。
おそらく旧車同好会やクラブの多数のボランティア応援が現場を盛り上げてくれたものと想像する。
これが実話を土台にしたドラマとはPRで謳われているのでリアリティーにも豊んでいるが、珠玉のセリフが幾つも心に刺さって来る。
何か大きなチャレンジを控えているもの,何度も大きな壁に当たり挫折を味わっている最中の人,それに大泉に思いっきり泣かされたいファんには必見。と言うか当然見るはずの秀作なのだ。