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「涙を流して謝った原爆の父」オッペンハイマー

第2次世界大戦中のアメリカで原爆の開発計画「マンハッタン計画」を指揮した理論物理学者で「原爆の父」故オッペンハイマーが、終戦の19年後に被爆者とアメリカにおいて非公開で1964年6月に面会し、この際、オッペンハイマー氏は涙ぼうだたる状態で『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』と謝るばかり」などと「涙を流して謝った」と、立ち会った通訳タイヒラー曜子さんが2015年に語った内容を記録した映像が広島市で見つかったことが20日、分かったとのニュースが流れています。(NHK ニュース、共同通信より)

映画オッペンハイマーが日本でも公開されています。三時間もの長丁場でおまけに難解な構成・・・・終わりまでしっかり鑑賞してきました。原作を先に読み始めていたので何となく映像で確かめたかったのもありますが・・。


アメリカは国を挙げてガジェット(=原子力爆弾)開発を始めます。物理学者オッペンハイマーはこの大プロジェクトの総責任者を命ぜられニューメキシコの誰もいない広大な土地に科学者ら数千人の住む街と実験場、その他必要な施設を築いて秘密の保持に万全の対策を取ることも求められます。

当時はドイツもソビエトも原爆を開発中、アメリカとしてはいち早くこの新兵器を完成させ、ドイツとの戦いを終わらせなければ(と考えます)さらにはソビエトに先を越されることのないよう、一刻も早い完成が望まれました。

しかし1945年にドイツは降伏。あとは原爆の破壊力をデモンストレーションして、これが戦争終結に必要なツールであることを証明せねばなりません。ソビエトよりも先に・・・

残された実践の場は、太平洋の向こう側ニッポン・・・・・完成間もない原爆を炸裂させて戦争を終わらせる・・・・・・既成事実が必要でした。

ドイツ戦に間に合わなかった新型の爆弾はすでにポツダム宣言受け入れの意向を示していたと言われる日本の上空で、その予想以上の恐ろしい威力を世界に見せつけます。

この瞬間からオッペンハイマーの顔から笑顔は消え失せました。大勢の一般市民が焼け死ぬ光景は想像こそしていたものの、現実として見せつけられると成功を喜ぶ気にはとてもなれません。

原爆の最大の欠陥はそれを防御する手段がないこと。ひとたび手にしてしまえば軍拡競争が避けられないもの、と考えていたオッペンハイマーは完成前から情報の開示、共有、ソビエトほか大国との間で国際的な管理期間を設けて無用の競争をやめさせようと提案していました。

この考えは大統領にも直接手紙で伝えられますが、米政府の指向は必ずしも博士が考えた理想論とは軌を一にしたものではありませんでした。

自信の無い人は最初に1時間遅刻しても平気です。ワタシだったらこのパートは編集でばっさり捨てます。ロスアラモスに研究所を作るくだりに間に合えば、それでもok!

最後の1時間は法廷ドラマの様な証言シーンが続きます。その長〜い前振りが前半2/3だと言ってもいいでしょう。政府、FBIはオッペンハイマー宅にも盗聴器を仕掛け、共産党員との繋がりをあれこれ探り出し、彼がロシアに密告を企てるスパイだと主張するよう企てます。首謀者は誰で何の意図が???

全米1有名な男=原爆の父がソビエトのスパイ呼ばわりされたのは誰の陰謀だったのか?白黒シーンの使い分けも意識しながら見ていくとヒントになるかもしれません。

原作は文庫本3冊分の圧倒的なヴォリューム!とにかく筆者の綿密な取材は徹底していて、彼と関わりのあるほとんど全ての人に取材したようです。

映画では、本人の主観的視点から語られているようですが、本書ではあくまで客観的事実を列挙し、筆者の主観なり推測は極力排除されています。映画作品としてどう捉えたら良いのか?商業作品としてヒットさせるのは難しいと考えるでしょう。ワタシには告発ドラマの一種に見えます

だから公開が今頃になったのかもしれません。

でも全米で同時公開だったバービー映画よりは観る価値のある作品(ドキュメンタリー)だった様に思えます。

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