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【2018年5月18日投稿 音楽文移植】拝啓 最高の武道館をくれたクリープハイプへ。愛は語り過ぎると薄れてしまうけれど


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rockin'on.comが運営している投稿サイト「音楽文」が8月31日で投稿募集を終了した。
サイト自体の最後は、来年3月31日。

自分にとって、この想いを書きたいと筆を取ったのは音楽文があったからこそだった。自分にとって始まりの場所であり、永遠の故郷だ。
ここからもっと遠いところに行きたいという思いから、投稿をやめてnoteを始めた。(と言いつつ、音楽文をこっちにも掲載しているけど)
せっかくなので、noteにも移植していこうと思う。自分の気持ちを忘れないためにも。

読み返してみると、修正したい部分がかなり多い。夜中に書いた手紙を朝読み返しているよつな気持ちになってくる。
けれど、これはこれで残しておきたいから、全く加筆修正せず、2018年5月18日のまま、掲載する。

クリープハイプの12月8日にリリースする新しいアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』も楽しみだ。



「生まれ変わってもまたクリープハイプをやりたいなと思いました。」
尾崎世界観は駆け出すように"イノチミジカシコイセヨオトメ"のイントロを弾いた。ずっとこの時間が続いたら良いのにな。そう思ってみても、また一曲鳴り終えていく。すべてが終わってしまった今でも、武道館の景色を鮮明に覚えている。

5月11日、クリープハイプのすべて。4年ぶりの武道館公演。物販は長蛇の列で、目当てのグッズは並んでる途中で完売。
チケットもなかなか取れず、血眼になってようやく手に入れたのはバックスタンド席。それでも当選メールが届いたときは声をあげて喜んだ。行けるのならどんな場所でも構わなかった。


武道館の中に入って席に着く。ステージが左側に半分、観客席が右側に半分の視界。ステージ全体は見えにくいけど、メンバーとの距離で言ったらなかなか近い!オープニングのCMパロディは本当に笑わせてもらった。「フェスではいつもCMみたいな扱いだったから」と自らが自らのCMになる。良い意味でおかしかったし、いかにも尾崎世界観らしいアイディアだと感じた。

しっとりとした"ねがいり"で始まったことは意外だったけど、晴れた日に洗濯物を干したような心地良い時間だった。ライブ感を一気に体感した"寝癖 "、"おやすみ泣き声、さよなら歌姫"、"オレンジ"の流れ。

思い出とクリープの曲がリンクして、卒業アルバムを開いているような気分になってしまう。思い出に吸い込まれそうになるのを、尾崎世界観の切り裂くような声が、小川幸慈の歌うようなギターが、長谷川カオナシの体を這うようなベースが、小泉拓の凛とした力強いドラムが、武道館に引き戻してくれる。息の合った「曲の終わらせ方」はめちゃくちゃ恰好良かった。じゃーんと最後の一音を全員で鳴らす、あの音は句読点みたいだ。ダラダラと続いてしまわないように、自ら曲の余韻を断ち切って次の曲へ進む力強さを感じる。


メンバーは終始楽しそうだった。楽しそうに演奏してたこと。移籍騒動のときの曲をやらなかったこと。やらなかったあの曲。それらがクリープハイプがあの時よりもずっと前に進んでいることを証明していた。途端に、4年前と比較して観ている自分が馬鹿らしくなった。紆余曲折あったからこそ、今をしっかり見ておきたいと強く思った。

なんの変哲もない日常のシーンが映された"大丈夫"、"明日はどっちだ"。特別な映像よりも、日常の映像がしっくりくるのはクリープハイプの楽曲が日常に溶け込みやすいからだ。
上手く馴染めなかったクラス替えや、嫌いな人とバイトが被った日、距離感の縮め方を間違えてしまったとき、職場で怒られたこと。

クリープハイプを聴くときは「嫌なことがあった日」に多かった。愚痴や不満、本音を上手く吐き出せない自分の代わりにクリープハイプが歌ってくれた。上手くいかない日常があったからこそ、僕はクリープハイプに救われたんだ。大袈裟な表現になってしまうけど、クリープハイプのおかげで今日まで生きて来られた。

その喜びを一段と感じたのは"さっきはごめんね、ありがとう"だった。忙しない日々の中にある、少しでも気を抜いたら「当たり前」になってしまう程の小さな幸せ。気づいたのが遅かった。なんてことにならないように「当たり前」を「当たり前」にしてはいけないんだ。好き場所があるのは当たり前じゃない。好きな人と居れることは当たり前じゃない。ライブを観れることだって当たり前なんかじゃない。当たり前に演奏してくれて、当たり前にラスサビくらいで次の曲を待ってしまうけれど、当たり前なんか1つもないんだな。そんなことを思うと、この時間が更に愛おしく感じる。


「ヒット曲を連発してトドメ刺します」から始まった"HE IS MINE"、"社会の窓"、"イト"、"栞"の怒涛の流れは何も言えないくらい最高だった!さっきまでの感動をよそに、あっという間に絶頂へ登りつめる。クリープハイプは感情を翻弄するのが悔しいくらい上手だ。

アンコールは大好きな曲"二十九、三十"。普段は言えないことだって、短いサビの中でなら言える。その等身大の自信がリアルで好きだ。この曲を聴くたびに、また頑張ろうと思える。その後、ダブルアンコール。最後の一曲は"愛の標識"だった。「死ぬまで一生愛されてると思ってるよ」とアレンジされた"愛の標識"。

始まりや、ルーツ、帰れる場所。そういう意味で、僕の故郷を代表するバンドはクリープハイプだ。疲れたらすぐに帰ってきてしまう故郷。また帰ってきたの?なんて軽く叱られたとしても、大好きで思い出のつまった故郷は温かくて優しい。
これからもずっと故郷を大切にしたい。この武道館で見た景色も、いつか卒業アルバムの1ページみたいになってしまっても、ここで感じたことは忘れたくない。

愛は語り過ぎると薄れてしまうけれど、語らずにはいられなかった。ずっと忘れないために残しておきたかった。
死ぬまで一生、例え生まれ変わっても愛させて下さい。 ファンの1人より。 敬具

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