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「夏休みの自由研究」…… 微妙に後ろめたい思い出。

 どうやら今だに学校では「夏休みの自由研究」という宿題があるらしい。

 小学生時代には、「自由研究」と言いながら、本当に「自由」ではないのも知っていたから、自分がしたいこととは別に「教師」に受けそうな、少なくともダメ出しをされそうもないようなものを選んでいたと思う。

「子供の科学」

 小学生の頃の愛読書(月刊誌)の一つが「子供の科学」だった。

 そこには、たとえば、「海風と陸風がどうして起こるのか?」に関して、陸上と海上での比熱の違いから説明して、大気の対流などにたどり着く、といった文章が書いてある。

 また、趣味のページでは、ミルククラウンという牛乳でできる一瞬の場面を撮影した写真の質が、読者の投稿で競われていたり、さらには、よくできた紙飛行機(切り取って貼り合わせて自分で作る)が毎月付いていた。

 その雑誌の中に、実験のページもあって、夏休みの自由研究で困ると、そこを参考にしていた。

吸い上げる力

 毎年、夏休みの宿題は、そうやって乗り切っていたのだけど、ある年も、同じように「子供の科学」を読み、その中の実験をしてみた。それも、その年は、ほぼ「丸パクリ」のようなやり方をしてしまった。

 タイトルだけは変えたと思う。

 「吸い上げる力」

 それは、例えば、バケツに水をはり、その縁に引っ掛けるように、タオルの片方を水に浸した場合、どのような場合だと、外側に垂れたタオルの部分から、水が垂れていくのか。

 それを実験したものなのだけど、そのやり方も、どのようになるかもほぼ「子供の科学」に書いてあったはずだ。

 タオルをバケツに引っ掛けた場合、水面に浸した側と、外側に垂らした側の高の位置関係によって、吸い上げる力が変わってくる。

 簡単に言えば、水面に浸している位置が、外側に垂らしたタオルの位置よりも高い場合は、タオルの吸い上げる力が働いて、バケツの水を吸い上げて、外側に水が垂れ続ける。

 だけど、そのことによって、水が減り続け、水面の位置が、外側に垂れているタオルの位置と同じになった時、その吸い上げる力は働かなくなる。

 今は水拭きでの雑巾掛けが減っているから、ほとんど見られなくなったことだと思うけれど、水の入ったバケツに、雑巾を引っ掛けていて、水がいっぱいで、その片方に雑巾がかかっていて、外側に垂れた側の位置が、水面よりも低い場合は、外側に水が垂れてしまい、怒られる、ということがあったはずだ。

 ただ、それだけのことを、バケツの縁をはさんで、両側に垂れるタオルの位置を、いろいろと変えて、実験し、この事実が証明されるまでを「イラスト」で記録した。

 今考えると、決して、うまい絵ではなかったのだけど、この時は、バケツとタオルと水面と、その位置関係だけが重要だったから、下手であっても絵が入るだけで、分かりやすくなったと思う。

(今は、文章だけで伝えようとしているので、分かりにくいと思います。すみません)。


 この実験だと、そんなに時間もかからないし、実際におこなってみると、その位置関係が変わるだけで、本当に水がピタッと止まったり、垂れ始めたりするから、なんだかすごいとは思った。


(今だと、テーマは同じですが、インターネット上でも、もっと進化した実験が紹介されていたりします)。


後ろ暗い賞状

 夏休みを終えて、宿題は、まとめて書いて、絵日記は、今でいうと「ねつ造」に近いこともして、なんとか仕上げて、そして「自由研究」も提出した。

 夏休みの宿題は、教師に出した瞬間に、忘れてしまう。

 それから、しばらくたって、教室で名前を呼ばれ、うわ、と思ったら、賞状をもらった。それは、タオルとバケツを使った「夏休みの自由研究」でタイトルは「吸い上げる力」と、賞状にも書いてある。

 住んでいる市の〇〇委員会、といった教育の世界の賞らしい。それは一地方の小さな賞賛でもあるのだろうけど、そういう賞をそんなにもらったわけではないし、理科系での受賞は初めてだったから、嬉しいよりも前にとまどった。

 何しろ、夏休みの宿題をこなすために「子供の科学」のページを、ほぼ丸々参考にしたので、後ろめたさもあった。だけど、そのことを言えなかった。自由研究なのに自由ではなかったし、今で言えば、引用元を記述する、といったことも知らない小学生だったので、自分では、より後ろ暗い賞状になってしまった。

ハエと色

 わりと無口で、孤立しがちなところがある子供だったのだけど、どこかで「このままではいけないのではないか」と感じ、翌年は、なるべく自分で考えようと、と思ったらしい。

 それは、すでに自分でも記憶が薄れているから、もしかしたら、それこそ、記憶をねつ造している可能性もあるのだけど、多分、翌年くらいに、かなり自分で考えたはずの「夏休みの自由研究」をした。

 それは、「ハエと色」がテーマだった。

 ハエ叩きに、色のついたセロハンをつける。それを使って、ハエを叩く。その光が、壁などに止まっているハエに当たるようにして、色によって逃げるまでの時間が違うかどうかを、時間を測る。考えたら、せいぜい、何十回くらいしか「実験」できないから、信頼性などが低いのだけど、それでも色によって、その時間が違うから、もしかしたらハエにとっては、本当に色によって反応が変わるのかもしれない。

 その程度だけど、それで「夏休みの自由研究」にした。

 自分にとっては、「吸い上げる力」よりも、自分自身が考えた部分がはるかに多いので、満足感は大きかった。だけど、その「ハエと色」は、特に評価されることもなかった。

 そういうものなのだろう、と思った。



(他にもいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。


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