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ギャンブルの凄さと怖さ。

 かなり昔の話だけど、時々、思い出し、印象が強いから、家族には、何度か同じ話をしてしまっているかもしれない。

 タクシーに乗っていた。

 そんなに長い距離ではないけれど、急いでもいたので、駅で降りて、タクシー乗り場に行く。そして、乗り込んで、目的地の近くの病院の名前を言い、あとは、そこに着いたら、また伝えますと言って、出発し、しばらく静かな車内が続いていたのだけど、運転手の背中が、何か話したそうな空気感を出していたのには、気がついた。

競馬の話

 その時は、競馬で、G―1と言われるレースが終わったばかりだった。
 だから、もしかしたら、そんな方向のことかな、と思い、なんとなく遠くからの話をした。

 そうしたら、やはり、急に言葉がたくさん、しかも、はっきりと口から出だして、一応は、前を見ているけれど、熱が入ると、ミラー越しにこちらをしっかりとみて、目を合わせてくるから、こちらも、ちゃんと聞くしかなかった。

 どうやら、今回の競馬で馬券を買って、それが見事に当たった

 そんな内容なのは、分かった。ただ、私自身は、ギャンブルとは縁が遠かったので、その熱量に応えられたかどうかは分からなかったけれど、このタクシーに乗ってから、この話をするまでの時間と、ある意味では、別人のようなテンションになっていたので、なんというか、ギャンブルの凄さを感じていた。

競馬のCMの話

 そこまでは、ギャンブル好きな人が、競馬の馬券を買って、見事に当てた、という分かりやすい話だった。

 気配が、さらに変わったのは、こんな言葉からだった。

「今回は、でもさ、楽勝だったんだよね…」。

 最初は、ちょっとは丁寧語だったような気がしていたのだけど、今はすっかりタメ口になっていて、それは別に構わないのだけど、それよりも、その言葉は、“聞いてくれ”というサインでもあったので、楽勝の理由を尋ねた。

 そこから、微妙に内容が分かりにくくなっていく。

 どうして、楽勝かというと、今回は、中居くんが教えてくれたらしい。

 それは、その頃、JRAのCMに当時SMAPの中居正広が出演していたことに関連していた。それからの話は、運転手にとっては、完全に合理的で、シンプルなことを話しているような、そんな口ぶりだったのだけど、私にとっては、だんだんあやふやになっていくだけだった。

ギャンブルの怖さ

 たぶん、全部をちゃんと聞けてなかったというか、途中から、話が分からない問いよりは、怪しくなっていったので、気持ちの腰が引けていたせいか、理解が浅いかもしれないけれど、だいたいは、分かったと思う。

 それによると、CM中に、中居くんが言ったセリフの中に、数字か、馬名が含まれていて、その通りに馬券を購入したら、当たった、という話のようだった。

 笑顔ではあったけれど、ふざけた気配は一切なくて、それについて、疑問を差しはさむこともできないし、さらに、“教えてくれた”話を続けそうだったので、いやー、それはすごいですね、みたいなことを伝えて、なんとか話題を変えた。

 確か、競馬のCMでは、密かにレースの結果を伝えている、とギャンブラーの中では話されている、といったことを、どこかで聞いたことがあったけれど、実際に目の当たりにすると、微妙な怖さを感じた。

 ギャンブルを長年し続けると、何かが決定的に変わってしまうのではないか、と思った。

 それは怖くもあったのだけど、ギャンブルを続けるために必要な適応かもしれないと思ったし、ギャンブルをしている時や、レースの話をしている時間は、少なくとも楽しそうに見えるから、それに対して、ギャンブルをしない人間が、あれこれ言えるようなことではないかもしれない、とも思った。




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