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麗子
2021年6月16日 10:44
夏祭りに向かう商店街を仲の良い友達と歩いていた。二人ともテンションが上がってしまって、陽気だった。まだ陽は高く、人通りも多い。 ふと、友達が立ち止まる。 「あれ……?」 浴衣の袖を気にしている。小さな子どもが浴衣の袖に何か入れようとしている。 「どうしたの?」 女の子は赤い着物を着て、江戸時代の子どもの髪型のような1つ結びをしていた。背丈は60cmほどで、桃の節句で飾る人形の
2021年6月16日 10:28
「うちには、鬼がいるんだ。それもたくさん」 そう話す父の顔は、今朝よりもひどく老け込んでいるようだった。 目覚めた私は、怠くて重い身体を引きずるように起き上がった。枕が体にあってないな。鉛のように重いとはこのことだろう。体じゅうが凝り固まっていて、立ち上がるだけで悲鳴を上げる。小さく伸びをして、部屋の空気を入れ替えようと思う。部屋に一つしない大きな窓は遮光カーテンの隙間からやわらかな光を