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それでも日々はつづくから

燃え殻さんの著書「それでも日々はつづくから」を読了した。

燃え殻さん自身のエピソードを題材にしたエッセイ集で、独特な感性と視点に溢れていて面白い。日常風景(中には大半の人間が体験し得ないような話もある)が、燃え殻さんにかかればこうも面白く描けるのか、とその作家性に刺激を受けることができた素晴らしい書籍であった。

すぐにでも読みたい本ができたときに単行本で買うか電子版で買うかで迷う。いずれにしてもAmazonで購入するわけなので、ワンクリックのわかりやすい二者択一の場に立たされるが、最近はほぼ100%単行本で購入するようにしている(余談だが「ほぼ100%」という表現には違和感を感じる。数字で表したいならいっそのこと「98%ぐらい」と言った方が良いだろう)。単行本だと何度でも手に取って読みたくなるし、またその「手に取って紙をめくる」、という体験を伴ってこそ本を楽しめるというものだ。だから電子書籍はあまり好きではない。読むというのはただ情報として文章を目で追っていくということではないのである。とはいえ、電子書籍でも本は買う。電子書籍で買うのは、部屋に置いていたら訪問者に見られて恥ずかしくなりそうなアダルティックな本などだ。Kindleのライブラリに鎮座している「トップAV男優直伝!セックス力を上げる強い身体の作り方」はまさにその例である。こういう、本棚に置きかねる、ましてや店舗で買うのは躊躇われる、しかし読みたいぞという本が誰しもあるだろう。そんな人への救いが電子書籍なのである。


Amazon Prime に登録しているので単行本でも大抵は翌日には配達されてくる。届くまでの十数時間が期待を増幅させる。「それでも日々はつづくから」はそんな期待をも裏切らない何度でも読みたくなる本だ。


燃え殻さんを知ったのはNetflixで配信されている映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」。この一年はひたすらインプットをする期間にしようと勝手に「映画年間300本観賞キャンペーン」を実施中なのだが、そんな中で出会いふと観てみた映画で、邦画の中でも上位に好きな作品になった。90年代の前ネット時代の風景は魅力的に映った。何より、これからを生きる若者、映画の時代を生きてきた大人、内容は違えど映画に込められたメッセージに心揺さぶられた人は多いに違いない。



人との出会いが感性を育んでいく、ということを燃え殻さんの作品を通して再認識し、放送作家という肩書きで制作側の立場にいる自分にとってそれは大事な学びになった。一時期 TED というプレゼン動画を観まくっていた時期があったのだが、とあるプレゼンターがキャリア形成をテーマにした話の中で「人はその周囲にいる5人を平均したようになっていく」ということを言っていた。そのとき、自分の周りには自分に似たような人しかいない、言い換えれば自分はただ周囲と同じことを無意識にやろうとしているだけになっている、ということを悟り、それからはこれまで関わってこなかった人と出会える場に積極的に足を踏み入れるようにしている。
あまりに近くにいるから親が子供の身長の伸びに気付かないのと似て、感性はずっと自分の中にあるものだからそれが育まれていることを実感することは難しい。だが間違いなく言えることは、人との出会いを通してこれまでにない学びと刺激を得られていうということだ。大晦日に祖父母に久しぶりに会ったときに「前は身長こんなだったのに、大きくなったね」と言ってもらえたように、いつか自分の成長を実感する時が来ると信じている。



ところで、実は今日5月30日、いわゆる「ごみゼロの日」は僕の誕生日だ。大学生になったあたりから誕生日をあまり祝うことがなくなったのは、歳を取ることにプレッシャーを感じているからかもしれない。とは言っても、完全に無視をするというのも物悲しくなんとなく自分に申し訳ない、という思いもあるので、普段は気軽には買えない良いものを思い切って買う、という機会にしている。去年はキーボードを購入した。ピアノの方ではなく、パソコンの方のキーボードだ。そして今年は、ずっと欲しいと思っていた Dr.Martens の1461 (3ホール) を買うことにした。オンラインショップで買うこともできたが、渋谷の専門店舗に足を運んだ。店員さんと話して色々教えてもらい、そして最高の一足と出会った。店員さんは「この値段で5、6年履ける靴は他にあまりないですよ」と言った。革靴は履き続けていくことで味が出てくるものだ。

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世知辛い世の中だ。社会は変化を迫られ、この皺寄せは一個人にも及ぶ。

それでもつづいていく日々を、この革靴とともに歩んでいこう。








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