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読書メモ 図書館で借りた本(2024年3月11日返却)

ニール・ソンプソン,杉本敏夫訳. (2004). ソーシャルワークとは何か.

社会保障や社会福祉が、制度としては日本に比較的近い英国でのソーシャルワーク論。2000年前後の英国の状況が理解できるという意味でも有用。詳細こちら

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ダレン・マクガーヴェイ , 山田 文 訳. (2019). ポバティー・サファリ イギリス最下層の怒り.

スコットランドの貧困地域で、貧困・暴力・ドラッグ・精神疾患などの重なる環境で育ち、後にラッパー・作家となった著者の回想を中心とした書籍。多様な困難を抱えた子どもたちを支援する人々、そういう経験をもつ若者の声を社会に届けようとする人々、社会を変革して悲惨の再生産を断ち切ろうとする人々が、結局は貧困状態にある人々を「ネタ」「ダシ」として消費するしかない救いがたい構造が、消費されてきた当事者の視点から怒りを込めて、しかし冷静に描き出される。その中心にいる自分自身に常に立ち戻る姿勢が、読者に自省と緩やかな変化を促す。読後感は軽くないし「ポジ抜け」もしないが、ただ単に重たいわけではない。貧困問題やその解消に関心があるのなら、必読書。

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丸山里美 編著. (2018). 貧困問題の新地平: もやいの相談活動の軌跡.

 貧困問題への取り組みで長年の実績を誇る、認定NPO法人 自立生活支援センター・もやいの相談活動とその推移を一冊にまとめたもの。日本におけるバブル崩壊以後の貧困問題が、どのように移り変わってきたか。どのような政策施策が講じられ、有効性や限界はどこにあったか。整理するのに極めて有効。
 特に女性については、家庭の中に隠されたまま貧困になる女性の問題(世帯に収入があっても女性に分配されるとは限らない)が指摘される。この人々が2020年以後のコロナ禍で可視化され、自殺者の増加、路上生活の末に殺人事件の被害者となった事例として一時的に注目されたものの、「結婚したら離婚させなければいい」と言わんばかりの法改正が現在進行中。その直前はどうだったのか。なぜ、その状態になったのか。一度振り返るために極めて有効。薄くてオムニバス形式なので、読みたいところだけサクッと読めるし。

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道中隆. (2009). 生活保護と日本型ワーキングプア: 貧困の固定化と世代間継承.

 ケースワーカーとして長年にわたって勤務した経験を持つ研究者の著書。2000年代の日本において貧困が生み出されてきた経緯、生活保護利用者への就労支援がたどる道筋や成功を妨げる要因の数々を、当事者への聞き取りを含む丁寧な調査によって明らかにした。「これらのデータは”無理ゲー”だと言っているのに、でも、それを推進する立場からの議論をするんですか?」などとツッコミたくなる箇所の数々はあるけれど、生活保護という制度がどのような人々にどのように利用されていたか、生活保護を必要とする状況はどのようなものであるか(特にホームレスの生活実態や経歴に関する調査は圧巻)を行政の立場から明らかにしたという意味で、大きな意義のある書籍。

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坂本 治也 編著. (2023). 日本の寄付を科学する――利他のアカデミア入門.

 日本における寄付に関して、19のテーマに沿って、学術研究の立場から紹介した書籍。実践者の生々しい声も。寄付についての考えはともかく、公的部門からの資金調達が困難になるばかりの現在、寄付というものを幅広い視点から理解することは、寄付を募るためにも必要であろう。寄付が盛んな国々における寄付の歴史や現状を若干は知っている私の立場からは、ただ単に「利他」という側面から寄付が議論されることには疑問が残る。

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藤井章雄. (2004). 放送ニュース英語の体系.

 英語で海外に何かを発信しようと考えている人は、手元にこの本があると役立つと思われる。ニュースを読むだけの立場の人にも、役に立つと思われる。発行から20年が経過しているけれど、この本を置き換えられる書籍は未だない。

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山本 勲. (2015). 実証分析のための計量経済学.

初学者(私、経済学は素人です)が「こんな感じなのか」とザックリつかむのにも、ある程度は詳しくきっちり学んで自分でも出来るようになるのにも、かなり役立ちそう。わりと「広く浅く」。各項目を深掘りする前の準備によい感じ。

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本当は買って読みたいんだけど

 紙の本を所有するのが、だんだん体力的に厳しくなってきました。とはいえ、1回2回しか読まない本を電子版で購入すべきかというと(特に一冊あたりの価格が高い学術書や専門書)、そこも悩ましいところです。
 個人に購入されても図書館に購入されて貸し出されても、あるいは古書となった後で購入されても、重要なのはコンテンツ制作の生態系が回ることなんですよね。図書館価格が一般の5倍10倍になれば、「図書館で借りられてしまうから売れない」という問題が解消するのですけれど、今の図書館の環境でそれを期待することは無理。
 どこの何から手を付ければいいのか分からないけど、私はとりあえず、図書館をせっせと利用します。「利用者がいて借り出されている」という実績は、図書館の存続や充実につながりますから。


ノンフィクション中心のフリーランスライターです。サポートは、取材・調査費用に充てさせていただきます。