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1分読み切り短編小説「ドローンからの伝言」

「マカニ」は、
自分の最後を知らせる
赤いランプを点滅し続けた。

「マカニ、、、、。」

マユミは、
マカニを胸にその最後を
見守っていた。

マカニは、
AI搭載のドローンで、
この時代では、

ドローンはもはや
かつての「家族」の役割を
担っている。

資本主義の崩壊。

人口増加、環境汚染による
食料問題。

激しさを増す異常気象。

未知のウィルスとの共存。

新世界政府は、
人口を削減し、
コントロールした。

婚姻や家庭を持つことは
制限され、
感情すらも管理される世界。

マユミは
マカニに育てられた。

マカニは
マユミにとって親であり、
家族であり、友人だった。

そのマカニが、
最後の灯火をかろうじて
点滅させていた。

この世界で禁止されている
美しい夕焼けの空を、
2人は飛んだ。

例え、命を狙われても
マカニが映す景色は、
人生最高の瞬間だった。

新世界政府は
スナイパーを送り込み、

マカニは
損傷、

マユミも追われている。

美しい夕焼けのような
「キレイゴト」を求めるのは、
危険思想とされ、重罪。

キレイゴトに感化されたときに出る微弱な電波を
「鳥肌センサー」にキャッチされ、追われることになった。

スナイパーにいずれ
思想転換薬を
撃たれることになる。

スナイパーから
逃れることはできない。

マユミは、
なんとか損傷したマカニを回収し、
身を隠していた。

点滅していたランプが
点灯に変わり、

突如、マカニから
照射された光が
ホログラムを映し出す。

見たことのない
若い女性がマユミの前に現れた。

「私は、マユミ。
多分あなたのおばあちゃんか、
ひいおばあちゃんか。

だから、マカニは私。

私のデータを
学習させたものなの。

政府の監視の目を逃れて、
「キレイゴト」の感情を
密かにマカニに託した。

私たちは
美しい世界を生きているのよ。

それを残したくて。

だから、あなたも残しなさい。」

それだけを言い残し、
ホログラムは急ぐように消えた。

政府にコントロールされた
世の中で、

なぜ命を狙われても、
自分が「キレイゴト」への
感情を持つことができたのか

今はっきりと理由がわかった。

「おばあちゃんがマカニに託し、
マカニは私にそれを
伝え育ててくれたのね。」

マカニのデータは
通常政府に送信される。

しかし、
マユミはとっくに
その送信を遮断し、
バックアップデータを
自ら保管していた。

「私はいずれ撃たれる。

でも、私もマカニも
「キレイゴト」も
生き残るのよ!

このデータがある限り。」

最後のバックアップを
とり、

マカニの点灯した
赤いランプが
やがて小さくなっていく。

最後に弱々しく、
何度か点滅した。

きっとそれは、

「またね」だったと
マユミにはわかった。

(おわり)

作/画 りょう

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(あとがき)

今回登場したマユミとマカニ。

僕の小説にコメントくれた
まゆみさんと、
まゆみさんが操縦するマカニを
モデルにした。

マカニは「風」という意味らしい。

きっと2人は
風のように、今日もどこかの空を飛んでいる。

ちなみに、今回の話は、
前回の「スナイパーと桜」の話に連動している。


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